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アニマルキングダム産駒を買ってはいけない!

先日、「日本軽種馬協会が種牡馬アニマルキングダムを導入する」というそこそこのビッグニュースが話題になりましたよね。

アニマルキングダムといえばケンタッキーダービーやドバイワールドカップを制した名馬で日本での知名度も高い。「これは楽しみ!」という声も多く聞かれました。

ですが、一口馬主やオーナーズ、あるいは個人で、馬を持つことを念頭に置いてアニマルキングダムを見ると、希望ばかりではない……という話をしたいと思います。

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・アニマルキングダムの競走成績

12戦4勝2着4回。かなり安定感はあります。

アニマルキングダムはアメリカの競走馬で、オールウェザー(次からAW)でデビューし2着、次走もAWで初勝利。芝の一般戦4着を挟んでAWの重賞に挑戦し、重賞初制覇。このあと初ダートでケンタッキーダービーに向かい、なんと11番人気を覆して快勝します。これを受けて三冠路線に向かいますが2着6着と勝てず。長い休養を挟んで4歳、AWの一般戦を勝ち、さらに休養、今度は芝のBCマイルに向かいます。

BCマイルは2着に終わりさらに休養、年明けは芝1800mのG1を叩いてAWのドバイワールドカップに挑戦。ここで中団から鋭く伸びてケンタッキーダービー以来の勝利をおさめます。そしてロイヤルアスコット開催のクイーンアンステークスに遠征しますが見せ場なく11着。引退、種牡馬入りとなりました。


つまり、ダートでの勝ちはケンタッキーダービーの1勝のみ。プリークネスステークスを2着しているようにダート適正はありそうですが、日本のダートはアメリカより力が要ると言われているので、そうしたことを鑑みると、芝の方が良いという見方もできそうです。


・アニマルキングダムの血統

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(netkeiba.com様より)

父はルロワデザニモー、母はダリシア。


父のルロワデザニモーはフランスとアメリカを除く世界中で衰退が進むブラッシンググルーム系のブラジル産馬。ブラジルでデビューしアメリカの重賞を連勝、芝G1を3勝しました。日本でいうオグリキャップのような感じですね。代表産駒はアニマルキングダムで、他は散発的に重賞馬を出ている程度です。

ブラッシンググルーム系の活躍馬は日本で言うとマチカネフクキタル、サクラローレル、ビッグウィーク、昨日秋華賞を勝ったクロノジェネシスなどがいます。しかし種牡馬としては全く成功していません。辛うじてビッグウィークとクロノジェネシスを出したバゴが頑張っているくらい。

ちなみに、このルロワデザニモー、ウイニングポストという競馬ゲームにルロワドサニモーという読みで登場するのですが、これは区切る場所が間違っていて発音が違います。本馬はLeroidesanimauxとスペースなしで綴られるのですが、Le roi des animauxが正しい区切り。desと次の母音aがリエジョン(だったかな?)するので、デザニモーとなります。

英語にするとThe king of animals。アニマルキングダムは父名からの連想だったわけですね。話が逸れました。


母のダリシアというのはドイツ産で、芝のG3での入着があるようです。JRAでも産駒のサトノダムゼル、ディープキングがちょうど昨日出走していましたね。どちらも負けましたが。

ダリシアにとっての父はアカテナンゴ、母の父はダンシングブレーヴということで、母の方は完全なるヨーロッパ血統と言っていいでしょう。

ところで、母系は名前のイニシャルがDで統一されています。これがドイツの伝統で、母系のイニシャルは統一するそうです。イニシャルがD。頭文字D。また話が逸れました。


つまり、血統を見ると、衰退系統の芝血統の中からたまたま出たケンタッキーダービー馬ということになります。あれ、ヘニーヒューズやパイロといった、成功しているアメリカ産種牡馬とはかなりイメージが違いますね。


・アニマルキングダムの種牡馬成績

アニマルキングダムは、既に種牡馬として産駒を送り出しています。軽種馬協会公式のリリースによれば、オーストラリアのアローフィールドスタッドで1年供用されたのち、アメリカに買い戻され、現在はダーレーにいるようです。

これ、なんかたらい回しにされているように見えませんか?

