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外国人観光客

通訳ガイドのぶんちょうです。
出かけることが仕事だった私も含めて通訳案内士という職の者は、2020年の3月頃一斉に行き場を失いました。

いつもホテルに行けば自分を必要とする人たちが待っていました。彼らは非日常を経験するために、はるばる外国からやってきた人たち。「ホテルを一歩出れば見慣れたような看板に見慣れない文字。同じような顔つきをした人の群れ。聞こえてくる会話には理解の糸口になりそうな単語すらなさそう。

とんでもない場所に来た。行き先はここと決心し、準備して、とうとうやってきた到着地。ガイドブックには目を通した。ふむふむ、英語は通じないと思ったほうがいい。レストランにチップはいらない。箸は使えるけど色々とマナーがある。お行儀がよくて親切だがシャイな国民。

いつでも誰でも行くことのできる宗教施設。よくわからない宗教感を持つ国民。グルメ界に定評のある高級料理。ワンコインで食べられるのに、おいしいとうわさの食事。サムライやら忍者やらの国。座禅やらハラキリするような深刻な人種なのやら、大人まで漫画に熱狂し、コスプレまでするクレイジーな人種なのやら。

電車は複雑で一筋縄では行きそうもない。とにかく得たいの知れない物や人のあふれる国、日本。最高にワクワクするよ。でも、ここで一体どうやって過ごせばいいんだ。どうやって理解すればいいんだ。」

来日が始めての人たちは大抵、日本についてこんな風に思っていると、ガイド中の彼らの言葉でわかります。

朝、ホテルで不安げに待っている人に声をかけます。「○○さんでしょうか?」そして大抵の場合、満面の笑顔でガイドは迎え入れてもらえるのです。「よかった!。ちゃんと行くべき所に連れて行ってくれ、やるべきこと、やっちゃいけないことを示してくれる助っ人がついてる。初日の今日どんなことが待ち受けてるんだろう」

そんな心の声を聞きながらホテルを出て街へくりだします。この産まれたばかりの赤ちゃんのような無垢な心で日本を見つめてくれる愛すべき旅行者たちと一緒に。こんな日々が戻ってくるのはいつでしょうか。



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