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作劇Howto「発想の広げ方」 &3分で読めるレイルロオドのお話「りいこの虫眼鏡」


こんばんわ。
毎日とても暑いですね。

わたくしは先日、とてもおしゃれなスタジオでお仕事をしてきて、いいものを拝見してまいりました。

皆様にも遠からず、素敵な何かをご覧いただけることとなるかと存じますので、ぜひ今しばらく、ご期待の上お待ちいただけましたら嬉しいです。

で。

先日、WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』の第15話「機関助士のタマゴたち」のネーム・字コンテを一挙公開させていただきました。

それにともない、まとめマガジンの方も更新させていただきましたので、

もしよろしければご笑覧いただけますと幸いです。

上記の記事&まとめはメンバーシップ特典となっておりますが、
0話~7話までのネームはどなたにでも無償でお読みいただけるものとなっておりますので、

未読の方には是非一度、チェックいただけましたらとても嬉しく存じます!

さて。

基本的にこのnoteは上記WEBTOON作品のネームを延々更新していく内容となっておりますのですが、
1話分をアップしたあとに一回は、#作劇Howto という形で、
お話づくりまわりに関しましての、わたくしなりのTIPSとかを書かせていただいております。

今回はご質問をいただくことができましたので、そちらお返事する形で、記事を構成していければと思います。

いただきましたご質問は、こちらです。

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進行豹先生はお話をイチから考える、といった際にどの要素から発想を広げていますか?(物語の舞台となる時代、キャラクター、ジャンルetc…)

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「発想の広げ方」についてのご質問なので、
まずはわたくしの発想の起点がどこにあるか――から書いていきたく思います。

わたくしの発想の起点。

それは「ご依頼」でございます。

わたくしのゲームシナリオにおいてのデビュー作『ものべの』は、ほぼフリーハンドで企画をたてさせていただいたのですが、
『まいてつ』のときには「鉄道もの」をベースに、以下の概要のオーダーをいただいていたように記憶しております。

1:「日常を、ほんの少しだけ拡張する世界観であること」

2:「聖地巡礼を楽しめる作品であること」

3:「妖怪、精霊などの要素を除外した作品とすること」

です。

具体的オーダーをいただく前にもわたくしは、

『鉄道が滅びかけている世界での鉄道を描いてみたい』という気持ちをもっておりました。

ここを <ベースの発想> だとすると。

いただいたオーダー群はまさに <発想を広げるための糸口> として機能することになっていきます。

具体的オーダーをいただくまえのわたくしのぼんやりとしたアイディアは

・99年以上車籍を有し続けている車両には、それぞれの付喪神が宿る

・その付喪神と人間とのコンビで、物語を――

といった感じのものでした。

しかし、オーダー「3」によって、付喪神案は破棄。

ともないお伝えいただいた「いま、艦これとか流行ってますよね」というアドバイスによって、

『レイルロオド』という発想が生まれましたわけです。

「『大廃線』により鉄道が滅びかけてしまって、ほそぼそと存続している世界」

「その世界の片隅で、なんとか鉄道を存続させようとがんばるレイルロオドたち」

――この時点でオーダー「1」は概ね満たせておりますのですが、
さらに「日常に寄せる=日常を”ほんの少しだけ”拡張する」べく、
大廃線を招いた要因を「新しい交通技術の誕生と急速な発展」と設定しました。

これはのちに、「現実が物語においついてくる」ような感が出てくることともなりましたので、
我ながら、実によい「ほんの少しだけ拡張」加減とできたのではないかと感じております。

で「2」。

これについては、取材の容易さを考え「秩父」を第一候補としていましたが、
東京圏のプレイヤーさんが多いことを考えると「近すぎるのでは?」というご意見をいただき、再考となりました。

そこで目線を変え
「聖地巡礼以外の要素も楽しめる」
「蒸気機関車だけでなく、関連施設も残っている」
「東京圏のプレイヤーさんたちが『旅』として聖地巡礼を楽しめる」
候補地を探し、候補地群の中から、上記3要素を一番レベル高く満たしているように思われた人吉をイメージモデル地域として選定させていただいた次第です。

このように「いただいたオーダー」=「発想を広げるための糸口」を丁寧に引き伸ばすことによって、
当初の発想は広がりを見せ「レイルロオド世界観」ともいうべきものの基礎が、固まっていった次第です。

わたくしは、このようにして発想を広げているわけです。
ので、「発想を広げる糸口」は、「自分ではない誰か」に考えてもらったほうが、より魅力的な世界観を構築しやすくなるのでは? と考えております。

