ATEM Mini Proを使ってSwitchでのゲーム配信に挑んだ話し

結論から言えば、Blackmagic designのATEM Mini ProでのYouTubeライブ配信はめちゃくちゃ簡単・快適です。ソフトウェアに依存しない調整、操作など全てにおいて抜群の使いやすさだと思います。しかしながらゲーム実況にこれが必要かと聞かれれば、まあなくてもなんとかできる環境は他にいくらでもあるかなです。

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ATEM Mini Proのいいところ

1. 見た目がいい

デザイン性がよく、ボタンの配置もよいです。裏面に配線が並びますので、取り回しは楽です。男の子ってこういうのが好きなんでしょ?です

2. 抜群の操作性

YouTubeライブの開始や終了が物理キーでできるってのは楽チンですし、ボリュームの調整、画面の切り替えなどワンタッチで直感的にできるのはとても楽です。また、サブモニターを使ったマルチビューによって切り替え映像や状況などを視認できる出力はかなり使いやすいです。

3. 必要十分の配信画質

回線にもよるのかもしれませんが、私の環境では常時6-10 Mbpsが表示されており、フルHDの画質でのライブ配信が可能です。特化したハードウェアエンコードのなせるわざなのでしょう。PCのスペックにとらわれないというのはメリットです。

ATEM Mini Proのいまいちなところ

1. 電源スイッチがない

映像スイッチャーなので機器に常時接続されていることが前提で、ATEM Miniだけの電源を切る必然性はないということなんだと思います。不意に切れたりすれば逆に配信などが大きな影響を受けるのでプラグが抜けないように本体にネジまでついている仕様は安心できます。一方で、常に煌々とどこかしらのランプが点灯しており、せめてこのランプを切るスイッチなりコマンドがあってくれればよかったのになと思います。電気無駄だし、PCやSwitch消しても凄い存在感を出してくれますので奥様がお怒りになるやもしれません。

2. 映像の録画方法

ATEM Mini ProはUSB-C端子に外部HDDやSSDを接続すると(exFATという使ったことがないフォーマットをしておく必要があるのもマイナス点)、ワンタッチで動画を記録することができます。この動画は、最終的に出力される映像および音声です。ISOになると、各ソースの映像・音声を別々に収録してくれるようですが、私にはそれは不要かなと思います。しかしながら、1番の問題点は、その記録されたファイルを扱うには、一々ATEM Mini Proから取り外してPCに接続し直す必要があるという点です。PCとATEMI Mini ProをUSBで接続することは可能ですが、PCのHDDやPCに接続されたHDDなどにデータを記録することはできません。よって、接続し直すことを選ぶか、USBで接続したPCでOBSなどを用いて記録するかを選ばないといけません。ATEM Miniの普通の使い方では、恐らくOBSなどを使ってのライブ配信をするケースの方が圧倒的に多いと思うので、この点については特に不満に思わない方もいらっしゃるかもしれません。私は後述の理由でOBSを使わないことを強いられているので、気になっただけかもしれません。

3. お値段

まあこの価格に見合っているかと言われれば、自己満足の域を出ないと思われます。あと、今の所必要ありませんが4Kには未対応。

総じて、どんなPC環境になろうともライブ配信の要として使うことができることから、私個人としては良い買い物だったと思います。もう少し配線がすっきりするかと思ったのですが、むしろ配線が増えてしまいました(筆者の趣味なので嬉しい悲鳴)。

リアルサラウンド配線図.001

恐らく誰の参考にもならないATEM Mini Pro導入までの備忘録

リアルサラウンド+Macが全ての元凶

スプラトゥーン2をプレイする際はサウンドプレイが大変有効です。反射神経が衰えているおっさんにとって、敵の気配に一瞬でも早く気づくことができるメリットは計り知れません。SwitchのTV出力にはサラウンドが選べるようになっていますが、これが曲者で、LPCMという規格でHDMIへの出力しかできません。詳しくは"Switch リアルサラウンド"と検索していただければわかりますが、要するにHDMIに出力した5.1chの音声全てのチャンネルに分け、アナログ出力してくれる(中華)機器をかました後、Razar Tiamat 7.1 V2を使う以外に現行Switchでリアルサラウンド環境を使うことは不可能です。サラウンドをうたっていて、Switch対応と書いてあるヘッドセットも2ch分しか出力されなかったり、ステレオ出力をバーチャルでサラウンドにするものしかありません。

では、このリアルサラウンドを使ってプレイ動画の録画や、YouTubeライブ配信などを行うと何が起こるでしょうか?確かに私の耳ではTiamat 7.1からリアルサラウンドの音声を聞きつつプレイすることが可能です。その映像および音声を取り込むためには何らかのキャプチャーボードが必要になるため、Switchから出力されたHDMIの信号をスプリッターなどを使って分岐する必要があります。この信号に乗ってくる音声は5.1chであり、そのまま録画・配信を行うと、5.1chのうち2ch分しか記録されないことに気づきます。まあ我慢しようと思えばできるのですが、例えばナイス玉を撃った時の効果音など、色々な音がすっかり消え去ってしまうのです。5.1ch入力-ステレオ出力とうたう(中華)機器もいくつか試しましたが、ダウンミックスしてくれる訳ではなく、要するに3.1ch分はカットして2ch分を出力するだけの安物しかありません。

