呪われたオカルト部!
ルール
~オリジナル~
禁止文字:(なし)
呪われたオカルト部!
「んんっ……。やはり、のどの、調子が、悪いな」
「朝からずっとそんな感じですけど……。先輩、大丈夫ですか?」
放課後、特にこれといった活動実績があまりないオカルト部の部室で、先輩と二人で……だらだらしていました。一応部員には来間栞奈さんというとてもやる気のあるお友達がいて、先輩とわたしは部活設立の為の人数合わせで入部しただけなんです。
朝の登校中に会った先輩は、驚くほど声が出ていませんでした。
「うーん、早朝と、変化が、無いな」
「保健室には行きました?」
「昼休み、行った。蜂蜜の、のど飴、貰った。未解決」
「そうですかぁ……」
先輩は話しにくそうです。一言が短くて、助詞の抜けた喋り方です。オカルト部員ならもっと『呪われているかもしれない!』とか言ったほうがそれっぽいかもしれないですが、先輩もわたしもそれほど超常現象に興味があるわけではなく。あ、でも栞奈さんなら言いそうです。
「うーん……筆談とかが無難ですかねぇ」
「しかし」
「?」
先輩はペンをとってホワイトボードに文字を書き――――、ペンのインクが無かったようです。
「あらら、他のペンはどうですか?」
「今日は、ずっと、文字が、書けず。超苦労」
「え、文字が書けないってどういう……」
「どーぞ。試しに、書いて」
と、先輩はペンをこちらに向けました。インクが無かったペンなのでは? と思っていたのですが、問題なく書けました。
「あれ、書けましたよ?」
ペンを返して、先輩はもう一度書こうとしましたが、やっぱりインクが出ませんでした。
「あれぇー……」
「今日は、運勢が、最悪だ」
「そんなオカルトな……」
……まあここがオカルト部の部室なんですけど! ……そういえばオカルト部でした。だったら――――
「こっくりさん用の五十音表とかどうですか?」
「ナイス」
「…………どこにあるんでしたっけ」
「……不明だ」
うーん、部室のモノには下手に触らないようにしているので、どこにあるかがわかりません。前に使おうとしていた栞奈さんならわかるんでしょうけれど……。少なくとも部室内にはあるはずです。机の引き出しにも棚の中にも無かったのですが……。
「あった。ボード、うしろ」
ありました。ホワイトボードの裏面に磁石で貼り付けてありました。灯台下暗しとはこの事ですね……。こっくりさんって側面に対してやってもいいのかな? って、これ……。
「なんか、不自然に文字が欠けていますね、これ。そもそも書いていないみたいな……」
「確かに。何故か」
パッと見て、10文字くらいは欠けていますが……。うーん。意図も法則もよくわかりません。
「…………うぅ……。自信ない…………」
っ! ……後ろで扉が開いたので少しビックリしました。やっと栞奈さんが来たようです。先輩の不調が本当に呪いの類だったら解決してもらいましょう。
「来間か」
「あ、栞奈さん。やっと来ましたね。ちょっと調べてもら――」
「あぁっ……また0だぁぁ…………」
「??」
な、なんだか様子がおかしいです。いやまあ、栞奈さんはいつも不思議な方なんですけど……。ゼロって何の事なのでしょう? よくわからないですけど落ち込んでいる感じです。
「またこの説明か……。今から私が部室に何度か来るので…………お二人は部室から……絶対に、出ずに……私が来た回数を……カウントして下さい…………。それと、先輩さんは今日……表記上で三文字ずつになるようにしか……喋ることが出来ない…………そういう変な怪異に遭っているので………………」
「怪異て」
「か、栞奈さん、落ち着いて……」
今の栞奈さんはいつもよりもよく喋るというか、何か焦っているような感じです。というか、先輩の不調の正体がいきなり明かされちゃったんですけど……。どういう……?
「絶対に、部室から出ないでね……。それじゃカウントをお願い……」
「あぁっ、ちょっとぉー!」
…………。行ってしまいました。ど、どうしよう……。
「来間は『絶対に、部室を、出るな』言った」
「えっ、あ、そっか……。よくわからないですけど、待ちましょうか」
「まずは、三文字、怪異の、解明を」
「そうですね。えぇっと……」
栞奈さんは『表記上で三文字ずつになるようにしか喋ることが出来ない怪異』と言っていました。一旦、何故先輩がその被害に遭っているのか、というかその怪異の需要(?)がわからないのは置いておきます。
『表記上』というのがピンと来ませんが、先輩の喋っている言葉が三文字の言葉に限られているわけではない……のは確かです。読みの文字数は関係なくって、先輩の発言を実際に書けば三文字ずつになる……んでしょうか?
