ゲ謎の感想など垂れ流し(超ネタバレ有)

ここ最近、X(旧Twitter)でやたらめったら白髪片目出しの長身イケメンと、訳あり風の男前が出てくる二次創作が流れてきます。
フォロワーは疎かついにリアルまで侵蝕してきたのか、職場の上司までもがゲ謎の民となり普及したいと仰られており「話のネタに見てくるか」というのがその流れでした。

遅ればせながら、私もついに因習村へ入村デビューです。
どうにも片道切符臭いのが気がかりですが。

開始十数分で思ったのが「普通に映画としてのクオリティが高いなこれ」(基準値というものがあるなら優に超えている)でした。

お話の構成と時間配分がさりげなく、けれども非常に上手。ダレることもなければ急展開すぎない?ということもなく、なおかつ作画の一枚で客を黙らせる説得力もあり。
※そりゃあ、ピンチの鬼太郎父に突然元気玉の如く膨大な力が集まるシーンなどはご都合主義と言われたらそれまでかもしれませんが、それ含めてお約束というものです。

無駄がなく、けれども詰め込み過ぎでもなく「よくこの話を100分ちょいで収めたな」と思います。上手くいけば、youtubeなどの動画を「怠いから」という理由で倍速再生している人の半分ぐらいを黙らせて標準速度で見てもらえるぐらいの力があると思います。

アニメーションや動画作成される方であれば、そういった目線でも面白いんじゃないでしょうか。
詰め込み過ぎもだめ、間を持たせ過ぎもダレる、人生バランスが大事です。それができたら誰しも大監督なんですが。

お話は現在の哭倉村から。こう、過去と未来が交差する話いいですよね。鬼太郎少年(多分私より年上)と愛すべき目玉おやじ(可愛くて好きです)と、妖怪仲間のねこ娘さんが登場します。
ねこ娘さん、ちょっと見ない間に随分大人っぽくなりましたね……いや、本当に。

その後は昭和31年の時代にトリップするわけですが(私達観客が)龍賀製薬の密命受ける際に、社長や上司の台詞回しを金魚に喋らせるって演出いいですよね。
隠密理由の秘薬M……きっと一定年数生きてこられた方々におかれましては、瞬時にヒロポンが脳裏をよぎるかと思います。
哭倉村へ行く際に水木が乗った汚ねえ列車も昭和らしいというか、日本の古き悪き時代という感じで趣がありました。

ゴミクズはあちらこちらに散らばっているわ煙草はスパスパやるわ、子供や気管が弱いであろう人がゲホゲホと紫煙に苦しんでいる音も、単なる日常の光景と流して構わず煙草を吸おうとする人が良いはずの水木。
数十年前には、まだ列車やバスなどに吸い殻入れが設置されており、今となっては考えられないような光景。今とは時代が違ったんですね。

余談ですが血液銀行というワードが平成や令和にはなかなかに強いかもしれない、と思いました。

無事村に着いた水木さんと初会合する沙代さん。
下駄の鼻緒が切れて困っているところを目の前のシティーボーイに助けてもらう。男らしく出世欲にまみれたギラギラを隠し爽やかな好青年を擬態したシティーボーイ(水木氏)の肩に彼女はその白くて華奢な手を置き、膝に足を置かせてもらい鼻緒の応急処置をしてもらう。

そりゃ恋に落ちないわけはないですよね。この初恋泥棒が。
惜しむべきはこれ恋愛映画じゃなくて、伝奇というか怪奇ものなんだけど。

成り上がるために外面の良さを鍛え上げられた水木氏は、時弥ちゃんも虜にしますが。いいですよね、有能な人たらしというものは。

ちょいちょい作中にも出てきますが、戦争で散々辛酸舐めさせられて復員後も苦労した水木氏は、きっと元々は人の良い好青年だったんでしょうけれど「弱い者はどこまでも搾取される」と身をもってわからされ、狡猾にならざるを得なかったんじゃないでしょうか。

