スパイの子供に生まれて
現在カナダで 市民権をめぐる法廷闘争が起きています。
現在23歳のアレックス・ヴァヴィロフ氏
彼が求めるのは、カナダでの永住権です。
アレックス・ヴァヴィロフ氏とその兄ティム・ヴァヴィロフ氏はともにカナダのトロント生まれです。
カナダで生まれているので自動的にカナダの市民権を与えられるのですが、この2名には他のカナダ人とは違う部分がありました。
【両親がロシアのスパイだった】
アレックスとティムの両親が、北米で暗躍したロシア人スパイグループのメンバーだったのです。
彼らの両親は、アメリカで密かにスパイとして活動していました。
このスパイ夫婦は、アメリカのテレビドラマ「The Americans」のモデルにもなっています。
ターロウもNetflixで「The Americans」をシーズン1の1話だけ見ました。
ドラマだと思いながら見ているので他のスパイが活躍する作品と変わらなく見れますけれど、これが事実に基づいた作品と知ったときは驚きました。
ほんとにスパイが暗躍してるんですね。
アレックスとティムの両親がモデルのドラマ、The Americans.
【両親これまでの歩み】
アレックスとティムの両親は、1980年代にカナダのトロントに到着、
それぞれドナルド・ヒースフィールドとトレイシー・アン・フォーリーを名乗りました。
1990年には長男ティム氏が生まれ、1994年にはアレックス氏が生まれた。
その後一家は1995年にパリに移住。
さらに1999年には、アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジに移り住んだそう。
父のドナルド・ヒースフィールドはハーバード大学ケネディ政治学大学院を出て、ボストンのコンサルタント会社で管理職に就きました。
母親のトレイシー・フォーリーは、長く子育てに専念した後、不動産会社で働きました。
幼いティムとアレックス、母親と。
2010年6月27日は、ティムの誕生日でした。
両親はティムと弟のアレックスを連れて、米マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅近くにあるインド料理店に出かけたのです。
兄弟は2人ともカナダ生まれですが、この10年は米国で暮らしていた。
インド料理を楽しんで家に帰ると、4人はシャンパンのボトルを開け、ティムのために乾杯した。
前の晩はシンガポールでの交換留学プログラムから帰国したばかりの弟アレックスのために家族パーティーをしたばかりでした。
家族はいつもの団欒を囲んでいた。
シャンパンで乾杯したあと、ティムは友人たちにメールするために2階に上がったそうです。
そのとき、玄関のドアをノックする音が聞こえた。
母親のトレイシーは、ティムが今夜約束をしている友人たちが訪れたと思い、
「あなたの友達が来たみたいよ!早いわね!」
そういいながら、ドアを開けた。
そして、次の瞬間、兄弟、両親のこれまで築いた世界が崩れた。
母親がドアを開けたとたん、
武装した黒づくめの男たちが、「FBIだ!」と叫びながら家のなかになだれ込んできたそうです。
さらに裏口からもFBI捜査官が押し寄せてきた。
ティムとアレックスが呆然と見守るなか、両親は手錠をかけられ、
別々の黒い車で連行されていったそうだ。
そしてFBI捜査官は兄弟に告げた。
「いまから24時間の家宅捜索を開始するから、用意されたホテルへ移るように」
さらに捜査官の一人が、両親は「外国政府の非合法諜報員」、つまりスパイの容疑で逮捕されたのだと彼らに告げたのだ。
その数日後、「ゴースト・ストーリー作戦」と名付けられたFBIの一斉検挙で、
米国全土に潜伏していた10人のロシア人スパイが捕まったと、世界中でトップニュースが駆け巡った。
彼らの両親は、米国側に寝返ったあるロシア人スパイの裏切りによってFBIに目をつけられていたそうだ。
同時期に捕まった両親含む10人の諜報員。
逮捕された10人のロシア人スパイのうち、メディアはこぞって、ボンドガールばりのルックスの若きアンナ・チャップマンについて書き立てた。
ティムやアレックスの両親とともに捕まった同じロシアのスパイ、アンナチャップマン