「恐らく、正しい。まさに、現在の、喋りが、物語る」
「…………! わ、本当だ。というか栞奈さんは何故知っていたんでしょうか、いろいろ」
「……ループ、してる、可能性」
「そんなオカルトな……」
……まあここがオカルト部の部室なんですけど。いや、タイムリープとかってオカルトでもないと思うんですけど……。
~グループA~
禁止文字:ぬふあうえおやゆよわをほへ
まじない喰らいの非科学団!
「んんっ……。依然と、のどが、駄目だ。痛むな」
「今朝からずっとそんな感じですけど……。先輩、つらくないですか?」
レッスン後、特にこれといった働きとか実績が全然ない非科学団の基地で、先輩と一対一で……だらだらしていました。念のため言いますが団員には来間栞奈さんってとても団員意識の高い子がいて、先輩と自身は団の設立の為の人員繕いで入っただけなんです。
今朝の目的地に出向く時の先輩は、ビックリするくらいに発声がたどたどしかったんです。
「むむむ、今朝と、異なる、感じは、無いな」
「医務室には行きました?」
「昼過ぎ、行った。蜂蜜の、薬とか、貰った。未解決」
「悲しいですね……」
先輩は話しにくい感じです。一言が短くて、言葉の繋がりが切れている話し方です。非科学団ならもっと、『呪いかもしれない!』とか言ったら非科学団的なのかもしれないですが、先輩も自身もそんなに未知の物事に関心がなく。ん、でも栞奈さんなら言ってるかもです。
「では……筆談とかが固いですかね」
「しかし」
「?」
先輩は万年筆片手に、紙に何か――――、が書けませんでした。万年筆のインクが無かったのですかね。
「むむむ、こっちの万年筆で書いてみては?」
「目覚め、今まで、ずっと、文字が、書けず。ガチで、ツラい」
「も、文字が書けないって、一体……」
「万年筆。試しに、書いて」
と、先輩から借りました。インクが無かった万年筆なのでは? と思索していたのですが、問題なく書けました。
「んんっ? 書けましたね」
先輩は再度、万年筆で筆記しましたが、結果に異なる点は無く、インクが出ませんでした。
「むーん……」
「未明~、今まで、ずっと、ラック、低いな」
「そんな非科学的な……」
……でもここは非科学団の基地なんですけど! ……ってか非科学団でした。だったら――――
「こっくりさんで用いるひらがな一覧とかいいかもですね」
「ナイス」
「……どこにしまっているんでしたっけ」
「……謎だな」
むむむ、基地のモノは勝手に使いたくないし、そもそも使ったことが全然無いしで、どこに片づけたのか知らないのです。以前使っていたはずの栞奈さんなら知っているかと思索しているのですけれど……。少なくとも基地の中にはしまっているはずです。デスクの引き出しにも棚の中にも無かったのですが……。
「これだ。さっき、書いた、罫紙の、背面だ」
そこだったとは。先輩がさっき使っていた紙の背面だったらしいです。『秘事は睫』とはこの事ですね……。こっくりさんって罫紙みたいな元から何か書いている紙で始めてもいいのかな? って、これ……。
「なんか、ところどころ文字が欠けていますね、これ。そもそも書いていないみたいな……」
「確かに。何故か」
パッと見て、十個くらい欠けていますが……。むむむ……。意図も規則的な感じもピンと来るものは無いですね。
「…………んんー……。自信ない……」
っ! ……背後で扉が開いたので少しビックリしました。推測からそこそこ経過したタイミングで栞奈さんが来ましたね。先輩の低迷が真に呪いの類だったら解決してもらいたいですね。
「栞奈か」
「ん、栞奈さん。しばらくでしたね。少し助けていただきた――――」
「んぐぐっ……また0って…………」
「??」
な、なんだか佇まいが奇怪です。ってかその、栞奈さんはいつもミステリーな感じなんですけど……。ゼロって何の事なのですかね? 謎ですけれど沈んでいる感じです。
「またこの説明か……。栞奈、今から何回か基地に来るので…………先輩さんたちは……絶対に、基地から外に出ないで……栞奈が来た数の累計…………栞奈に伝達して下さい……。それと、先輩さんは今……発言が書いて三文字ずつにならないと……発言自体が出来ない…………。そんな滑稽な怪異に巻き込まれているので……………………」
「滑稽な、怪異て」
「か、栞奈さん、一度静まってからでも……」
今の栞奈さんはいつもと比較してかなり口数が沢山な、何かハラハラしている的な感じです。ってか、先輩の低迷の実体がいきなり判明してしまったんですけど……。なんて……?
