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3分で読めるレイルロオドのお話「はこは鎮魂歌を歌わない」&WEBTOON作品 レヱル・ロマネスク0 第23話「毛利の国の電車姫」シーン2 ネーム&字コンテ

先日よりDLsite様で発売されております
WEBTOON版 レヱル・ロマネスク』

もうお読みいただけましたでしょうか?

こちら、2週間に1本ペースで掲載されていくということなので、
わたくしの方も追いつかれないよう、かつより面白く展開していけますようにとますますの精進努力せねばなりません。

喫緊でやりたいことは
「どこかのタイミングで日ノ本視察中の西瓜を双鉄ハチロクと絡める」ということです。

これが上手にハマれば物語、まらガラリと変わってくる部分でるかと思いますので、どうぞご期待いただけますと幸いです。

うまい展開で絡められなれそうもない――という場合には、やはり西瓜の出番、仲国に双鉄たちが行ってから――ということになってしまうかもしれませんけれども。

ということで、先日公開した
第23話『毛利の国の電車姫』シーン1

につづきまして、本日はシーン2のネーム&字コンテを公開します

電車姫様と御一夜鉄道メンバーズとの初会談。
果たしてその顛末は!? というところで、どうぞ続きにもご期待いただけましたらと願います。

本日の短いお話はネームからの流れで、「TV電話」というところで書いてみたいと思います。
登場するレイルロオドは、リクエストいただいた中からで

「はこ」。

相方はすずしろとさせていただきましょう。

タイトルは「はこは鎮魂曲を歌わない」です。

どなたにも無料でお読みいただけるお話となりますので、ぜひご確認ください。

■はこ■

旧帝鉄C56 12

5専用レイルロオド。
現所属は木曾鉄道。レイルロオドとしてよりフォーク/ブルースシンガーとして有名。
レイルロオド界を代表する歌姫であり、人間・レイルロオド問わずの根強い人気を誇る。

■すずしろ■


万岡鉄道C12 67専用レイルロオド。
名のり口上の出だしが「ご存知すずしろ」な位に有名な女優レイルロオド。
幅広い仕事をこなし、対談なども得意としている。

■「はこは鎮魂歌を歌わない」■

「なるほど、それがはこさんのデビューのきっかけだったんですね」

”孤高の歌姫”――C56 125専用レイルロオドの、はこさん。

インタビュー嫌い……っていうか、歌うこと以外で、メディアに出るのを極端に嫌うって聞いてたけど――
思ったよりもすんなりTV電話でのインタビュ、受けてくれてよかった!

し、お話も――

「そう。故障しがちで、廃棄・解体を待つだけだったはこに、
マスターが一本のアコースティックギターを渡してくれたことが、きっかけ」

「そのギターで、すぐに作曲を?」

「そんな才能、はこには無かった。『レチが来る前に』『廃線めぐり』『あの素晴らしいマイテをもう一度』『なごり蒸機』……
マスターが好きだった歌たちを、なんとなくコピーすることから初めて……
2年くらいかかったかな? 弾き語りできるようになって、自分でも作詞・作曲して歌い始めるようになったまで」

「そこからプロへの道のりは?」

「道のりも何も……はこは運ばれていっただけ」

「運ばれて?」

「一人で歌って、マスターが聞いてくれるようになって、機関区のみんなが聞いてくれるようになって、局のみんなが聞いてくれるようになって。
イベントに呼ばれるようになって、レコード会社の人がスカウトに来て……それでデビューになったけど、はこはただ、聞いてくれる人のために歌ってただけ」