その「誰か」は、お友達でも、ネット上の顔を知らない誰かでも構わず。

自分がどんなお話を考えているかを伏せて、ただ単に

『ゲームとかマンガとかアニメとかで、君に刺さる要素ってなに?』と聞くだけで得られるものではないかとも考えます。

まとめますと

<自分自身の書きたいもの>を「発想のタネ」とし。

<どこかの誰かに刺さる要素>を「発想拡大の糸口」とする。

――それが、わたくしの「発想の広げ方」なのではないかと、現時点では考えております。

ほんの少しでも、ヒントなり反面教師なりにしていただける部分ございましたら幸いです。

と、いうわけで本日の短いお話は「拡大」をテーマに書いてみたいと思います。

タイトルは「りいこの虫眼鏡」

登場するレイルロオドは、今回もりいこといよ。
ご存知無い方は、現在youtubeで無料公開されております
『アニメ レヱル・ロマネスク 第一期』

をご覧いただけますと、ますますお楽しみいただけるのではないかと存じます。

■りいこ■

頭部鉄路5号機関車専用レイルロオド。
詠国生まれポンコツレイルロオド。通称:虫愛づるレイルロオド。
常に虫眼鏡を持ち歩いている。

■いよ■

いよかん鉄道甲1形1号蒸気機関車専用レイルロオド。
伊予弁話者でおみかん大好きな人気者。
虫眼鏡というものを所有したことがない。

///

「ん……ん……届かない」

(ごとっ)

「あ! りいこ」

虫かなんかがおるんかね? 
狭い隙間に手を伸ばしちょるそんポッケから――

「なんかいま落としたぞね」

「あ……助かる。なくすとさすがに困るとこだった」

りいこが拾ってふーって息を吹きかけたんは――

「あ、いっつも持っとる虫眼鏡」

「ん」

息吹きかけて、柔らかそうな布でぬぐって、もういっかいポッケにしまい込んで。

「……虫眼鏡って、虫眼鏡ゆー名前やき、昆虫観察のときに使こーとるん?」

「結構昔はそーしてたかな」

「昔」

「うん。昔。それしか道具がなかったころには。
だって、虫眼鏡で細かいとこまで観察できるの、基本的には標本にした虫ってことになるし」

「あー」

言われてみればそれはそーよね。
ちょこちょこ動いて、ましてや飛んどる虫なんぞ、虫眼鏡で観察するの、とっても無理としか思えんぞね。

「どうしても昆虫観察にルーペ使いたいっていうときは、レンズたくさんのポケットルーペ使うし」

「おおお! かっこいいぞね!!!」

スチゃってりいこが取り出したのは、金属製のちっさなルーペ。
レンズが三枚ついとって――

「組み合わせで倍率変えられるから、便利。けど、こっちも今どきはほとんど使うことなくって」

ごそごそ、今度はカバンから――

「カメラぞね!」

「そ、デジタルカメラ。これなら一瞬で撮れるし、撮った画像も拡大できるし、撮った時間とか場所も自動で記録されるし、
めちゃくちゃ便利」

「はー、ハイテクぞなもし」

「ハイテクだよ。新種に関する情報なんて、ネットが無いとものすごく掴むの遅れちゃうしね」

「明智時代に作られたレイルロオドとは思えん発言! 立派ぞね!!!」

この学習意欲と能力が本業にむいてくれたらさぞや、頭部鉄路のひとたちも喜ばれよーに……って、ん? んんんん?

「どしたの? いよ。首なんかかしげて」

「いや、昆虫観察。カメラとその――ポケットルーペ? ってヤツを使こーとるんなら」

「うん」

「さっきポッケから落としてた、いっつももっとる黒縁の古臭い虫眼鏡って、いったい何に」

「あー、それはほら。りいこは明智時代に作られたレイルロオドで」

「うん」

「メイヤー・リーコック社はとっくのとうに消滅してて、現存してる姉妹機、世界中探しても数両だけで、日ノ本にはまったくないから」

「うん」

「目、交換も調整も難しいの。だから、ダイヤとかのちっちゃい文字はこうして――」

!!!!!?

「老眼鏡がわりぞね!!!?」

;おしまい

いかがでしょうか?

次回更新からは、第16話のネーム&字コンテ公開を再開してまいりますので、
そちらもどうぞ、ご期待のほどいただけますと幸いです!

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【メンバーシップ限定記事のご案内】

『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』

にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。

『レヱル・ロマネスクゼロ』の字コンテ掲載時には、その字コンテがネーム化されたもの、および推敲過程でボツになった未公開ネーム画像などがあるときには、そうしたものも公開していきたく思っております。

どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。

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