良いお年を

「良いお年を」という言葉が好きだ。

「良いお年を」お迎えください。かもしれないし、
「良いお年を」お過ごしください。かもしれない。

「お迎えください」や「お過ごしください」まで言ってしまわずに、
「良いお年を」とだけ、口々に挨拶する、日本の年の暮れが好きだ。

来年のことかもしれないし、
残りわずかな今年のことかもしれない。

「かもしれない」から、
どっちのことでもあると思いたい。

来年のことでもあるし、
今年のことでもある。
2年分の無事を祈っている。

2年分、と言えば。
2年参りも好きだ。

12月31日の夜中に神社へ向かって、
お詣りの順番を待ちながら、
自発的に、みんながそれぞれ小さくカウントダウンをする。
小さな声が、次第に合わさって、大きな声になる。
1月1日になると同時に、一斉に神様への挨拶が始まっていく。

今年の分と、
来年の分と、
振り返ると去年の分を、
またいでお詣りする。

お得だ。
それに効率的だ。
なによりロマンがある。

たった1,2時間の間に、
去年・今年・来年を感じることができる。
時空の狭間にいるみたいだ。

そういえば。
2年参りに一緒に行った相手にだけは、
「良いお年を」と言わない。
去年も今年も来年も、
ずっと一緒にいることが、約束されているかのように。贅沢なことだ。

そろそろ年越しだ。
今年は久しぶりに、家でそばを食べる。
今年の災厄を断ち切って、来年に備える。
そばにも2年分のお得が詰まっている。

2年分。
今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

良いお年を。

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