その後は横溝正史的因習村特有のどろどろした醜い後継ぎ問題が龍賀一族内で勃発しますが、自分が亡くなった当主時貞氏に言いたいことは、一人だけでも死を悼んでくれる人(時磨)が居てよかったねでした。
こいつだけでしょう、涙に鼻水まで垂らして寂しい寂しいとお前に泣いてくれた奴は。私は時磨に対して泣く涙は持ち合わせておりません。一滴も。

さて、謎の白髪片目隠し長身着物の男が出てきた時の興奮と感動は、恐らく私よりも皆様の方がはるかに熱量多いでしょうから割愛します。
時ちゃんに「自分はゲゲ郎って言うらしいよ(水木が名付けたから)」というシーンや「時ちゃん」と呼ぶところや、水木と二人でアイスキャンディー食べてるシーンとか、酒を飲み交わすシーンや水木の「奥さん、見つかるといいな」という台詞や奇妙な友情が芽生えるシーンだとか上げたらまあ本当にきりがない。

骨肉の争いでどんどん死ぬ龍賀一族の方々ですが、ちょっとミステリー要素もあって楽しいですね。途中で「犯人この人かよ」とはなりますが。

某ねずみの人に似た少年が出てくる時の、ゲームでセーブポイント※見つけた時ぐらいの安堵感といったらありません。癒し+使えるお助けキャラ。
※今はオートセーブ主流みたいですが、セーブポイントはもう死後でしょうか。
彼の引き際の良さもまた有能っぷりが出ててよかったです。

ところで乙米さんと長田幻治って単なる主従関係なんでしょうかね。自分の奥さんやお子と接するシーンが皆無で、乙米さんとの絡みが目立ちましたよね。
余談:声優さんのあれで「この人も元凶なのでは」と推理されていたのは少し草。

物語も後半で、真相がどんどん暴かれて派手な戦闘シーンなどは見所なんですが、幽霊族の同胞たちが血抜かれてMの材料にされていたところなど酷いシーンが結構あり、それはそれとして最悪の事態に備えて「早くゲゲ郎と奥さんと引き合わせてあげて」「早く」「意思の疎通ができるうちに」と思って見てました。おかげさまで上映中は脳内めっちゃ五月蠅い。

沙代さん、まさに悲劇のヒロインでしたね。胸糞悪い酷い扱いを受けており、できればせめて彼女に時貞も殺させてやりたかった。
水木に対しても、怒りや恨みの念が出るのは客観的にみれば当然は当然で、好意を寄せていた信頼していた男に裏切られたら、そりゃそうもなりますよね。

なお、彼女の各人物の殺害のしかたはとても良かったと思います。もう酷すぎて逆に笑ってしまうぐらい凄惨です。究極のざまぁをあなたに。

沙代さんは上記の通り大人の糞汚い理由で犠牲となった被害者と言う感じなんですが「それでも殺人は良くない」と言うのであれば、一番悲惨なのは時弥ちゃんです。
彼こそ真の意味で理不尽な目に遭い人の一生分ぐらい苦しんでいたと思いますが、その後はようやく開放されたので、わずかばかりの救いはありました。それを心の底からよかったねと思うには、良かったの割合があまりにも少なすぎるだろとは思いますが。

ゲゲ郎と奥さんが再会できてこちらもよかったですが、奥さんはどれぐらいあの状態で苦しんでいたのか……お腹に赤ちゃんがいたということであれば人間だとぎりぎりで9ヶ月ぐらいだと思いますが、幽霊族だと寿命も長そうなので期間ももっとなんでしょうか。

エンディングでその後、墓場鬼太郎にそった鬼太郎誕生の瞬間が見られますが、変わり果てた姿となったゲゲ郎と奥さんが、記憶を亡くした水木と出会うシーンを想像するとちょっと、かなり切ないですね。

最後に、この映画のタイトルは「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」ですが、私としては「霊毛ちゃんちゃんこってそうやってできたんだ!?」とそっち方面で衝撃を受けました。

霊毛ちゃんちゃんこ誕生(制作)秘話だった。

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