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作劇Howto:三幕構成と起承転結の併用法

みなさまこんばんわ。
レヱル・ロマネスクシリーズの原案、シリーズ構成を勤めます、進行豹です。

WEBTOON『レヱル・ロマネスク0』
先日の更新で第四話ネームがまとまりましたので

今回は #作劇Howto

の新規記事を執筆していきたく存じます。

今回のタイトルは
「三幕構成と起承転結の使い方」です。

■三幕構成とは何?

三幕構成とは、お話の骨組み(プロット)を組み立てるための方法論の一つです。

もともとはハリウッドで用いられるものとのことで、
わたくしは
「ハリウッド・リライティング・バイブル」(リンダ・シガー / 愛育社)
で勉強いたしました。

上記タイトルは絶版、プレミア化してしまっておりますが、

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」 (シド・フィールド/フィルムアート社)等の三幕構成の解説本は、
電子書籍化もされてるようですので

もし本格的に勉強したければ、そちらおすすめ申し上げます。

三幕構成の「三幕」とは

<第一幕:セットアップ (状況設定)>

<第二幕:コンフランテーション(対立)>

<第三幕:レゾリューション (解決)>

のことです。

第一幕でキャラクターや場面を設定し。

第二幕で事件が起きるなど、キャラクターが解決しなければならない問題、対立、葛藤が発生し

第三幕でそれが解消される

というのが、三幕構成における、超大まかな基本ストーリーラインとなります。

これは、皆様ご存知起承転結と、だいぶんよく似ているものだとご理解いただけるものかとも存じます。

■起承転結とは何?

上記三幕構成の
第一幕:状況設定が「起」となります。
第二幕:対立が「承」となります。
第三幕:解決が「結」です。

では「転」とはなにか?

これは「発生した対立が解決にいたるまでにおきる、もっとも劇的な出来事=展開・転回」だと定義できるかと存じます。

つまり、起承転結は、ぱっと見では「三幕構成よりも細かな作劇メソッド」に見えてしまいます。

が、実際に長編を書き始めてみると、起承転結はあまりにもおおざっぱすぎ。
三幕構成はかなり細かなところまで手が届く作劇メッソドだと感じる人が多いはずです。

なんとなれば。

「三幕構成」は、それぞれの「幕」の内側を細分化してある作劇メソッドだからなのです。

以下、その中身について簡略化してご説明申し上げます。

■<第一幕は、セットアップと第1ターニングポイントで構成される>

三幕構成の第一幕の中

には、セットアップと第1ターニングポイントが置かれます。

『セットアップ』とは「物語すべての基本要素の提示」と考えて差し支えないかと存じます。

つまり

「キャラクター」
「キャラクターをとりまく環境(世界観)」
「主人公となるキャラクターが果たすべき目的」
「目的達成のために待ち構えている障害」

などなど、あなたの物語の基本となる要素を、ここで過不足なく展開していければ理想的です。

ただ、それを展開するだけで物語は動き出しません。

物語が大きく動き出すためのきっかけに、主人公を後押ししてもらう必要があります。

この「きっかけ」が『第1ターニングポイント』となります。

恋愛もので考えましょう。

「学園の生徒である主人公が、一人の少女と出会う」 (キャラクターと世界観)
「主人公は恋人がほしいと考えているが、具体的に誰と付き合いたいというのは無い」 (果たすべき目的と障害)

というストーリーラインを展開していく場合、例えば

「そんな主人公の悩みを知った少女は、『わたしの妹が彼氏欲しがってるの』と妹を紹介してくれる」

と、大きく物語を前進させてくれるイベントが「第1ターニングポイント」であるわけです。

■<第二幕は、展開、対立、およびミッドポイントと第2ターニングポイントで構成される>

『第一ターニングポイント』で主人公が問題解決/目的達成のために動き始めると、物語は第二幕に突入します。
第二幕で描くべきは展開と「対立」。
それは直接的な敵や障害との対立であるのかもしれませんし、竦んでしまう自分自身との対立=葛藤であるのかもしれません。

外的、内的いずれにしてもいくつもの対立が発生し、主人公自身の成長や周囲のサポートなどでそれを乗り越え、乗り越えると新しい対立が発生し――というのが、第二幕で基本的に描かれる内容です。

そして物語中最大の問題へと向かい合っていくポイント=第2ターニングポイントを経て、第三幕を迎えるわけですが――

この最中。第1ターニングポイントと第2ターニングポイントの間に『ミッドポイント』という、三幕構成の要点だとわたくしは捉えているポイントが織り込まれます。

ミッドポイントは「お話全体の中間点」であり「主人公の転換点」であります。

これについても、先程例にあげた恋愛ものの上で考えていきましょう。

「主人公と妹ちゃんは、お試しデートをしてみる」(展開)

