紅の過去エピソード

旧南颯鉄道が社運をかけて自社発注した、旧帝鉄キハ07形改良気動車、キハ101。
そのトップナンバーレイルロオドとして、紅は、5人の妹たちとほぼ同時期にロールアウトし、すぐに車両とともに本線運用に投入されました。

当時の南薩鉄道は、帝鉄との相互乗り入れ駅である鹿兒島から移住院・嘉瀬田を経て颯馬半島の最南端、枕咲まで、総延長49.6kmにおよぶ路線を有する、南九州の雄ともいうべき実力をもった私鉄でした。

老朽化しはじめていた蒸気機関車たちとの順次の交代を目論んで6姉妹が一気に投入された紅たちのキハ100形は期待通りの大活躍を見せ、南颯鉄道の経営状況は劇的に改善されました。

その結果、既存路線と西鹿児島駅までをほぼ直線ルートで結ぶ新線・高速化構想も検討されはじめ、紅たち六姉妹はそこで新たなる活躍を見せるはずでした。

しかし、大廃線の波は容赦なく南薩鉄道をも襲いました。

経営合理化、貨物営業廃止など、できるかぎりの手をつくしその大波に抗いつづけた南颯鉄道でしたが、帝鉄解体にともない、鹿兒島駅までの鉄路が途絶えてしまうと、ついに経営が行き詰まります。
その線路用地を欲しがった多隅半島のバス会社、参州自動車に買収されると、レールはすぐに剥がされ、道路化されて、エアクラバスが人々を運ぶようになりました。

紅たち姉妹も、もはや完全なお払い箱です。

解体を待つばかりとなることを嫌った紅は、せめて末の妹である六女・真朱(しんしゅ)だけは助けようと、署名運動を開始しました。

署名はすぐに圧倒的な旧沿線住民たちの支持を呼び起こし、紅の影響力と人気とを参州自動車の社長に知らしめることとなりました。

社長はすぐに考えます。
「紅ならば広告塔としての使いみちがありそうだ」と。

そこで社長は真朱たち5人の妹にもちかけました。
「おまえたちが紅に広告塔となるようにと説得することができたならば、紅だけは助けよう」
「そうでなければ、6両6レイルロオド、全てを即時解体する」と。

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