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3分で読めるレイルロオドのお話「オリヴィの描くレール」&レヱル・ロマネスク0 第16話「敷かれたレールの食い違い」ネーム&字コンテ(全)

こんばんわ。
本日が一般的な「送り盆」の日ですね。

お盆休みが今日までの方、もう終わった方、週末までの方、お盆休みなどなかった方――
いろいろであるかと想像しますが、お盆をすぎると暑さの方も一段落するのかな? と思われますので、
そういう意味では、みなさま一区切りなのかなとも想像します。

現在鋭意ネーム連載中のWEBTOON 作品『レヱル・ロマネスク0』の方も、
本日で一区切り、第16話『敷かれたレールの食い違い』のネームが一通り揃いましたので、一気に公開いたします。


字コンテともども、どうぞご笑覧いただけましたら幸いです。

この次にくる区切り、というと学生さんなら新学期ということになりましょうか?
席替え、中間テスト、体育祭に文化祭……学生さんはイベントたくさんですよね。

わたくしはそういうものろくすっぽ参加してなかったので、
「学園もの」を書くことに大して凄まじい苦手意識がございます。

なんというか、「学園ものならわたくしよりうまくかける人100万人くらい日本語話者の中だけでもいるでしょ」みたいな感じで。

けれど、保線についての物語をわたくしよりうまく書ける人は1万人以下で済むのでは?
くらいな気持ちもございますので、本日の短いお話は、保線について書いて見たいと思います。

ネームの方も、もうしばらく保線のお話続きますし。

保線のお話ですので素直に、登場するレイルロオドはオリヴィ。
タイトルは「オリヴィの描くレール」としてみたいと思います。

どなたにも無料でお読みいただけるお話となりますので、よろしければお楽しみください。

■オリヴィ■


元々は冨士実延鉄道で客車列車を牽引するⅨ号に付随するジェネリック・レイルロオドだった。
その後転変を経て現所属先、肥颯みかん鉄道に落ち着くが、その間も相棒はずっとⅨ号。
キャリアの長さが知識・経験と直結している頼れるベテランで、特に保線に詳しい。

■「オリヴィの描くレール」■

(あらすじ)
遊間――レールとレールの間の隙間――の問題に悩む双鉄。
相談をもちかけられたオリヴィは、
遊間について、しっかりと説明してあげます。

///

「Oops! キキイッパツだったんだねー」

「まことにな」

故に知りたい。教わりたい。
オリヴィ先生という専門家に、この問題の根本的な解決策がないのかを。

「レールとレールの隙間。その、なんといったか」

「ユーカン」

「だ。その遊間に、今回の問題の根源があるのではないかと考えた」

「うん」

「ゆえ、よければどうか教えてほしい。夏の暑さ程度でレールが延び、浮く。
そのような狭さに遊間を、なにゆえ設定するのかを」

「んーと、これレールね? で、適切とされてる遊間がこのっくらい」

二本の人差し指――とても短くほんのり丸まっちい指同士を、わずかな隙間をあけてオリヴィが並べてみせる。

「この上をガタンゴトンて列車が通過していくわけなんだけど――
遊間にもっと余裕をもたせるとさ」

「ああ!」

指と指、すなわちレールとレールの隙間が開けば、あまりに自明であることを自らが尋ねたのだと思い知る。

「遊間の狭さは乗り心地の良さであり、安全性の担保でもあるのか」

「だねー。ユーカンが広くなりすぎると、ユーカン通過時の衝動はおっきくなっちゃうし、それが限界を超えちゃったらもう脱線しちゃう」

「う……む――」

脱線という音が鼓膜から響いてくれば、己の愚かさを呪いたくなる。

安全が第一の使命――乗務の度に復唱していることだというのに――

「だから、ユーカンを適切に狭くして、その上でレールを伸びづらくするっていうのが、基本的なレールフセツの方針になってるんだよ」

「レールを、伸びづらく」

うつむきかけていた顔を、オリヴィの声が持ち上げてくれる。

そうだ。為すべきことならいつだって、反省ではなく償いだ。
落ち込んで止まっていられる資格など、僕ごときにあろうはずもない。

「具体的には?」

「ソーテツはまだやったことない? 犬釘打ちって」

「ああ!」

理解する。
いや恐らく無意識には理解していたのだが、より明確に、理屈として。

「枕木とは、レールの伸びを抑制するものでもあるのか」

「That's right! 『モノデモアル』 だいせーかい!!」

にこり、オリヴィが笑ってくれる。

「枕木は、バラストと一緒になって列車が通過するショードーを和らげて、同時にレールの伸びも防止してるの」

「なるほど……」

クッションであり、同時に鎖。
理解はそのまま、問題の難しさを浮き彫りにする。

「であらば、単純に枕木をより頑丈にし、結果レールを伸びづらくすれば解決する、という問題でもないのか」

「だねー。けどけど、大廃線前には枕木改良のケンキュー、結構すすんだんだよー」

「そうなのか」

オリヴィが楽しげに聞かせてくれる。
鉄枕木、コンクリート枕木などが実際に施工され、それぞれの欠点により淘汰されていったという苦闘の歴史を。

「で、ついに誕生したのがPC枕木!」

「ピーシー?」

「prestressed concrete!」

「プレストレスドコンクリート?」

「そ! 聞いたまんま、あらかじめ! ストレス、イコール圧力をかけてあるコンクリート」

「あらかじめ圧力をかけるとどうなるのだ?」

「荷重を受けたとき――つまり列車通過時にひび割れが発生しづらくなるの」

「なるほど。コンクリート枕木の弱点がそれで解消されるわけか」

とはいえ、素人考えでは――

「それだけ固くなってしまうと、クッション性が低下しそうだが」

「That's right! だからクッション性を確保するために、tie pad――ゴムの下敷きを敷くんだよ」

「なるほど!!」

硬い鎖とやわらかなクッションの共存を、ごく単純に併用で実現化したわけか。

「ただね? その分costも木枕木から跳ね上がっちゃうの。だから普及するより先に」

「大廃線が来てしまった、というわけか」

「そ」

ぷくっと、オリヴィの頬が膨れる。

「他にもLong railとか、フキューしたら乗り心地も安全性も改善できるレール、研究開発されてたのにねー」

「ふむ」

ロングレールは、詳しく説明されずとも理解できる気がする。

レール一本の長さを単純に長く――バカ長くする。
そうすれば遊間そのものの数を減らせるゆえに、リスクも減らせる。
その分製造コストと交換時のコストは跳ね上がろうが……

「でもまぁ、ガタンゴトンも列車の楽しみだからさー、オリヴィ的には?
ロングレールはどーかなーって気持ちもあるけど」

「ほう」

そう言われれば、尋ねたくなる。

「では、オリヴィにとって理想のレールというのは」

「伸びないレール」

「!」

まさに即答。
なるほどなぁと感心させられ――

「? どーしてソーテツ、くすくすしてるの?」

「くすくすしてるか? いや、日ノ本語で
『夢のレール』というのなら、どこまでも伸びゆくイメージなのに、
真逆の答えがきたな、とふっと思ってしまって」

「No,No,No!」

ちちち、とオリヴィが指を振る。

「オリヴィが話してるのは、Dream railのことじゃなく」

そうしてびしっと! 眼前に親指が付きたてられる。

「Next Generation Railのこと!」

;おしまい

///

いかがでしょうか?
オリヴィの出番はまもなくかも!? なWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク』0。

どなたにも無償でご確認いただける0~7話のネームはこちらとなります。

よろしければどうぞ、あわせご笑覧ください。

(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)

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