彼らの両親は、本当にロシアのスパイだった。
そして、ティムとアレックスも、実はロシア人だった。
兄弟はこのときはじめて、自分たちがカナダ人ではなく本当はロシア人だったと知ったそうです。
さらに驚いたことに、「ママ、パパ」と呼んでいた2人は、確かに実の両親ですが、
両親の名前はドナルド・ヒースフィールドとトレイシー・フォーリーではなかったのです。
両親は実在したカナダ人でかなり前に亡くなった方の名前を使っていました。
数奇な運命に翻弄されるティム(左)、とアレックス(右)
両親の本名はアンドレイ・ベズルコフとエレーナ・ヴァヴィロフ。
2人とも旧ソ連で生まれ、KGBの訓練を受けた後、ソビエトの極秘潜入計画の一環で海外に派遣された。
北米で一般人としての“キャリア”を少しずつ積んだ後、
夫婦はKGBの後継機関である、現ロシアの外国諜報機関SVR(ロシア対外情報庁)の諜報員として活動していました。
両親が逮捕された後、兄弟は命じられたホテルで眠れない夜を過ごしたそうです。
ホテルの外にはマスコミが24時間張り付き、
ホテルの部屋の窓際に兄弟のどちらかが立っただけで無数のフラッシュが光る異様な体験をしたそう。
それでも兄ティムはこっそりとホテルを抜け出し、近くの図書館のインターネットで両親のために弁護士を探したそう。
しかし、FBIによって家族の銀行口座も凍結されており、兄弟はポケットにわずかなお金しか持っていなかった。
ようやく自宅に帰ると、FBIによって電子機器すべて、メモに至るまですべて押収されていたそう。
兄弟のプレイステーションまで押収されていたそう。
その後、FBI捜査官によって兄弟はボストンの裁判所に連れていかれたそうです。
そこで両親に罪状が告げられることになっていた。
そのとき2人は拘置中の母親と、短い時間だけれど面会を許されたそう。
けれど兄弟はその時、母親に罪状について一切質問しなかったそうだ。
弟アレックスが語る 。
「もし自分が法廷で証言する場合、きっと知らないことが多いほどよい結果につながるだろうと思ったんです。
両親が終身刑を受けるかもしれないという状況で、自分が証言台に立つのだとしたら、心の底から両親の無実を確信していなければならないと思ったのです」
ロシアのスパイについては今年も大きなニュースが世界を駆け巡りました。
【英国でのロシア二重スパイ暗殺未遂事件】
英南部ソールズベリーで今年3月4日起きたロシアの元スパイ、(66)とその娘ユリアさん(33)が意識不明の状態で見つかった事件。
セルゲイ・スクリパリ氏は(MI6)英秘密情報部にも協力したとされており、英国へロシアの情報を売ったスパイをロシアが暗殺しようとしたとして大騒ぎになった。
テリーザ・メイ英首相は今年3月12日、事件で使われた化学物質はノビチョク剤という名前で知られるロシア製の神経剤の一種だと発表。
(「ノビチョク」は1970~80年代に旧ソ連が対NATO用に開発した化学兵器)
さらに今年3月14日、メイ英首相はロシアの外交官23人をイギリスから追放した。
そして英国と同調する欧州諸国を含む少なくとも26カ国が、130人以上のロシア人外交官を追放。
ロシア政府は事件に対する一切の関与を否定。
ロシアは「この挑発的行為」に必ず報復すると発表し、欧州とロシアの間で緊迫した状況が続いている。
そしてロシアは、23人のイギリス人外交官をモスクワから追放した。
英国では2006年にも、プーチン政権を批判していたロシアのスパイが放射性物質のポロニウムで暗殺された。
2013年には英国に亡命していたロシアの大物実業家が自宅で死亡し、殺害の可能性も指摘されてきた。
つい最近、5月31日にもロシア人ジャーナリスト、バブチェンコ氏が暗殺されたとフェイクニュースを流し、一命を取り留めた事件もありました。
バブチェンコ氏は自宅ドアを開けたとたん射殺されたと報道を意図的に流したが、実は生きていますと本人が記者会見を行った。
自身の死亡を偽るほど、追い詰められる。
ロシア政府を批判する者に安全な場所はないというロシアからの強烈なメッセージを感じざるを得ません。
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