「絶対に、基地から出ないでね……それでは累計、頼みますので……」
「ま、待って!」
…………。行ってしまいました。し、心配だし気がかりです……。
「栞奈は『絶対に、基地の、外には、出るな』言った」
「んんっ、い、言っていましたね……。少し謎ですけど、待ちますか」
「まずは、三文字、怪異の、解明だ」
「は、はい。むむむ……」
栞奈さんは『発言が書いて三文字ずつにならないと、発言自体が出来ない怪異』と言っていました。一旦、何故先輩がその被害持ちなのか、ってかその怪異の必須さが謎なのは後に話すとします。
『書いて』ってのがピンと来ませんが、先輩の話す言葉が三文字の言葉に限られているって感じではない……のは確かです。発声時の音の数は関係なくって、先輩の発言は実際に書けば三文字ずつになる……んですかね?
「きっと、正しい。まさに、現在の、話し方、物語る」
「…………! ま、マジですね。ってか栞奈さんは何故知っていたんですかね、いろいろ」
「……短期の、輪廻の、蓋然性、ないか」
「そんな非科学的な……」
……でもここは非科学団の基地なんですけど。……ってか、タイムリピートとかって非科学的ともまた異なると感じるのですけど……。
~グループB~
禁止文字:たていすかんなにらせ
呪われしフシギ部!
「むうっ……。やはり、のどの、調子は、不調と」
「朝昼夕と常々その状況とは……。今日はキミへ憂えるね」
午後、堂々と発表し得る行動記録はほぼ虚無のとあるフシギ部の部室の奥、ボクはペアのキミと……お喋り中さ。まぁ……部の人はボクとキミと、あとは来間と呼ばれるやる気のある旧友も居り、キミとボクは部を創る人揃える故、このフシギ部へ。
朝の登校中のキミは、ボクも驚くほど小声も小声。小人のようさ。
「うーむ、早朝と、齟齬は、虚無ね」
「救護室へは?」
「昼の刻、見向き、蜂蜜の、のど飴、受取り、未処理」
「ふぅむ…………」
キミの声はどうも遠く聞こえるのさ。言葉はどれも須臾、助詞の抜ける喋り。フシギ部所属のヤツはもっと『これは呪術と予測』と述べるとソレっぽくある。きっとね。けれど、キミもボクもそれほどフシギへの興味はほぼ虚無。……ああ、来間嬢は述べると予測しよう。
「筆記はどう?」
「けれど」
「……?」
キミは筆記用具を持ち、ボードへ筆記を――――、筆記用具は不備アリ、と。
「おや、こっちはどう?」
「今日は、文字の、筆記は、不能さ。無理よ」
「ふむ、文字の筆記は不能、とは…………」
「どーぞ。筆記の、試行を」
と、キミは筆記用具をボクへ放る。不備アリの筆記用具をどうしろと? と思惑しつつも、ボクは筆記を無事遂げる。
「おや、筆記オーケーとはね?」
筆記用具をキミへ戻し、キミは呉れ呉れ筆記。やはり不備は起こる。
「おやおや……」
「今日は、ツキは、超悪く、終わり」
「それこそフシギ、と……」
……まあ、ここはフシギ部の部室。そう、フシギ部さ。じゃあ――――
「狐狗狸を呼ぶあの表。あれは?」
「お見事」
「…………在るのは何処?」
「……えーと」
ふむ、部室のモノへ触れることは不実施故、場所は朧げさ。前、狐狗狸を呼ぼうと策を練る来間のみぞ知る……。潜むのは部室とは思うけれど。机のドロアーやシェルフを見るものの、不発さ……。
「あるぞ。ボード、うしろ」
あるとは。先のボードの後ろへ回ると、ソレは貼り付け、と。秘事は睫とはこのことさ……。狐狗狸を呼ぶ儀式とは、側壁も許される? …………おや、これは……。
「どうも、奇妙さと不備のある文字列とはね。これは……そもそも記しの不備の様相、と……」
「述べる、通りね。理由も、不詳ね」
パッと見るところ、10文字程の記しの不備……。ふーむ。理由も法則も、あやふやさ。
「…………うぅ……。心もと無ぇ……」
っ! ……後ろの戸の開く音。やや驚く。やっと来間のお見えとはね。キミの不調、真の呪術っぽくあれば処理を所望しよう。
「来間嬢」
「やあ、来間。やっとお見えとはね。ちょっと調査を――」
「あぁっ……しきりと初期の値よぉぉ…………」
「??」
ど、どうも奇妙さのある様相の来間。けれどまあ、来間は常々奇妙を纏う奴さ……。初期の値とは? 来間のみぞ知る事は放置としつつ、来間は落ち込みつつある様相と見受けるのさ。
「しばしばこのルール及び付属の指示とは……。後々来間は部室へ赴くの…………。両者は部室を……きっと、退けぬよう……来間の部室へ見舞う値を……来間へ出力望む…………。と、加え、"キミ"は今日……筆記の三つ文字づつのみの……縛り喋り…………その如き奇妙との遭遇、及び状況………………」
「奇妙と、遭遇と」
「……来間、落ち着け」
今日のこの来間は日頃よりもよく喋る……? 焦燥をも思う様相さ。そもそも、キミの不調の根を突如明けるとは……。その訳は……?