筆者が使っていたキャプチャーボードはElgato HD60 Sという機種で、Macにも対応していて録画をするのには大変よい機器です。しかもHD60 Sには3.5 mmアナログ入力ポートがあるではありませんか。これを使ってなんとかできないかなと思案の末、たどり着いたのが「アンプ」です。5.1chの音声をダウンミックスしてくれるアンプを探したところ、いくつか候補があることがわかりました。しかし、それらはもれなく高級オーディオのアンプで、サイズも大きく、たったそれだけのために数万円はちょっと出せないなと・・Amazonを眺めていると、古い機種の中古品が売っているではありませんか。当時は数万円した機種が、中古で数千円。サイズもコンパクトなONKYOのSA-205HDXというのを買ってみました。この機種はHDMI入力を2系統、HDMIパススルーの出力を1系統備えており、前面にステレオアナログ出力があります。早速SwitchからのHDMI出力をスプリッターで分岐し、アンプへ差し込むと、ちゃんとMULTI CHANNELと認識するではありませんか! その音声がしっかりダウンミックスされてアナログ出力されましたので、あとはケーブルで60 Sに入力し、Game Capture HDにおいて音声入力をアナログに設定することで聞くに耐えうるゲーム音を記録することができました。大満足の一瞬です。OBSでも同じような設定が可能です。

録画してYouTubeへアップロードするのには何の問題もありません。しかしライブ配信はかなり厳しいです。配信に挑戦しようとこのタイミングで買い換えたMac mini (2018)が非力ということもあるのですが(メモリは64GBだけど)、フルHDの配信は全くできませんでした。Macのグラボはゴミですので、なんとかならんかなと次に思い立ったのがeGPUを使うことでした。秋葉館にてSonnet eGFX Breakaway Box 550 にRADEON RX580がセットになったものがあったので導入。ようやくそこそこの画質での配信も可能になりました。しかしそれでもかなり厳しいようで、OBSの設定を色々いじくってもどうにもこうにも安定しませんでした。一番悩まされたのが音声の処理で、私自身の環境のせいではありますが、妙な信号のとりかたをしているせいで音はズレる、途中で切れる、しまいには全く音がなくなるともうどうしようもない。

ここまでの出費で余裕でハイエンドPCが買えます。バカです。縛りがなければこんな苦労はしないのです。いよいよWindowsマシンを買うしかないかと諦めかけたところ、Blackmagic designを紹介する悪魔が私の前に現れました。見た目もcoolだし、なんか期待できそう。要するに高機能HDMIスイッチャーで、配信などにエフェクトかけられたりして、昨年は巣篭もり需要でプレミア価格だったようです。スイッチャーじゃダメじゃないかと思いましたが、ATEM Mini Pro以上の機種であれば、それ単体でYouTubeなどの配信ができるとのこと。要するにハードウェアエンコードをしてくれるということですので、非力Mac miniや言うこと聞かないOBSから解放されるのではないかと思っていたところ、丁度2021/4/30にATEM Mini Proが値下げされました。悪魔の囁き・・価格.comから秋葉館のページへ飛んだらもう私を止めるものは誰もいないのでした。

ここでもリアルサラウンド+Macが足を引っ張る

ATEM Mini Proに密かに期待していたのが、これだけ高機能なものだから5.1chをダウンミックスしてくれるのではないかということでした。検索してもそういった情報はありませんでしたので、賭けではあったのですが、見事に負けました。5.1chで入力しても出力は2ch分のみとなります。

この時点で私としては大敗北なのですが、返品するのも癪ですし、悔しいのでHD60 SをATEM Mini Proに置き換える作業を行うことにしました。60 Sでやっていたようにゲーム音は結局アンプを使ってアナログに変換して、ATEM Mini Proのマイク入力へ。映像の取り回しを試行錯誤した後、フルHDでのYouTubeライブ配信ができる環境を作ることができました。

ちょっと頭を使ったところ その1 マイクやDiscordの音声をどうやって入力するか

ATEM Miniを使ったライブ配信を調べるとたくさん動画などが出てきます。しかしゲーム配信を想定しておらず、コンデンサーマイクやビデオカメラのマイクを使って、それをATEM Miniのマイク端子に接続するという普通の使い方をしています。私が所有しているのはYeti nanoというUSB接続タイプのマイクですので、ATEM miniには直接入力できません。アナログに変換すれば使えるかもしれませんが、それではDiscordのボイチャができなくなってしまいます。そこで、Macのデスクトップ音声にYeti nanoとDiscordの音声をLoopback-2を用いて出力する設定とした後、MacからのHDMI出力をATEM Mini Proに入力することで解決しました。

ちょっと頭を使ったところ その2 デュアルモニターの接続をどうするか

筆者はメインの24インチモニターでゲームをしており、2系統あるHDMI入力にゲームとMacの映像を割り当て、モニターのスイッチで切り替えています。それとは別にモバイルモニターも使っており、Mac→eGPUから2つのモニターにMacの映像を出力してデュアルモニターの環境を作ってありました。メインのモニターでゲームをしながら、サブのモニターでブラウザーやDiscordの操作ができるというものです。しかしながらATEM Mini Proの出力をサブモニターに出力してしまうと、ATEM Mini Proを使わないときも、常に何かが表示されてしまう状態になります。また、前述の通り、ATEM Mini Proには電源スイッチがありませんので、使わない時もランプが点灯しており、私のように仕様頻度の低い者にとっては、普段はATEM Mini の電源アダプターは引っこ抜いておきたいところです。この状態ですと、サブモニターは使えませんので思案しました。解決方法としては、PCからの出力とATEM Mini Proからの出力をHDMIセレクターを使って切り替えるというものです。これならば普段はATEM Mini Proの電源は切っておいて、PCの出力をセレクトしておけば通常のゲーム、PCのデュアルモニターとして運用できました。しかしATEM Miniの出力(マルチビュー)を13インチのモバイルモニターでやるってのは少々無理がありましたので、可能ならばもっと大きなモニターが欲しいところです。(とりあえず筆者は15インチのモバイルモニターをポチってしまいました)

誰がどう考えてもちょっといいPC買えば済むんですけどね。



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