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「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」の感想やら、だらだら書いた

各位

ちらかわです。

最近仕事で異動が決まって以来、気持ちがブルーなので気晴らしに、この間見た「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」(通称ラスエボ)の感想でもしたためようと思います。本作も「再出発」をテーマにしていることから、ちょうどいいですしね。(こじつけ)

実は本作を見るにあたっては、自分の中でかなりハードルを下げて視聴に挑んでいました。というのも、デジモンのリバイバルに関しては、最近tri.という第一章~第六章にわたる壮大なキネマシリーズが展開されてました。凡そ15年ぶりに始動したデジモンアドベンチャーシリーズの正統続編に当時のファンとしてはドキをムネムネさせていたわけですが、個人的にはこれが全くの空振り。全編にわたって内容が薄い上に、更にそれを6回に引き延ばすというかなりヤバメな出来でした(繰り返しですが、個人的にはです)。本作の公開が決定したのは、tri.シリーズが終了したあたりだったのですが、上記のこともあり、「東映アニメーションにはデジモンでいい作品を本気で作ろうという制作陣はもう残ってないのだな」「デジモンコンテンツを懐古ファン向けの金儲けの道具としてしか見てないのだな」と落胆した矢先だったので、本作に関しては死に水を取るつもりで映画館に足を運んだわけです。が、なかなかどうして、これが割とよい出来でした。最初からこれをやれ。

本作は初代アニメシリーズから約10年後の世界を描いており当時子供だった主人公たちはほとんどが20才を超えています。物語の詳細については、ネタバレ防止のため割愛します。印象に残っているシーンはたくさんありますが、特に太一たちが阿佐ヶ谷のホルモン屋でビールを飲んでるシーンなんかを見ると当時のファンとしては感慨深い気持ちになりましたね。

また、デジモンシリーズは東京都内の景色を詳細に描いた背景を観ることができるのもひとつの醍醐味だと思っているのですが、本作においても阿佐ヶ谷、中野などが舞台として登場しているため、その醍醐味は健在です。大人になって東京に生活の中心を置いている今見ると、一層の親近感を覚えるというものです。聖地巡礼が捗りますね。個人的にちょっと嬉しかったのは、太一が私の母校をモデルにしたと思われる大学の学生になっていた点ですね。劇中では大学のカフェテリアやら神田川沿いの並木桜やらが登場して、
この大学に入ってよかったとほぼ初めて思った瞬間でした。もしタイムリープできるのであれば、「君は将来太一と同じ学歴になるよ」と当時の小学生ぼくに教えてあげたいくらいです。

隙あらば自分語り、ということで「デジモンと私」みたいな話をすると、わたくしは小学校の3年生くらいのときにかなりデジモンに入れ込んでました。携帯ゲームもやりましたし、ワンダースワンのゲームもやりまくりました。特に好きだったのはやはりアニメ「デジモンアドベンチャーシリーズ」です。大人になったら主人公たちが住むお台場or光が丘に住もうとまで思っていました(今も1ミリ程思ってます)。一時期、子供ながらWEBの世界にハマったことがあるのですが、それもデジアドに出てくるPCオタク光子郎くんの影響です。また、わたくしは無類のかわいいもの好きなのですが、そのきっかけもデジモンだったと思います。成長期くらいまでのデジモンって全部かわいいですよね。

ちなみに、当時からよく友達から「デジモンはポケモンのパクリ」といったパターンの批判的意見を聞いたものですが、言うまでもなく両者は全くの別物です。携帯型液晶ゲームのデジタルモンスターの着想がポケモンブームとたまごっちブームにあったのはおそらく否定できませんが、デジモンを題材とした「デジモンアドベンチャー」というアニメシリーズはポケモンアニメとは似て非なるものです。

他作品と比較することほど無粋なことはないですが、あえて言うならば、
デジモンは他の子供向けアニメとは以下の点において一線を画すものがあるんじゃないかなと。

それは、デジモンアドベンチャーでは、物語全編を通して、「誕生」「成長」「死」といったテーマが丹念に紡がれているという点。元ネタの携帯型液晶ゲームのデジモンが、画面上の生物の「誕生」「成長」「死」を仮想的に経験することができるようなゲームなので、その部分に着想を得ているように思います。(デジモンの携帯ゲームではどんなに面倒を見ていても、 デジモンは必ず寿命が来て、死にます。)

子供向けの作品というのは総じて、特に「死」にピントがあっていない作品が多いですよね。それはそもそも性質上、モラル的な締め付けを強くせざるを得ないということもあり、ネガティブなテーマをうまく描くのが難しいからなのではと思います。ゆえに圧倒的なネガティブ要素となり得る「死」は常にボヤかされてしまいがちです。それこそ、「死」の描写を回避できる
「ひんし」システムを開発したポケモンなんかは、その点かなり露骨です。
ポケモンたちはゲームの作中においては、死ぬことも殺すこともありません。アニメにおいても基本的にはそうだと思います。小学生当時、子供心ながら、こういったアニメが描くご都合主義的な綺麗ごとに、なんとなく違和感を覚え始めていたのを記憶しています。ひねくれボーイです。