種牡馬として期待できるなら、アローフィールドがずっと持っていたらいい話です。アローフィールドと言えばオーストラリアのノーザンファームみたいなもので、経営が傾いてすぐ現金がほしくなった、ということも考えられません(現に今も元気に活躍馬を輩出しています)。


実際、オーストラリアでの産駒成績は良いとは言えません。

1世代しかいないとは言え、リステッド以上を勝った馬は4頭しか見つかりませんでした。1頭はG1オーストラリアンダービーを勝ったエンジェルオブトゥルースという馬ですが、他はイマイチ。それに、短距離戦線に高額賞金が組まれているオーストラリアの世代限定路線では、ダービーは格が落ちるG1と言えます。

星の数ほどリステッド競走があるオーストラリアで大牧場のバックアップを受けながらリステッド勝ちがたった4頭は少し寂しすぎる気がします。


北米でも、パッとしない産駒ばかりです。

BLOOD HORSEというサイトによれば、141頭の出走に対して勝ち馬は64頭ということで勝ち上がり率は悪くないですが、サイアーランキングではトータルで64位、3世代目同士だけで比べても7位と、イマイチと言って良い成績です。ちなみに、去年日本に導入されたデクラレーションオブウォーとシャンハイボビーはこのランキングで2位3位です。


どうでしょう、適正がダートに出ていればオーストラリアでのイマイチさは目をつぶれますが、ダートのあるアメリカに戻ってもダメとあれば、種牡馬として厳しいということでしょう。


・アニマルキングダム、今後の展望

アニマルキングダム、どうでしたでしょうか。ケンタッキーダービーとドバイワールドカップを勝った名馬でも、種牡馬として成功が約束されているわけではないのです。

もちろん、日本はアメリカともオーストラリアとも馬場は違いますから、これからのことはわかりません。ただ、自分が馬をどういう形であれ買うときに、あえてリスクをとって買う種牡馬ではないということは、この記事を読んでくれた方なら分かるのではないでしょうか。


ただ、私はアニマルキングダムアンチでもなければ日本軽種馬協会が無能と言っているわけでもなく、ネガティブキャンペーンが趣味なわけでもありません。なので、アニマルキングダム産駒がどういったところに活路を見出していけるか、考えてみようと思います。


まず、芝の王道路線やマイルは厳しいでしょう。現状ディープインパクト系とキングカメハメハ系で隙が無く、とても太刀打ちできません。ブラッシンググルーム系はスピードが全く無いのでスプリントも無理。

そういう馬はダートか長距離に行くわけで、ダートでもある程度の馬は出すと思います。しかし、重賞級が出るのは長距離ではないかと思っています。

先に挙げたブラッシンググルーム系の活躍馬を思い出してください。

マチカネフクキタル、サクラローレル、ビッグウィーク。全て3000m級のG1を勝っています。また、外国馬ではレインボウクエストやバゴといった凱旋門賞馬を排出。

数年後のダイヤモンドステークスや万葉ステークスの勝ち馬は、アニマルキングダム産駒かもしれません。


また、ブラッシンググルーム系は父系の衰退具合のわりに、母父として活躍馬を出しています。テイエムオペラオーやマヤノトップガンも母父がブラッシンググルーム系。アニマルキングダムも母父として大物を出すかもしれません。

ただし、繰り返しますが、アニマルキングダム産駒を買うというのはハイリスクローリターンな投資になると思います。自分が得をすることだけを考えればもっと他にいい種牡馬はいます。きらびやかな戦績に騙されず、シビアにいきましょう。


長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


・まとめ

・ダートより芝が得意かもしれない!

・衰退が進むブラッシンググルーム系出身!

・産駒は豪でも米でも不振!

・長距離が得意かもしれない!

・産駒を買うのはハイリスク!






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