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新馬雑感(2021.8.15 時点)

昨年は、翌年のクラシックに向け、期待できそうな新馬たちについて、記事として頻繁に取り上げていたのですが、今年は、なかなかそれもできないまま、気がつけば8月も中旬になってしまいました。

記事が書けなかった理由として、コロナ禍の影響で仕事がイレギュラーに入ってきているとか、競馬以外にもいくつかの要因があるのですが、あえて率直に言うならば、心底記事を書きたいと思えるほどの馬が出てきていないから記事にならなかったというのが正直なところかもしれません。


もちろんアカイトリノムスメのように、新馬戦の凡走からクラシックで好走するところまで行きつく馬もいるので油断はできないですけど、印象としては、今年はややスタートがスローだな~って感じもあるのですよね。昨年で言えば、ダノンザキッド組、バスラットレオン組など、勝ち馬だけでなく2着以下に敗れた馬たちの中にも好素質馬が溢れていたレースもありましたけど、今年はそういったレースがまだあまり見られていないのです。

とは言え、もう8月も中旬ですから、函館2歳Sに関する記事以外、いっさい2歳馬の触らないのもどうかなと思ったので、今日はこれまでにデビューした馬の中で、ビビッときた何頭かについて、備忘録の意味も込めて簡単にコメントしておこうと思います。

1.ポッドボレット(父:ジャスタウェイ)


「オイオイ、新馬戦を勝ちそびれた馬を真っ先に取り上げるなんて、お前ナメてんのか!」ってガチで突っ込まれそうですけど、ここは自分の直感を信じて、、、

この世代の新馬戦のパドックを見ていて、もっとも僕の琴線に触れたのはこの馬でした。レースを走らせてみても、完歩が大きく力強さもあって、惚れ惚れするようなフットワークで走っていましたね。レースでは、終始前が壁になって力を出し切れないままゴールインとなってしまいましたけど、脚は完全に余っていましたし、まともだったら楽々と突き抜けていたでしょう。

大飛びで一瞬の脚には欠ける感じですけど、長くいい脚を使えそうなところなんかは、同じジャスタウェイ産駒のダノンザキッドやヴェロックスとキャラがやや被ります。すなわちそれは、ジャスタウェイ産駒の大物に共通する力強さを備えているとも言えるので、この馬の今後の活躍に大いに期待してみたいと思っています。

2.ステルナティーア(父:ロードカナロア)


2頭目に取り上げるのは、この馬。まあ、こちらは妥当な線ですね(笑)

ここ最近、良血馬の入厩が増えている岩戸厩舎ですが、開業以来、好馬体の馬を数多くデビューさせているものの、クラシック戦線で活躍するような馬を頻繁に輩出しているわけではない分、この馬がどんな立ち姿で出てきて、どんな走りを見せてくれるのか、個人的にはとても注目していました。

パドックを見ていて印象的だったのは、その動きの柔らかさ。兄ステルヴィオと比べても、つなぎの柔軟性の高さ、可動域の広さは、ひと際目を瞠るものがありましたね。反面、力強さはひと息で、切れる脚は使えるけれど、長くは続かないんじゃないか。そんなネガティブな想像ができないわけではなかったので、勝ち負けはともかく、とにもかくにもレースぶりを注視していたんです。

するとどうでしょう、イン有利の馬場、先行馬有利のペースをもろともせず、大外から一頭だけ違う脚を使って楽々と差し切ってしまったではありませんか。しかも、レースの上がり3ハロンが、11.5 - 10.5 - 11.3のところでスコンと突き抜けているので、その瞬発力は新馬としては異次元のものがあったと言っていいでしょう。

馬体から受ける印象として、いかにも平坦コースが合いそうな感じもあって、今後、坂のあるコースでどんなパフォーマンスを見せられるのか、とか、関東所属の分、阪神ジュベナイルFや桜花賞出走時の輸送に十分な耐性があるのか、など、まだまだ克服すべき課題は多いわけですが、ことポテンシャルに関しては、現時点でも牝馬クラシック戦線で十分に戦えるものがあると評価していいように思います。

3.ミント(父:エピファネイア)


こちらも、新潟のマイル戦を勝ち上がった組。ステルナティーア比較で見ると、馬場差を考慮しても、時計面ではやや見劣るようにも見えるのですけれど、この馬、胴長でいかにも距離が延びて良さそうな印象があって、まだ見ぬ奥深さを感じさせてくれるのですよね。

さらに言うと、勝ちっぷりの良さはもちろんのこと、この先、どんどんと成長を重ねていくことも期待できるので、現状の完成度でははっきりステルナティーアに劣りますが、将来性の高さではむしろこちらに期待をかけたくなる気持ちもあります。

イメージとしては、桜花賞よりもオークス。まだマイルしか走っていないので、本当のところがどうかを判断するのは早計ですけど、イメージとしては、距離延長にも十分に対応できそうな感覚でいいのではないでしょうか。友道厩舎の馬ですし、馬券的妙味はあまり期待できないのですけれどね。

4.オタルエバー(父:リオンディーズ)


この馬も、偶然ですが新潟のマイル組。開幕週の逃げ切り勝ちなので、将来性について半信半疑な面も残るのですが、最後の3ハロン、持ったままの手応えで11.5 - 10.7 - 11.3なら、掛け値なしの好内容と言っていいのでしょう。