「きっと、退けぬよう……。じゃあ部室へ見舞う値の出力望む……」
「おやっ? ちょっと待つのさ……!」
…………。颯爽と部室を退く来間。う、ううむ……。
「来間嬢『きっと、退けぬ』述べる」
「う、まあそう……。待ちの時期、と」
「ここは、三つの、文字の、奇妙を、処理を」
「うむ。えぇっと……」
来間は『筆記の三つ文字づつのみの縛り喋り』と述べ、去る。キミの奇妙との遭遇理由やそもそもの奇妙の故はあやふや。放置さ。
『筆記の』の部の理由は満ちぬものの、キミの喋りの音の値はそぐわぬ……ようさ。文字の値は属さぬ、キミの"発し"の記しを三つ文字づつのみの縛りとされる……よう、さ?
「きっと、合うと、思うね。今日の、オレの、トーク、常々と、そうよ」
「…………! ふむ、真とはね。それを来間の知る故は……未処理のままっぽくあるけれど、結構」
「……輪状の、世の内、見込み」
「それこそフシギ、と……」
……まあ、ここはフシギ部の部室。そもそも、輪状の世はフシギとは別とボクは思うのさ……。
~グループC~
禁止文字:ちとしはきくまのりれけむ
恨みを買う謎解明部!
「んんっ……。絶えず、ボイス、容体が、悪いな」
「朝から常にそうっぽいよねー……。センセー、問題…………あるっぽいねー」
放課後、いつも何もやっていない謎解明部が何故か貰った部屋で、センセーもアタイも……なんにもやってなかった。暫定で部員に栞奈っていう凄い謎解明に対する戦意? が高い奴がいて、栞奈が部活を創設する為にアタイらが人数合わせで入部っていう……そんな過程があってねー。……あ、センセーって別に、先生でないんで。フツーに『一個上』ねー?
朝、学校ン中で会ったセンセー、もうね、全ッ然声が出ていなかったよねー。
「うーん、朝昼夕、変化が、無いな」
「え、休んだ? 養護センセーに見てもらってないん?」
「昼休み、行った。bee、蜜飴を、貰った。未解明」
「へー……ってかセンセー、え、語彙なんなん?」
センセー、会話つらそ~っ。一回で全部言えてないってか、何だったか……文節で繋がってない? みたいな。謎解明部、ってか探偵サンなら『恨みを買ったからかもな!』って言ってるよね。でもセンセーもアタイもそんなに謎解明やろーって思わないからねー。あ、でも栞奈なら言いそ~。
「ん~……。ってか書いたらいいだろ」
「でもな」
「?」
センセー、ペンを持って紙に文を書いて――――、ねぇわ。色出てねぇっぽい。
「えー。ならペン変えて?」
「朝から、永遠に、符号文、控えが、不可で、やべぇ」
「……控えが不可って何?」
「ならさ、オメェ、書いて」
って、センセーがアタイにペンを渡す。コイツ色出ねぇヤツだよね? って思ってたら、フツーに出たわ。
「えっ? 出たよ、色」
センセーにペンを返す。もう一回書いてるっぽい。全然色出てないわ。
「あー……」
「運勢が、低迷な、今節さ」
「ンな謎あるかね……」
……いやここが謎解明部なんだが! ……ってか謎解明部だわ。だったら――――
「栞奈が野干呼び? で使ってたひらがな表使お?」
「ナイス」
「…………ここに置いてある?」
「……不明だ」
あーね。部屋ンもんに触らんからねー、置いてあってもわかんねーや。栞奈ならわかるんだろーな。部屋にあるんだろ。……テーブルにも棚ン中にも無いが?
