見出し画像

令和最新版ワイヤレスイヤホンの放電を本気で検討する

画像1

商品画像の放電が行われるためにはどのようなスペックが必要なのかを検討してみました。
まずは条件の設定から。

画像2

まずは一番重要な空間距離hの設定。
もちろん商品説明に空間距離の記載はないので、商品画像から推定することにします。

キャプチャ

ご丁寧に仕様をアップロードしてくれている中華レビュアーがいました。

画像4

蓋の高さがわからないので適当に推定して、それより条件
・空間距離h=42mm
を導出。

その他の条件は下記。

・気中
・1気圧
・直流

各条件より、放電の形態が限定されます。

具体的に言うと、低圧で発生する「グロー放電」と電解集中部のみ発光が見られる「コロナ放電」は除外され、交流条件でしか発生しない「誘電体バリア放電」「ストリーマ放電」、放電の初期形態である「タウンゼント放電」なども除外されます。

結果として残った放電形態は以下となります。
・火花放電
・アーク放電

まずは火花放電から考えていきます。

◎火花放電

電極間に印加される電圧がある一定値を超えると発生する放電です。
雷などがこの放電形態に該当します。

1気圧の気中における絶縁破壊電圧は一般的に3kV/mmと言われています。
よく電気屋さんやインターネットでは1kV/mmという値も出てきますが、絶縁破壊電圧は電極形状や湿度にもよって変わってくるため、実際に作業する人の安全性などを考慮して言われている値だと勝手に思っています。

今回は3kV/mmで令和最新版を検討します。

画像5

上記条件より、42mmにおける絶縁破壊電圧は126kVになります。

つまり、充電時の本体ケースのコネクタの電圧が126kVであればこの状況になる可能性があるということです。

ちなみに126kVは一般的に一次変電所以前で使われる電圧です。
第二種電気主任技術者を持っていないと扱えない電圧でもあります。

画像6

ただ、いろいろ検討しましたが、実使用のこの形態で絶縁破壊による火花放電が発生する可能性は低いです。

本体側から電力が供給されると仮定すると、電流の流れは下図となります。

画像7

電流は回路が形成されて初めて流れるため、放電が開始されていない状態の場合、近い電極となるイヤホン側と本体側のコネクタ間で先に絶縁破壊が発生してしまい、本体側とイヤホン側を経由する商品画像のような放電は発生しにくいのではないかというものです。

画像8

コネクタ間はイヤホンおよびケース本体による沿面放電となり、放電しやすくなる可能性もあります。
以上より、絶縁破壊電圧126kVによる火花放電の画像ではないと考えます。

◎アーク放電

放電の最終形態と呼ばれ、電流が高く断続的に光と熱を発する放電です。
アーク放電は何らかの放電からつながって発生する放電ですが、ここではある操作を行ったと仮定して強制的にアーク放電を発生させます。

画像9

画像にも書いていますが、充電状態からイヤホンを引き外します。
電流が流れている状態で引き外すため、回路条件によっては断続的にアーク放電が発生します。

次に、上記の条件からアーク放電が断続的に継続する条件を検討します。

一般的に、低電圧・低電流領域で引き外し操作を行うと、アークが発生することによる回路抵抗値上昇によりアークは一瞬で消えてしまいます。
今回は初期条件であるh=42mmでもこの放電が継続する条件を検討します。

画像10

早速結論に入りますが、
・陰極降下電圧:20V×2か所=40V
・アーク長によるアーク電圧:84mm×2.5kV/mm=210V 
 ※アーク電界を2.5kV/mmと仮定
より、42mmのアーク維持に必要な電圧は250Vです。

なお、この値は周囲の温度や圧力、湿度などによって随時変わっていきます。安定をとるなら400Vは欲しいってところですが、絶縁破壊と違って全然余裕ですね。

画像に唯一の間違いがあるとすれば、

画像11

アーク電流がループで流れている関係でアークにそれぞれ斥力が働きます。
そのため、正確な商品画像は上記のように、広がったアークが2本出ているようなものだと思います。

ぜひこの写真に変えてみてはいかがでしょうか。

◎結論

令和最新版は、250Vの本体電圧があればできる! なお