見出し画像

【トレカ】NBA TOP SHOTから見るNFTトレカの革新性 #NFTの歩き方5

こんにちは、雨弓です!本日は第5章、NBA TOP SHOTというプロダクトから見るNFTトレカという存在のユニークさと面白さ、NBA TOP SHOTのマーケットプレイスの戦略についてをやさしく解説していきます。


NFTの歩き方目次

0.【序章】デジタル空間におけるNFTという革命

1.【FTとの違い】そもそもNFTってなに?

2.【技術】NFTってどうやって本物を区別しているの?

3.【活用事例】アート、トレカ、ゲーム、権利など様々な使い方!

4.【アート】デジタル空間で絵や動画や音声が価値を持つ!

5.【トレカ】NBA TOP SHOTから見るNFTトレカの革新性

6.【ゲーム】育てて交換、対戦!遊びながら儲かることも?

7.【その他】思い出に、記念に、自慢用に!歴史の1ページを記録して保有!

8.【法律】実はかなり複雑でまだまだ未整備な法体制や権利関係!

9.【税金】どんな扱いになるのか、知らないと怖い税制! (一般的な認識)


▼そもそもトレカって何?すごいの?

まずの前提の前提として、トレーディングカードと言っても様々です。 Wikipediaには「トレーディングカード(Trading Card)とは個々に異なる様々な種類の絵柄や写真が印刷されていて、収集(コレクション)や交換(トレード)されることを想定して作られ販売・配布される鑑賞用またはゲーム用のカード。 ... 日本ではトレカと略されることが多い。 他に応募券や金券の要素を持つカードなどもある。」と書いてあります。

私は世代としては遊戯王カードやデュエルマスターズというカードゲーム式のカードを連想しますが、プロ野球やサッカーのカードもありますし、ポケモンもありますし、アイドルやアニメなど非常に多種多様です。そしてこのトレーディングカード、実はみなさんが思っているよりも世界的に大きな市場があります。

Revenue of the card game market worldwide from 2012 to 2025(in million U.S. dollars)

こちらはStatistaが公表している世界でのトレーディングカードの市場規模で、おそらく一次流通と二次流通の合計データであると思われます。こちらによると2012年には27億ドルだった世界のカードゲーム(トレーディングカード)の市場規模は右肩上がりで成長しており、昨年には56億ドルの市場規模になっています。

これは同じく2020年の日本のコミック全ての市場規模が6,126億円となっておりますので、日本の漫画全てを合わせたくらいと同等の巨大なマーケットが存在しています。もちろんこれ全てがNFTになるという話ではなく、物理空間からデジタル空間に移行させるのに十分なポテンシャルとリターンを秘めているという共有です。

▼トレカがNFTになると何がいいんだっけ? NFT化による3つのメリット

さて、ここからが本題のNFTトレカについてです。NBA TOP SHOTについて考える前に、まずトレカをNFTにするメリットや特徴から考えていきたいと思います。

まず1つ目、トレーディングカードに限らず物理的なアイテムは全てそうなのですが、トレーディングカードが私たち消費者の元に届くまでには長い時間と大きなコストがかかっています。これは例えば日本のスポーツカードであれば野球選手やサッカー選手の版権を持っている球団やチームなどに交渉し、どの写真を使うのか、どんなステータスにするのか、どんな紹介文にするのか、レア度は何になるのかなどを1種類1種類決めていかないといけません(企画)。さらに決定した内容を工場に発注し、パックに包んで商品として完成(製造)させ、そのまま日本中の各店舗へと運送して、さらに届いた後にお店の方が検品し、店頭に陳列する(流通)ことでようやく商品が買える様になります。

それと比較するとトレーディングカードをNFT化(デジタル化)した場合は、「企画」の部分は変わりませんが、「製造」に関しては内容を入力してボタンをポチポチ押すだけでNFTが作れます(正確に言うと独自コントラクトで作成する場合はそれだけではありませんがここでは一旦簡略化します)し、「流通」に関してはそのできたNFTに宛先となるアドレスを入力したりマーケットプレイスに出品するだけで完了です。つまり「製造」と「流通」の部分にかける時間的コストと費用的コストをほぼゼロにできます。さらに商品の企画から販売までが非常に短時間でできるため、流行った物やトレンドを迅速に消費者へ還元することができるためよりユーザーの満足度を高めることができます。

2つ目に、適正価格が出しやすいというメリットがあります。これは正確にはデータが集めやすいということです。例えばブックオフで本を売ったり、リサイクルショップで物を売ったりするときに参考にして良いデータが少ないと売り手はいくらで売りに出していいのか、そして買い手はいくらで買っていいのかがわかりません。しかし例えばメルカリでは「過去に売れたアイテムの値段や状態のデータ」を表示しており、出品時にも売れやすい価格をシステムが自動で提案してくれます。これは豊富な売買データを持っているためにできることです。NBA Top Shotは一次販売から二次流通まで全て同じプラットフォーム上で、デジタルなアイテムを扱っているため全ての商品がいついくらで売れて、誰が持っていて、どんな取引がされてきたのかを全て把握可能です。