「あった。裏面に」
あったんだ。使ってた紙ン裏面ねー。なんだったか、『岡目やめ』みたいなヤツだわ……。こういうヤツって安い紙でやっていいん? ってか、んん?
「なんか、色出てねーわコイツも。何? そもそも書いてないみたいな……」
「そーね。何故だ」
見ているが、そこそこ減ってるように見えるねー。いや、意味わからん何コイツ。
「…………うぅ……。だめかも……」
うわっ! ……裏で門が開いたから微妙にビビったわ。いよいよ栞奈か。センセーが恨みを買ってたンだったら解明、やってもらおうか。
「栞奈か」
「ん、栞奈ー、いよいよだーね。センセーが変だか――」
「ああっ……常々ゼロです……………」
「??」
な、なんか様子が変ってーか……いや、栞奈っていつも大体なんか変か……。ゼロって何? わからねー。ってか栞奈凹んでねぇ?
「もう一回説明するか……。栞奈、数分後に何回かここで門をオープンするんで…………あなた方、部屋から……絶対に、出ずに……栞奈が門をオープンさせた回数を数えてもらいたい…………。で、別でセンセイさん、今節……見た目が三符号? っぽい言い方でなかったら何も言えない…………そういう変な怪異に合ってるんで……」
「怪異て」
「か、栞奈、メンタルが安定感無いぞー……」
栞奈、なんかスゴイいろいろ言うってーか、焦ってね? いや、センセーが変なヨーダイなユエン? が……不意に解明かよ。何なん?
「絶対に、部屋から出ずにね……。回数を数えてねお願い……」
「おい栞奈!」
…………。行ったわ。何すっかァ……。追うか?
「栞奈が『絶対に、部屋を、出るな』言った」
「え、あぁ……そっか。わかんねーが、控えるか」
「一回さ、三符号、怪異を、解明だ」
「そうだなー。……あー?」
栞奈、『見た目が三符号っぽい言い方でなかったら何も言えない怪異』って言ってたな。一旦センセーがなんでそんな目に遭ってるか、そもそもそういう怪異が意味不明なんだが……、うん、さておいておこうか。
『見た目が』って何なんだか……センセーが言ってる内容が三符号になっている……? いやそうでもねーな。言い方っつうか、書いたら三符号になる……ってか?
「合う解、かもね。……ほらね、言い方、そうだ」
「…………! ん、そうだな。ってか栞奈なんで判ってたんだ? いろいろ」
「ループ、ただ中、蓋然性」
「ンな謎あるかね……」
……いやここが謎解明部なんだが。いや、ループって謎ですらねーだろ……。
~グループD~
禁止文字:つさそひこみもねるめろ
おまじないを喰らう超自然倶楽部!
「うーん……。やはり、のどの、調子が、不快だ」
「明け方から絶えず不調のようですけれど……。お兄ちゃま、お身体は大丈夫ですの?」
夕暮れ時、特に良い成果をあげられていない超自然倶楽部のお部屋にて、わたくしはお兄ちゃまと二人で……悠悠閑適にしておりましたの。ときに、倶楽部にはクマちゃんという大変士気溢れんばかりな学友の方がおりまして、お兄ちゃまとわたくしは倶楽部立ち上げの人数合わせとして入部しただけでしたの。
明け方、学園へ向かうお兄ちゃまにわたくし、仰天してしまいました。お兄ちゃまの"音"を綺麗に聴き取れませんでしたの。
「ううむ、明け方、今まで、変化が、無いわ」
「治療のお部屋へは向かいまして?」
「ランチ、食べた、後から、向かい、養蜂の、のど薬、受取り、保留に」
「あらまぁ……」
お兄ちゃまが話しにくいように感じられます。一度のお話が長くはなく、助詞の抜けたお話のしかたですわ。超自然倶楽部の一員としては『呪いの類ですわ~!』などと言うのであればより典麗なのですけれど、お兄ちゃまは、加えてわたくしは、あまり超自然的な現象に対して関心はありませんの。ああ、ですがクマちゃんであれば言うのでしょうか?
