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安田記念の回顧


時計面では、昼前後の雨の影響を若干受けた印象もありましたが、馬場のせいで力を出し切れないということはない、概ねフェアな条件でレースが行われました。

ただ、トラックバイアス的には、追い比べになれば外有利というところが、はっきりと明暗を分ける結果に。馬場のいいところを選んで走らせることに長けた川田Jの手腕が、最後の最後で見事に生きた格好となりましたね。

では早速、レースを振り返っていくことにしましょう。


日曜 東京11R 安田記念


展開面では、大方の予想どおりトーラスジェミニが中枠から主張していく形になりましたが、道中で10秒台のラップは一度もなく、前半ははっきりスロー。その分、馬群が凝縮する形になって、馬場のいい外目に出せなかった内枠勢には、非常に厳しい競馬になっていたと思います。

溜めて味のあるケイデンスコールが、同馬主のグランアレグリアに外から被せにいくという玉砕的な戦法を選択したことで、馬群の中に閉じ込められた馬たちにとっては、よりいっそう厳しい形になったということもありました。ただこれは、岩田康Jがいかに忖度なしでビシッと騎乗しているかの表れではあるので、この騎乗を安易に批判するのは誤りでしょう。

最近は、完全にヒール役に甘んじることが多くなってしまった岩田康Jですが、こういう変に群れないジョッキーがいるからこそ、今もなお、競馬の公正性が保たれているとも言えます。きっと今回も、「何やってんの!」的な論調が出てくるとは思いますけど、そういうゴシップ論に惑わされることは、むしろ競馬力をダウンさせる一因にもなるので、そこは冷静かつ客観的な評価を心掛けていく必要があるように思います。


勝ったダノンキングリーは、絶好調とは言わないまでも、久しぶりに力を出し切れる状態に仕上がっていましたし、道中の位置取りも、最後の直線のコース取りも100点満点。こうなると、もともとマイルから千八の距離なら、一線級相手にも引けを取らないポテンシャルを秘めていたのは確かなので、このメンバー相手に勝ち切っても、まったく驚けない結果ではあったと思います。

もちろん、ひとつでもどこかでボタンの掛け違いがあれば、この結果は望めなかったでしょうし、その意味で、すべてが見事なまでに噛み合った結果ではあるのですが、自身が半年以上の休み明けであったことを考慮すれば、この馬自身、非常によく頑張ったと評価していいのではないでしょうか。


2着のグランアレグリアは、中2週のローテーションで、体調面を不安視する向きもありましたが、パドックでは落ち着いていましたし、能力の発揮にはまったく支障のない状態でレースを使えたように思います。

ただ、馬群が凝縮して内に閉じ込められ、位置取りが下がるリスクを事前の見どころ解説で指摘してわけですが、まあ、最悪のシナリオが見事なまでに的中する形になってしまいました。それでも、この厳しい展開の中、最後、僅差の勝負に持ち込んだのはさすがですし、今のマイル路線で、この馬の力が一枚抜けているという評価に、誤りはなかったと考えていいでしょう。


3着シュネルマイスターは、外枠から非常にスムーズなレースができていましたから、現状の力は、最大限に発揮できたと言っていいのではないでしょうか。相手がスムーズさを欠いたとは言え、グランアレグリアと半馬身差ならそれこそ大健闘ですし、事前にここでも通用すると見た、こちらの期待に応える見事な走りを見せてくれたと思います。

4着インディチャンプに関しては、この馬に対する事前の評価がピタリだったな、と思います。レースぶりは完ぺきでしたし、その中で、最後、シュネルマイスターに競り負けたのですから、やはり全盛期と比べると、やや力が落ちていると考えるのが妥当でしょう。まだまだ、重賞戦線で活躍できる能力は残っていると思いますけど、今後GⅠで、となると、相手関係にもよりますが、なかなか厳しいところがあるのではないでしょうか。

5着トーラスジェミニは、この着順なら大健闘ですね。ただ、この馬が掲示板に乗れたということは、直線で挟まれる大きな不利のあったサリオスを除くと、他の馬は、やはりここでどうこうというレベルになかった、とは言えます。この馬自身は、基本、人気にならないタイプなので、次走、1回凡走するだけで、また人気を大きく落とすのでしょうから、まだまだ、馬券的な狙い目がある馬、そんなふうに考えていいと思います。


8着サリオスにとっては、展開、枠順、トラックバイアス、そのすべてが完全にアダとなりましたね。直線で不利を受けたのは、一瞬の鋭い脚に欠けるこの馬自身の弱点が出たとも言えますが、あの大きな不利がなくとも、馬券圏内まではなかったと思われるので、結果的に見れば、今回は、どうにもこうにもなす術がなかったと評価すべきでしょう。

マイルチャンピオンシップでは極端な外枠、急激に馬場が悪化した大阪杯では内枠、そして今回は、外有利なバイアスがある中での最内枠と、最近のこの馬は、"持ってない感"がハンパないですけど、少なくとも、このメンバーで力が足りないということはないので、次走以降の評価は、レース条件を見極めて、ということでいいように思います。


個人的には、一頭を除き、各馬の評価の精度はかなり高かったと思うのですけど、評価がズレた一頭が、結果的に勝ち馬だったというのは、なんともせつない結果ではありました。

ただ、はずれははずれでも、内容の濃いはずれではありますから、事前の見どころ解説を参考に馬券を買った方には非常に申し訳ないのですけれど、決して満足度が低いレースだったわけではありません。この春の東京開催で、ほぼ完璧にパターンにはめ込んでいた芝のマイル戦で、一頭だけ評価がズレちゃったのはとても悔しいですが、まあ、それも競馬なんですよね。

こういう内容の濃い見どころ解説を積み重ねていくことが、年間をトータルしてみた時に、皆さんに有用な情報を提供できていた、ということになると思っていますので、ひとつひとつのレース結果に一喜一憂することなく、今後も地道に見どころ解説をがんばっていこうと思っています。

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