最後に3つ目、これが一番重要なのですが売買や交換などのしやすさです。例えば私が子供の頃は遊戯王カードやデュエルマスターズなどのカードゲームが流行っていましたが、当時は物理空間で会える人、物理的に行ける店でしか売買や交換が成立しないためそもそもマッチング自体が成立しなかったり、一般的な相場とはかけ離れた価格での取引になったりしてしまいます。このマッチングの機会をデジタル上に押し広げることで世界中の誰でも欲しい人がいれば取引が成立するようになり、一気にNFTの流動性が高まってきます。またメルカリのように梱包、発送、物流、受取などの手間もかからないため、より取引が高速化されています。

とはいえまだまだ物理空間でのカードに比べて、NFTカードゲームの体験やユーザビリティが良いかというと正直まだまだ微妙ではあると思います。発展途上であり、今後どういった進化をしていくか楽しみですね。

そしてこのトレカをNFT化する3つのメリットを的確に抑えているのがNBA TopShotになります。これはマーケットプレイスとブロックチェーン自体の話にも繋がってくるので最後にまとめます。

▼NBA TOP SHOT自体の3つの優れたポイント

・世界最高級のIPと最強級の運営

NBA(National Basketball Association/ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)はアメリカでもトップクラスの人気を誇るスポーツリーグです。アメリカではアメリカンフットボール、ベースボールについでバスケットボールが人気です。私も中学時代はバスケットボール部でしたので、BSで放送される試合を食い入るように見つめていた記憶があります。日本でいうサッカーのような位置づけだと思うと「あぁ、結構人気じゃん」という感覚が伝わるかと思います。 そしてベースボール(大リーグ)と同じように各チームにそれぞれ拠点があります。例えばマイアミ州にはマイアミ・ヒート、フェニックス州にはフェニックス・サンズ があります。そしてこの「地域に根付いている」という要素があとで説明する「交換の需要」につながってきます。

さらにIPも超一流ですが、それを運営する「Dapper Lab」というチームが非常に強力です。彼らは2017年から「CryptoKitties」というNFTの技術が誕生してまもない頃から既にNFTのサービスをローンチして豊富な経験を積んでいます。ちなみにCryptoKittiesはクリプト業界では一時期知らない人は恐らくいないのでないかという程に流行っていました。 彼らはNFTのより洗練させたビジネスモデル確立のために独自ブロックチェーンFlowの構築、そして世界中のスポーツと提携を進めています。また大型の資金調達を繰り返しており3月に340億円、9月には250億円の資金調達を完了しています。技術・ビジネス・資金の全ての面で盤石な体制を築いていると言えるでしょう。

・デジタル上で強烈な体験

NFTはデジタルなカードであるため、どうしても基本的な体験は物理的なカードに対しては劣ってしまいます。例えば物理的なカードであれば質感、質量があり、眺める楽しみや使う楽しみがありますがデジタルでは少し味気ないと思う方も多いのではないでしょうか。

しかしNBA TOP SHOTはユーザーに対して「ワクワクさせる」仕掛けをいくつも作っています。 まずNBA TOP SHOTを買う時ですが、NBA TOP SHOTを買うためには「行列に並ぶ」必要があります。普通はECなどでショッピングをする際、商品の在庫があれば買えるし売り切れであれば買えません。またライブのチケットを買う時などには予約販売となり、買えるかどうかや当選したかどうかの可否だけがメールで表示されます。

しかしNBA TOP SHOTは違います。NBA TOP SHOTはまず指定された時間までにサイトにいく必要があります。これは例えば21時に商品が発売開始になる場合、20時半でも20時45分でもいいのですがサイトにアクセスして専用のルームに入る手続き(ログインしたアカウントでボタンを押すだけですが)をする必要があります。そして時間まで「待つ」のです。そして該当の時間になると画面が切り替わり、自分が何番目なのかが表示されます。

例えば2021年3月6日のこちらの画像では、パックの販売個数は61,086セットで私の番号は最初に63,000くらいでした。画像内では少し進んだので自分の順番まで57,838だということがわかりますが、つまりこれは「非常に微妙」な順番です。というのもNBA TOP SHOTは当時なかなか行列が進まず、この順番だと1時間以上待つので列を抜ける人もいるのです。これがポイントで「実際に購入成功するまでは買えるかどうかわからないドキドキ感」「買うまでの待つ時間」を意図的に作りだしています。 そしてこの待っている時間に必然的に同じ環境の人通しでコミュニケーションが生まれてきます。実際に3月はちょうどクラブハウスが流行りだしていた時期なこともあり、NBA TOP SHOTの販売が行われるたびにクラブハウス内に部屋が作られて「私はxxxx番でした!買えそう!」という雑談や、NBA好きの人に「xxxxxっていう人のNFTがパックで出てきたんですけどこの人って人気なんですか?」とレア度を確認するなど交流が生まれていました。