「では……お話を字としてお書きになられてはいかが?」
「しかし」
「?」
お兄ちゃまは筆を手に取り、半紙へ文章をお書きに――――、墨汁が硯に入れられていないようでした。
「あら、墨汁の用意をしましょうか?」
「今日は、未だに、字など、書けず。頭脳を、悩ます」
「ええと、字などが書けないというのはどのような……」
「筆です。貴方に、記入の、トライ」
と、お兄ちゃまは筆をわたくしへ向けました。硯に墨汁は……あら、ありますわ? 特に異変は無く文章を書けました。
「まあ、書けましたわよ?」
筆を返却しまして、お兄ちゃまはリトライをしたようですけれど、やはり墨汁が半紙へ流れてはいかないようで。
「あらあらあら…………」
「今日は、運勢が、大凶の、予感よ」
「かの超自然的な……」
……まあ当方は超自然倶楽部のお部屋なのですけれど! ……ああ、超自然倶楽部ですわ。でしたら――――
「魔獣を呼ぶのに欠かせない仮名一覧などはいかがでしょう?」
「ナイス」
「…………置き場はどちらなのでしょうか?」
「……判らぬ」
ええと、お部屋の道具にはお手を触れないようにしておりましたので、行方がわかりませんのよ。以前に使用を考えていたクマちゃんであれば関知の事象なのでしょうけれど……。お部屋の中に置いてあればと思惑していたのですが、書案の中には無く、棚の中には無く……。
「半紙の、山の下、位置よ」
まあ。適当に置かれていた半紙の奥深くでした。灯台の下方は暗いとはよく言いますけれど! 魔獣を呼ぶ儀式とは、半紙を媒体として良いのでしょうか? ……おや、どうしましょう……。
「何か、不自然に字が欠けていますわ。意図的に書いていないようにすら感じられますけれど……」
「確かに。何故か」
ふと拝見した様子では、11字ほど欠けてますけれど……。うーん、意図や決まりがよくわかりません。
「…………うぅ……。自信ない…………」
まあ! ……お部屋の戸がいきなり開いたので仰天してしまいましたわ。ようやくクマちゃんが来ました。お兄ちゃまの不運が本当に呪いの類でしたら治していただきましょう。
「栞奈か」
「ああ、クマちゃん。ようやく来ましたの。少々調べて頂きた――」
「あぁ……また零だぁぁ…………」
「??」
な、なにやら様子がおかしいですわ。いえ、クマちゃんはどんな時であれ不思議な方なのですけれど……。零とは何を体現したいのでしょうか? よくわかりませんが、どうやら意気消沈のよう。
「また言わないといけないのか……。今から私が部屋に何度か来ますので…………お二人は部屋から必ずや、出ずに……私が来た回数を……カウントしてほしいです…………。あと、センパイ君は今日……書いた場合に字数がトリオにならないと……喋りが進まない…………という変な怪異に鉢合わせていますので………………」
「怪異て」
「く、クマちゃん、冷静になられては……」
今のクマちゃんは普段に比べてよりおしゃべりと言いますか、何か焦りのような雰囲気を感じますわ。加えて、お兄ちゃまの不調の正体がいきなり明らかになりましたけれど……。どのような、どのように……?
「必ず、部屋から出ないでよ……。ではカウントをしてくれれば……」
「ああ! お待ちになられて!」
…………。行きましたわ。ど、どうしましょう……。
「栞奈は『必ずや、部屋を、出ない、ように』述べた」
「え、あ、ええ……。よくわかりませんけれど、待ちましょうか」
「まずは、書いて、字数が、トリオ、調べだ」
「わかりましたわ。ええと……」
クマちゃんは『書いた場合に字数がトリオにならないと、喋りが進まない』と述べておりましたわ。一度、何故お兄ちゃまが怪異の害を受けたのか、まず怪異の需要(?)がわからないのは置いておくとしましょう。
『書いた場合』というのがややわからないのですけれど、お兄ちゃまのお話しにおいて必ずトリオの字数というわけではないのは確かですわ。お話しの音数などがトリオかどうかに関係は無く、お兄ちゃまのお話しを現に書くとトリオの字数、なのかしら?
「たぶん、正しい。今日の、話し方、全部が、該当だ」
「…………! あら、本当ですわ! ときにクマちゃんはどうしてお分かりでしたのでしょうか。各様に」
「……繰返し、可能性」
「かの超自然的な……」
……まあ当方は超自然倶楽部のお部屋なのですけれど。いや、かのような繰返しなどとは、超自然的に該当しないと感じますけれど……。
???