「妹ちゃんはお試しデートで主人公のことをめちゃくちゃ気に入る。けど、主人公はそこまででもない」(葛藤)

「妹ちゃんは主人公に交際を申し込む。違和感を覚えるものの、彼女欲しさに負けて主人公は交際開始を決意する」(ミッドポイント)

「つきあえば付き合うほどに妹ちゃんはメロメロになってくれるものの、主人公の違和感も大きくなっていく」(葛藤)

「主人公、自分が本当に好きなのは妹ちゃんの姉、自分を応援してくれている少女なのだと気づく」 (第2ターニングポイント)

この例の場合、ミッドポイントは
「主人公が目標を達成したようにみえる(けれどもそれは偽りの目標達成である)」という形をとっています。

この”偽りの目標達成でしかなかった”ということに主人公が気づく瞬間が、第2ターニングポイントとなります。

つまり、ミッドポイントとは

「第一ターニングポイントと第二ターニングポイントを中継すると同時に、お話全体の折り返し点としても機能しているポイント」

のこととなるわけです。

■<第三幕はクライマックスとリゾリューションで構成される>

第2ターニングポイントを超えれば、あとはお話は解決へと向かうだけです。

ハッピーエンドを迎えるにせよ、バッドエンドを迎えるにせよ、ここまできたら大切なのは

「クライマックスの盛り上がりと、レゾリューション(最終解決・エンディング)までのスピード感」あるのみです。

上記恋愛ものでいうなら、

「妹ちゃんに自分の気持ちを告げ、交際に終止符をうち、姉=真のヒロインに告白する」あたりがクライマックスになりそうです。

レゾリューションはこの場合

「想いが受け入れられ、妹ちゃんも祝福」というハッピーエンド

もしくは

「想いが受け入れられないで、妹ちゃんとよりも戻さず、主人公は、『彼女が欲しい』という目標が自分には不適なものだったと理解する」バッドエンド。

どちらかになるかと思います。

なぜなら

「想いが受けいれなかったので、妹ちゃんとよりを戻すことになる」とかだと
「妹ちゃんとよりを戻すまでのあれやこれや」を描く必要が出てきて
「物語が続いてしまう」からです。

その場合、クライマックスはクライマックスではなく、「妹ちゃんとよりを戻して本当に幸せになる」という目標のための、ミッドポイントあたりとして機能することになるかと思われます。

これを逆からいえば「三幕構成はいくらでも入れ子構造(マトリョーシカ構造)にすることができる」ということにもなります。

三幕構成の「第一幕」の内部を更に三幕構成でつくっていく――
というか現実的には「三幕構成で作ったお話を、もっと大きな三幕構成の第一幕とする」的なことが、すなわち長編執筆ということになるのかなとも存じます。

■三幕構成内における、起承転結の使い方

ここまで来ますと「長編を構成するにはおおざっぱすぎる」感がある、起承転結が活躍する機会を得ます。

三幕構成の中に含まれるエピソード群。

そのひとつひとつのエピソードを「起承転結」を用いて、きちんとしたメリハリを持つ小ストーリーとして完成させるのです。

これができれば「状況説明のためだけに挟まれた退屈極まるシーン」みたいなのを消滅させることができます。

「その説明を面白く見せるための起承転結」を考える意識は、必ずや長編を書いていくうえでの大きな助けとなることでしょう。

■まとめ

・三幕構成の詳細については、三幕構成の解説本を読んでください

・作劇メソッドは、どのようなものであれ、入れ子構造にすることができる

・起承転結は大きな構成を構築するには不向きだが、小さなエピソードを構築するには非常に有用

・ので、三幕構成内の各エピソードを起承転結をもって構成していけば、よりメリハリに富んだ物語を書くことが可能

――と、わたくしは考えております。
少しでもなにか、あなたの作劇のお役にたったり反面教師になったりする部分ございましたら幸いです。

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ネームとあわせて、どうぞご笑覧いただけますと幸いです。

今回は、作例であげた「恋愛もの」の少女マンガを読んでしまった少女についてのショートストーリーを、以下に書いていきたく思います。

『少女マンガの起承転結』

(あらすじ)
姉に妹が彼氏候補を紹介する――というマンガを読んでしまった日々姫、
当然大いに憤慨し。
けれどもハチロクの素朴な疑問のひとことにより、深く考え込むのです。

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