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稀咲お誕生日記念SS「稀咲の看病」&「レヱル・ロマネスク0」第37話シーン2ネーム&字コンテ

わたくしごと極まってしまい恐縮なのですが、奥さんが恐らく胃腸炎にかかってしまい、いま39度の熱を出して寝込んでいます。

そうするとあかちゃん関係のことをわたくしが担当することとなり。
いま、離乳食を食べさせ終えて、ひざの上にのせながらこの文章をタイピングしている次第です。

幸いにして大人しくしてくれているのですが、いつ「ふんぎゃー!」となるかわからないので、本日は大急ぎでもろもろ更新いたします。

さて、本日は7/1ということで

『レヱル・ロマネスクの聖地、人吉を盛り上げたい!イベント開催応援プロジェクト!』

のご支援受付終了日となっております。

みなさまのご支援のおかげさまで達成率1000%、
ご支援総額20,000,000円を突破させていただくことができ、まこと嬉しく感慨深く思っております。

ご支援、まことにありがとうございます!

もしお目当てのプランある方は、どうぞご支援忘れのないようにだけ、お気をつけいただけますと幸いです。
 

で、WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネーム&字コンテの方も
先日公開の第37話「リスクマネジメント」1シーンに続きまして

本日はシーン2を公開させていただきます。

宝生元忠の指摘した「リスク」
それが一体なんなのか――双鉄たちは気付けるのでございましょうか?

で、本日7/1は元忠パパの愛娘。宝生稀咲さんのお誕生日でもございます。



というわけで、本日の短いお話は稀咲のお誕生日祝SSとして書きたく思います。

タイトルは「稀咲の看病」

どなたにも無償でお読みいただけるお話となりますので、よろしければご笑覧いただけますと幸いです。

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『稀咲の看病』

「鬼の霍乱、というやつだよね」

「……まぁ、めったにあることではないな」

胃腸炎。
はじめてかかった病気だが、まさかこれほど――40度超の熱が出るものとは思わなかった。

「母さんが旅行のタイミングでだなんて、つくづくツキにも見放されてるね」

「……ここぞとばかりに言うではないか」

高熱による倦怠感。
頻繁に襲い来る吐き気と、終わることがないのではないかと思えるほどに激しい下痢。

身体的には極めて苦しくあるのだが、ツキに見放されたとは思わない。

「お前に伝染る病気ではない。不幸中の幸いには恵まれているさ」

「……そうなのかもね」

稀咲が笑う。
ほっとしたように、照れくさそうに。

「頭取の病気も、母さんの旅行も珍しいけど、ボクの看病の方がその数倍も珍しい」

それはまさしくそのとおりだ。
稀咲の父を二十年近く務めているが、今回が初めての経験となる。

「それもカウントしていいよ? 不幸中の幸いっていうヤツに」

「当然、そうさせてもらっているさ」

「そうなんだ。だったらちょっとは、看病らしいことしなくちゃね」

いいざま、稀咲はスマホを取り出しほんの数回タッチする――
ああ、短縮ダイヤルの登録先に電話をしたのか

「ああ、もしもし。ああ、違う、支店長室じゃなくて、自宅に届けてほしいんだ。
マルゲリータと」

「マルゲリータ!?」

稀咲が眉をひそめてスマホを耳から離す。

「好物でしょう?」

「それはそうだが――胃腸炎にピザはおもすぎる」

「そういうもの? じゃ、キャンセルするよ」

……乳児の頃から、夫婦ふたりで力をあわせ、健康に健康にと育ててきた。
おかげで病気らしい病気もせずに育ってくれたが――いや、うむ、この年で勉強させてもらった。
それはそれで、思わぬ弊害が生じるものだと。

「ピザ以外だと、何が食べたいとかある?」

「粥だな。粥でなければ雑炊。具はいらん。シンプルな卵粥か卵雑炊でいい」

「了解。コンビニで買えるよね?」

「まず間違いなく。万一なければスーパーかドラッグストアに売っているはずだ」

「OK。それじゃあ買ってくる」

…………。
ううむ、育て方を間違ったなどとほんの少しも思わぬが――

「粥だの雑炊だの、学園の家庭科で習わぬものか? いや、私立の進学校ゆえ、その辺のカリキュラムを削ったのだろうか……」

「ただいま。買ってきた。いまレンジで温めるから」

「ああ、すまんな」

「すまなくないよ? 看病ってこういうものだと思うし」

粥のパッケージには説明書きがあり、説明書きがあるのであれば稀咲はそれをきっちり守る。

「できた。へぇ、美味しそうだね。いい匂いがする」

……ラーメン丼に入っているのが御愛嬌だが、ちゃんと木さじも添えられている。

「自分で食べられる? きついようならあーんしようか?」

「多少きついな、あーんの方で頼めるか?」

「了解」

……頭取業を務め続けてきてよかった。
内心の動揺を一切出さず、思わぬオファーに即応できた。

「はい、あーーーん」

「うむ――(はむっ)――ああ……うまいな」

「最近のコンビニは大したものだよね」

「温め方も適切なのだろう」

「それはもちろん、指示のとおりに作ったからね」

『あーん』のおかげで、より腹に染み通っている気がするのだが、
それは――さすがに口には出せん。
気持ち悪がられてこの時間が終わりでもしたらもったいないにも――

「っ!?」

「いきなりどうしたのさ」

「いや、今日は――」

壁掛け時計で確認する。
熱に浮かされ時間間隔が狂っていたが――

「すまんな、よりにもよってこんな日に」

「いいよ、覚えててくれてるんなら」

7/1。
稀咲の誕生日。
忘れることなどありえない。
出生時体重2754グラム。午後0時01分生誕――
全てきっちり記憶している。

「……プレゼントも用意できていない。申し訳ないが回復するまで待っていてくれ」

「そう? それならそれで。無理の無いように取り扱ってよ」

「すまんな。そうさせてもらおう」

「じゃ、食事の続き。はい、あーん」

「うむ――」

……育休のあの1年間を思い出す。
稀咲は食への興味が薄く、離乳食後期になっても自分から食べようとはしなかった。
全ての食事を、ひとさじひとさじ口に運んで――大きな口を開けてくれれば、それだけで安心して嬉しかったものだ。

「……稀咲の誕生日だというのに、私の方がプレゼントをもらっているようなものだな」

「そうでもないよ?」

稀咲が笑う。
乳児のときを思い出させる、気取りも衒いも見せぬ笑顔で。

「ボクも多分、プレゼントだって感じてる。頭取じゃなく父さんと過ごす、くすぐったいようなこの時間をね」

;おしまい

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いかがでしょうか?

稀咲と元忠。

仕事上の部下と上司でもある親子関係というのはなかなかに複雑で。
けどそれだけに密度も濃いのだろうなぁ、と思います。

そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。

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それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。

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