0
-:-
「…………7連続リセットはおかしいでしょ……ルールは間違えてないし……」
……。
「来間か」
「あ、栞奈さん。やっと来ましたね。ちょっと調べてもら――」
「あぁ……やっぱり向いてないかも…………」
「??」
1
A不可:ぬふあうえおやゆよわをほへ
「……今度こそ正解のハズ……!」
……。
「来間が、来たぞ」
「ん、栞奈さん。その、さっき来たのは累計に入れなくていいですか? 『1回目』ですけど……。これでいいんですか?」
「た、正しかった……! いい……! 次も頼みます……!」
「ま、待ってくださ――――」
2
B不可:たていすかんなにらせ
「……よし。あの子も呪われ中故、来間の喋りも奇妙、けれど……。値は増えつつある…………!」
……。
「来間譲。登場よ」
「うむ、来間。『値はTWO』さ。調子はどう? ボクは待つのみ?」
「おーけー……。部室を退けぬよう、待ち続けとけよね……」
「あ、ああ……了承さ」
3
C不可:ちとしはきくまのりれけむ
「…………符号って言い方変だよね……。もう……」
……。
「栞奈だ」
「ん、栞奈。『今回で3』だぞー。手が空いてるんだが、何もせずにただ控えていていいんだな?」
「やった…………! えー、出たら、絶命ですんで……」
「え!? オイ! 絶命って何な――――」
4
D不可:つさそひこみもねるめろ
「……あの方、毎回キャラ変わりますし…………、私自身すら影響で口調が……ブレブレだし…………」
「…………嫌な予感が……」
……。
「栞奈だ」
「あら、クマちゃん。『今で4度』ですわよ? ……何やら険しいお顔ですけれど……?」
「大丈夫、なのか、栞奈よ」
「……ん、えーと、まあなんとか……」
「な、ならよいのですが……」
「???」
5
-:-
「学校中走り回って…………同じ景色ばっかり……進まないし…………。何番出口なの…………」
……。
「来間だ。五度目」
「あ、はい。『5回目』ですね。……これあとどれくらいなんですか? もう少し説明してもらえると…………」
「…………えーと、このオカルト部、3人とも呪われてます……」
「成程な」
「えっ!? 私もですか!?」
「うん……。先輩さんはさっき……あれ、さっき言ったよね……?」
「さっき、言った、通りか」
「あ、言ってましたか。はい…………で――――」
「私はどういう呪いを……? 先程『絶命する』とか言われてビックリしちゃいましたケド……」
「…………えーと、私もよくわかってないけど…………。私が部室に来るたびに……何か、性格が変わっている、みたいな……」
「え、全然そんなことは……」
「確かに、何故か、順応は、したが、どこか、違和感、あった」
「先輩まで……。え、くしゃみとかバイク乗ったらとか闇のゲームとかそういうヤツですか? あ、霊界の探偵さんみたいな?」
「楽観的、すぎる、だろう」
「……しかもその呪いに…………私も先輩もちょっと巻き込まれている…………。とにかく……無自覚に元と違う人間になっているので…………、ある意味、社会的に死ぬとか…………黒歴史になるから……出るな、っていう事なので…………」
「あ、あぁ~……そういう……。栞奈さんはどういう呪いを?」
「私は…………歩き回って間違い探しを連続で成功しないと…………時間が流れないみたいな…………それじゃあ待っててね。16で終わりだから」
「ちょっ、さらっと情報過多ですって! ちょっ――――」
6
AB不可:ぬふあうえおやゆよわをほへたていすかんなにらせ
「…………は? 発し続け無理ね。誤の見つけどころの事……? ムリムリ……」
……。
「来間ね」
「来間様! 『ここは6』その……さ、…………一人、察知続けるの、苦しくね?」
「……っし! ……そこそこね。ま、待っとけ」
「ま、待っとく」
7
CD不可:ちとしはきくまのりれけむつさそひこみもねるめろ
「…………数が増えていらぁ……! いや、だが会話難易が高い……!」
……。
「栞奈だ。七だよ」
「あ、ええ。『数、7ですわ』……アタイ、栞奈を待望ですわよ」
「うん、…………ふふ。笑う」
「おい!」
8
AC不可:ぬふあうえおやゆよわをほへちとしはきくまのりれけむ
「……数、いいかも。だがだんだんツライな……多難だ。さすがにここでミス駄目だから絶対に回避ね…………」
……。
「栞奈だ」
「『5足す3』ですね。……ん、んー……? ME、何故数足す? 」