なによりこの馬の魅力は、馬体面がしっかりしていることですね。パドックを歩く姿を見ていても、「これで走らないって、そんなことあるの?」って感じでしたし、リオンディーズ産駒ながら気性面でどっしりとしている点にも好感が持てました。

こちらは、血統的にも、体型的にも、レース内容的にも、いかにもマイラーな感じが否めないので、もしかすると皐月賞でも距離が長いかもしれないですけど、朝日杯フューチュリティステークスとかNHKマイルCとかで活躍する姿が見てみたい馬でもあります。

血統面はともかく、厩舎、馬主さんはどちらかと言えば地味なので、新馬戦5番人気が示すように、タイミングがうまく噛み合えば、好配当馬券を連れてきてくれそうなことも、この馬の魅力のひとつと言えそうです。

5.コマンドライン(父:ディープインパクト)


この馬に関しては、すでにいろいろなメディアでも取り上げられているようなので、小難しい話は全部割愛します。

フットワークが雄大でとにかくスケールが大きいですし、成長力がありそうなタイプでもあるので、ほぼ間違いなく、クラシック戦線に乗ってくるのではないでしょうか。

国枝厩舎所属のディープインパクト産駒ですから、馬券的妙味はまったくありませんけど、クラシック戦線を盛り上げてくれる存在として、純粋な気持ちで応援したいと思います。

6.ダノンスコーピオン(父:ロードカナロア)


阪神デビューのこの馬は、初戦、超スローからの上がり勝負になった分、時計面も含め、勝ちっぷりはやや平凡に映りましたけど、接戦を演じた2着馬は、次走新潟戦を快勝しましたし、3馬身離した3着馬も、次走小倉戦を勝ち切りましたから、見た目以上の好内容で新馬戦を勝ち上がったと評価すべきでしょう。

馬体面では、まだ弱いところがありそうな感じで、ややクタクタしている感じもありましたけど、それでいてしっかり勝ち切ってきたところからは、やはり非凡な素質を感じさせてくれます。まだまだ伸びしろがありそうなところも、とっても魅力的ですね。

ただ、距離面には限界がありそうにも見えるので、距離適性のところは、今後、注視していく必要があるでしょう。直感的に言えば、この馬は純粋なマイラー。精度はなんともですが、現状はそう評価しています。



せっかくの機会なので、新種牡馬に関する簡単な印象も書き添えておこうと思います。

①ドレフォン

現状でもっとも強いインパクトを残しているのは、この馬でしょうか。自身はバリバリのアメリカ血統なんですけど、これまでにデビューした産駒を見ている限り、あんまりそんな感じを受けませんよね。少なくとも、ザファクターやアメリカンペイトリオットの産駒とは、馬のシルエットがまるっきり違っています。

芝向きの馬が多いですし、距離にも融通性がありそうな馬も多くて、言うなれば、母系の良さを生かしつつ、能力を補完しているといった印象でしょうか。今後、大物を輩出しそうな予感もありますから、この種牡馬からはしばらく目が離せないなと思っています。

②シルバーステート

自身、言わずと知れた未完の大器だったわけですが、産駒もここまで及第点以上の成績を残していますね。ダリア賞勝ちのベルウッドブラボーがどこまでの器かはともかくとしても、現状ですでに5頭が勝ち上がっているのですから、掛け値なしに立派な成績を残しているとは言えるでしょう。

ただし、ここまでの印象として、パッとしない産駒が少ないかわりに、大物感を漂わせる馬を見かけることもなかったので、なんとなくですが、アベレージヒッターのイメージが強くなりつつあるのも事実。ただ、これは現状での話に過ぎませんから、秋シーズンに入って、産駒傾向に変化が生じるのか否か、そこは是非とも注視すべきポイントになってくると思っています。

③キタサンブラック

良い意味でイメージと違ったのが、この馬の産駒たちでしょうか。自身は現役時代、名馬の地位を築き上げたわけですけど、成績で見るほどには本物の強さを感じさせる場面がなかったことに加え、血統背景が地味な分、果たしてどんな産駒を送り出すのか半信半疑で見ていた、というのが本当のところでした。

ところが、です。この馬の産駒には、胴長で好馬体の馬が実に多い。その割に、現状の成績はひと息の印象もありますけど、この週末には、小倉の新馬戦でドグマがなかなかの勝ちっぷりを見せてくれましたし、なんとなくですが、いずれ大物を輩出するんじゃないかという妙な期待感に満ちあふれているんですよね。

距離適性的にも、クラシック戦線で戦っていけそうな馬が多い印象もありますから、秋になって、「コレは!」という大物が出現してくれることを、期待して見ていようと思っています。

④サトノアラジン

地味ながら、思いのほか産駒の印象が良いのがこの馬。ガッチリとした好馬体の馬が多いですし、意外に距離の融通が利きそうなタイプも数頭出てきているので、想像以上に今後に期待を抱かせてくれているなというのが、ここまでの率直な感想でしょうか。

加えて、胸前の筋肉が発達しているタイプの馬が多いのも印象的で、もしかすると、この先ダートの短距離で活躍する馬をたくさん輩出する可能性があるのかな、とも……。まだ妄想にすぎませんが、個人的にはそんな印象も抱いています。

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