・パックのランダム性と、売買・交換の需要の創造

ポイントの1つとして大きなところに「購入するパックのランダム性」があります。これはトレーディングカードを扱う際に非常に重要で、「欲しい選手のNFTを自分で選んで買う」だけだとそれぞれが商品を買って満足してしまうため二次流通が発生しません。しかしランダム性にすることで自分の欲しい選手のカードを手に入れるためにはパックを購入しまくるか、二次流通で手に入れるしかありません。もちろんランダムなため、自分が応援したい選手やチーム以外の選手のカードも手に入ります。そういった自分にとっては不要なカード(誰かにとって必要なカード)を二次流通で販売し、得た資金で自分の欲しいカードを買うという循環

を作り出しています。

これはオタク活動に明るい方には常識ですが、こういった推しが違う人たちにランダムで商品をあてがうことでそれぞれが最適な推しを求めて二次流通のマーケットができるというのはアイドル業界でもアニメ業界でも同じです。

そして余談ですがもう一つワクワクする体験として非常にシンプルですがパックを購入後の開封演出が上手いです。これに関しては日本はスマホゲームのガチャ大国なので、それをイメージしてもらえば分かりやすいと思いますが、それまではNFTを購入する際の演出はダサいものが多かったのでより多くのユーザーを引きつけることになったポイントしてデザイン性は重要だと考えています。

▼マーケットプレイスの集約のメリットと課題

NBA TOP SHOTではこのようにトレカをNFT化する3つのメリットと、NBA TOP SHOT自体の3つの優れたポイントを持っていますが、これはNBA TOP SHOT自身が自分たちで直接マーケットプレイスを1つに集約することで実現しています。

例えば3つのメリットのうち、1つ目の「時間とコストの大幅なカット」という点ではどんなNFTでも実現していますが、2つ目の「データの集積」という観点で言うとマーケットプレイスごとにデータを持っているので、データ的を集約・分析するためにはあまり分散しない方が良いです(実際にはパブリックチェーンのNFTの売買履歴は全てブロックチェーン上に残っていますが、参考となる価格や出来高がひと目見て分かるのはOpenSeaなどのマーケットプレイスの方で、直接売買履歴を確認するよりはるかに便利で分かりやすいです)。

また3つ目の「売買や交換などのしやすさ」という観点では、もろにマーケットプレイスそのものが影響します。現在多くの人はOpenSeaやfoundationを使っていますが、それは売り手からすると「多くの買い手がいて、高く売れるから」であり、買い手からすると「良い作り手がいて、良いものが買え るから」という原則が大きいでしょう。

この点一見NBA TOP SHOTが独自マーケットプレイスを構築するのは悪手に見えますが、そこに多くのユーザーを連れてこれる理由がNBA TOP SHOTのポイント1つ目である「世界最高級のIPと最強級の運営」です。そして独自のマーケットプレイスだからこそ、OpenSeaやfoundationといった「普通の」NFTマーケットプレイスでは提供できないような、2つ目のポイントである「デジタル上で強烈な体験」の提供が可能です。 また3つ目の「パックのランダム性と、売買・交換の需要の創造」に関しても独自のマーケットプレイスだからこそランダムのパック販売や、体感的に分かる二次流通の仕方、同一選手やチームでの検索やシリアルナンバーによる価値の違いの検索などが使いやすく分かりやすいデザインのまま提供ができています。

これまでのNFTはイーサリアムを中心に、作って既存のNFTマーケットプレイスか、独自のサイトを構築して一次販売を行うというモデルが多くありました。しかしNBA TOP SHOTは前述したとおりNFTの良いところを多く取り入れつつ、自分専用のマーケットプレイスを作り、その中でのみNFTを売買・取引させるというオープンな技術とクローズドなビジネスを組み合わせています。このパブリックチェーンと独自マーケットプレイスというNFTビジネスとしてはハイブリッド型のモデルで成功した珍しい事例と言えるでしょう。

このようにトレーディングカード×NFTとして凄まじい成功を収めたNBA TOP SHOTですが、今は春の熱狂も冷めてきて少し落ち着き気味です。ここからコロナが収束してくると実際のNFTの試合を見にいくファンに対してリアルな体験や価値の提供が可能になってくるので、今シーズンのNBA楽しみながらNBA TOP SHOTにも期待したいところです! 次回は少し予定を変更してコレクティブNFTのお話をしようかなと考えています!それでは!

※本記事内の図や表現はご自由にお使いいただいて構いません。
※この記事は2021年11月に執筆したものです。

監修:Mask Jiroさん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?