一方で、デジモンでは「死」を始めとした暗い部分をしっかりと描くことで、逆にそれを乗り越えるプロセスにおいて確固たる成長を表現しており、そここそが他にはないデジモンの面白さなのだと思います。デジアドシリーズにおいて、デジモンは、ポケモンたちのような人類の友達としてではなく(容易に使役できる生物としてでもなく)人類には御しきれない怪物の類として描かれています。
そんな怪物たちが蠢くパラレルワールドに神隠し的に強制ワープさせられた状況にあって、ごく普通の8人の小学生が常に「死」と隣り合わせの冒険を
強いられることになる、というのがそもそものデジモンアドベンチャーの物語です。

主人公の子供たちは現実においては暗い部分(両親の別居・離婚、養子問題、家業の継承、兄弟との死別、周囲の無理解、ひきこもり、等々)を一人一人が抱えています。子供たちは、「死」と隣り合わせの冒険の中で得た学びにおいて、そういった心の闇に向き合い、乗り越えていくのです。

まさに「光と闇の対立」がこのアニメのテーマのひとつでもあるのですが、現実がそうであるように、明るい部分と暗い部分を表裏一体として、それらをリアルに描く物語として最初に好きになった作品がデジモンだったかもしれません。

さて、閑話休題、ラスエボの話に戻りますが、本作のメインターゲット層は子供ではなく、「アニメ放映当時に子供だったアラサー」ですので、容赦なく「死」や「別れ」を中心とした物語が展開されます。

本作では、太一たちは、子供時分に壮絶な冒険を体験をする中で、自分の中の闇の部分に向き合い、対処できたということもあってか、ハタチそこそこの若者としては頗る聡明に育っており、今を懸命に生きる学生/社会人として描かれます。今回対峙するのは、対照的に、子供の頃にそういった心の闇に対処しきれず、過去に囚われ、歪んでしまった大人です。それに加えて、太一たちは避けられざる儚い運命を突き付けられます。それらを乗り越える経験が今回の太一たちの成長の礎として描かれるというわけです。こういった作りは当時のアニメシリーズの例に漏れておらず、ちゃんと原作アニメの雰囲気に寄り添って作られた感じはします。02の敵も、闇落ちした大人の人間でしたしね。

まあ結論をいうと、かなりよかったです。(適当)
とはいえ、本作はあくまでファン向けムービーの側面が強いため、当時のアニメシリーズの内容をつゆ程も覚えてなかったり、そもそも見たことが無いというひとには自信を持ってはお勧めできませんが、多少なりとも覚えている人は、普通に懐かしい気持ちになりますし、機会があればぜひ見てみてほしいですね。

デジモン映画でいうと、約20年前に公開された細田守監督による1作目及び2作目もこの機会に観てほしいですね。作画や演出のレベルは今見ても感動できるレベルだと断言できます。特にアマプラの民は今現在は無料で視れるので、強く視聴をお勧めします。第一作は20分、第二作は40分弱くらいの尺なので、時間の制約もあまり気にせずに気軽に視れます。今や世界に知られたアニメ監督となった細田守氏の原点に触れたい方、ぜひ。

★第一作目:デジモンアドベンチャー

…以降の全てのデジアドの物語のきっかけとなる光が丘事件を描く。東宝の怪獣映画をオマージュした作りになっており、成長したデジモンの重量感や
恐ろしさが若き日の細田守監督によってかなりリアルに描かれます。挿入歌はラヴェルの「ボレロ」です。ボレロは序盤はエスティントで、展開するにつれて曲調が大きくなっていく曲ですが、劇中で徐々に怪物化していくデジモンにリンクさせる演出はかなりニクい。

★第二作目:デジモンアドベンチャー/僕らのウォーゲーム!

…他ならぬ細田守監督の代表的な作品「サマーウォーズ」のパイロット版、というか元ネタです。今やインターネット空間は見るも無残な醜いものに
成り下がりましたが、本作が公開された2000年当時はインターネットは世界のあらゆる場所/人をリアルタイムで繋ぐ革新的な技術として期待され、ようやく一般家庭に広まろうとしていた時期でした。ダイヤルアップ接続で電話料金を気にしながらネットを使っていたその当時の雰囲気を、勢いそのままに思い出させてくれる名作です。また、「島根=PCが無いド田舎」ということを多くの視聴者に刷り込んだ業の深い映画でもあります。細田守って子供の春休み/夏休みの描写が上手いんですね。当時の実家の雰囲気や友達の家に遊びに行くといった体験を強制的にカムバックさせられて、ちょと切ない気持ちになります。いろんな意味でノスタルジックな映画です。

以上

P.S.
今春からデジモンアドベンチャーのリメイク作品がテレビシリーズで放映されるようです。楽しみなようで、なんでこの期に及んで太一の物語を焼き直しするんだ?新しい物語でよくない?当時から続く物語はリセットなのか?
等々、いろんなことを思ってしまい、微妙な気持ちです。
まあうれしいけどね!



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