「ね? 怪異が出ている」
9
BD不可:たていすかんなにらせつさそひこみもねるめろ
「……………あー、ようやくハーフ。……はあ~……、あの女子マジどう悪事を……? 呪縛の理由をのちのち聞く………………」
……。
「えーと、『9よ』マジ空虚。我々、待ちぼうけ……ちゃうけど」
「待ちの時よ。あちしは――――……あちし!?!?」
「ふふふ。………………ははは!!!」
「おお、爆笑はレア…………」
「れ、レアとは」
10
AD不可:ぬふあうえおやゆよわをほへつさそひこみもねるめろ
「…………二桁。何番出口からかなり過多なんですけど? …………んん?、今なんか、話しが意外と出来てたりして……? なんでだ」
……。
「『TEN』頑張れ。」
「栞奈クン、何か飲むかい? 今は……レディ・グレイしかないけど」
「では飲む…………Ta」
「……た? とはなんだい?」
「忝いの、意図だ」
11
BC不可:たていすかんなにらせちとしはきくまのりれけむ
「…………美味。心も熱っつ。…………あー、おやー……。ここ、話、常々積もる。故鬱々ね……。悲痛よもう。声を、音を……綴ろうね……」
……。
「『ELF』」
「えるふ? えっ、」
「『ひ、ひ』よね。」
「……あー、ひ、ひ。ね。声、ううー……」
「YOU、余裕?」
「そこそこ余裕……? 続こう」
「お、おー」
12
Aのみ:ぬふあうえおやゆよわをほへ
「……余裕? ほぼ"不"よ…………。部屋を追え、話を縫え、吾よ…………!」
……。
「……。余裕?」
「『une、二』よ。ふ、フワフワ!。話よ!」
「うふ、ウフフフフ…………」
「うわあ」
「うわあ」
「余裕? おほほほ……。ふう……」
13
Bのみ:たていすかんなにらせ
「……栞奈、精々勘に似せたいい偽探偵です。イライラなんて無い、……なんて無い…………。胃が痛い。全然イライラ。潜水艦貸せ。全世界ガタガタだい…………!」
……。
「ナイス。栞奈だ」
「『7足す、一足す、一足す、一足す、一足す、一足す、一足す、』です……何? 言いずらいです。」
「…………いいです! イライラですが……………………!!」
「静観だ」
「か、栞奈…………?」
14
Cのみ:ちとしはきくまのりれけむ
「…………マヂ無理鬼畜。吐くし。四肢はバキバキ」
……。
「来間氏」
「む。『七と七』来間氏、ちと危篤けり……?」
「むり」
「来間氏、地の利、地の利」
「凌ぎ凌ぎ……」
「??」
15
Dのみ:つさそひこみもねるめろ
「っつ…………見ろ、常々膝凝る……。姫、罪積み……! …………そろそろ寝る!!」
……。
「巫女ね」
「『ひ、五』ね。そろそろさ!」
「コツコツ、積み、そろそろ。…………姫、罪!! 罪ね!!」
「っ!?」
「罪自摸、姫さね」
「????」
16
-:-
「…………よぉぉーし…………!!!! ようやく学校から出られる!!」
……。
「……お二人とも帰ります…………! 早くしてください…………!!」
「来間か。待てよ」
「あ、16です――――って言わなくても良さそうですね。……ん、あっ、普通に喋れてますね!? 途中から私でも怪異に気付けましたけれど……」
「俺は? 未だに、三文字」
「先輩さんはまだ……早く出る……40秒で支度して…………!」
「空賊のおばさまみたいな台詞が栞奈さんから出るとは……」
…………。
「ドアはある…………。下駄箱は……開いてる…………。変な人はいない……。絵もかわっていない…………!」
「本当に間違い探しをしていたんですね……」
「生徒が、不自然、誰もが、居ない」
「よし、玄関の外に出ますよ…………」
「あ、はい……?」
「…………よいしょ~…………!! やった! 呪いが解けました!!」
「あー。あー。隣の許可局の黄巻紙ガス爆発。おっ、3文字以上だよねコレ。治ったー」
「なんですかその早口言葉。えっと……栞奈さん、結局これは何がどういう?」
「……あー。多分貴方が悪い」
「えっ、そんな大規模に呪われるような事しましたかね……私」
「思い当たることあるだろ、お前」
「え。…………あ、昨日、キーボードにレディ・グレイをこぼして壊しましたね……」
「部の備品壊すなよなー」
「……………………だからか……。キーボードに変わって私が貴方を呪う……!」
「え!? なんでですかー!」
おわり
解説記事
この記事は「言葉遊び Advent Calendar 2024」参加作品です