「なるほど、たしかに『運ばれて』って感じしますね。
運命にとかじゃなく、はこさんご自身の歌の力に」

――お話、いい。
話術がうまいってわけじゃないけど、引き込まれる。
はこさん、歌だけじゃなく、声にもなんか、力感じる。

「はこの歌に、力なんてないと思う」

「そんな! だって、力がなければ、こんなたくさんのレイルロオドが――だけじゃなく、人間のみなさんにだって、はこさんのファン、たくさんいらっしゃるじゃないですか」

「それは……逆にきっと、はこの歌に力が無いから」

「え?」

「はこは、歌ってるだけだから。何をこめるでもなく、なにを願うでも訴えるでもなく、ただ、メロディーに言葉を乗せて、そのまま歌ってるだけだから」

「歌詞とかメロディーが、力……メッセージ性をその時点でもってるんじゃないですか?」

「はこはなんにも乗せてない」

「なんにも……」

「はこの歌詞に意味なんてない。ただ、メロディーに乗ったとき一番キレイそうってはこが感じてる言葉を、つながるように選んでるだけ」

「あー」

♪ ゴンゴン ゴンゴン 犬釘打つ
  ゴンゴン ゴンゴン 犬釘打つ
  道床 下から 笑ってる

――はこさんの代表曲。『保線』。

どうして道床が下から笑うのか、すずしろ、さっぱり意味がわかってなかったんですけど――

「メロディーに乗ったときに、綺麗に響く言葉」

「そう。それがはこの歌詞。はこの歌。だからもし、それが誰かに響くなら、それははこが響かせてるんじゃ絶対になくて」

「聞いた方――受け取った方が勝手に、歌詞に意味を見出して、それで心を動かしている?」

「そういう感じなんじゃないかって、はこは想像してる。
はこは、空っぽの箱だから、誰かを満たす何かなんて、とどけられっこないんだから」

「空っぽの、箱」

……すずしろも事前に調べた、はこさんの過去。
はこさんにギターをくれたマスターさんの早世。
そこからマスターなしになって――レイルロオドだから当然というご時世だったのもあるけれど、それでも酷い搾取に搾取を重ねられ続けて……

「……大廃線は、はこさんの救いにはならなかったんですか?」

「あれは――」

大廃線で旧帝鉄がなくなって、それで――はこさんは自由になった。
『レイルロオドだろうと人間だろうと、我々はアーティストに対して正当な対価を払うのみだ』って宣言してくれたレコード会社さんとの個人契約。
ようやく入るようになってきた印税収入と、はこさんの過去をしったファンのみなさんの募金によって命脈を保たれることになった、はこさんの木曾鉄道。

「からっぽの箱を包んでくれる、もっと大きな箱ができたような感じだった」

「はい」

「外側にぎゅうぎゅうわいわい、幸せなものたちがつめこまれてきて。それははこの箱の外側をあたためてくれて」

「だけど――中身は空っぽのまま?」

「そう。はこの箱には何も入れない。はこも、箱の開け方がわからないし」

「だから――」

言葉が、勝手に出てきてしまう。
脈絡ないな、と自分でも感じているのに、それでも。

「はこさんは、鎮魂曲を歌わない?」

「ああ」

ふすっと、はこさんの表情がわずかに動く。
それがささやかな笑みなんだって――表情じゃなく、声でわかる。

「その質問、予定質問リストにあった。だから、はこはインタビューを受けることにした」

「はい」

「はこも、その質問への答えが知りたかった。だから、すずしろさんが感じたことが、そのまま答え」

「ああ――」

空っぽの箱。
中になんにも入ってなくて、何かをいれることもできない箱。

「だから、はこさんは……はこさんの歌は、こんなにもすずしろのこころを揺さぶる」

何のメッセージもこもってないから。
ただ純粋な、とても綺麗な響きだから。
そこにすずしろは――だけれど意味を、そして救いを、きっと求めてしまうから。

「それが答えなら、インタビューはもういい?」

「はい、ありがとうございました」

「こちらこそ」

はこさんは鎮魂曲を歌わない。
はこさんは鎮魂曲を歌えない。

だからこそ――
あの時代を生き抜いた全てのレイルロオドは、はこさんの歌に、救われている。

;おしまい

///

いかがでしょうか?

立ち位置が独特すぎて、あるいははこ自身が主役すぎて、
なかなか双鉄たちの物語とは辛めづらい、しかしわたくしお気に入りのレイルロオドであるはこを
ようやく書けまして、本日は大満足でございます。

はこの出番はおそらくないWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』


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それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。

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