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第145回 中山大障害の回顧

いや~、落馬競走中止となったアサクサゲンキと平沢Jを含め、ひとまず大きな事故なくレースを終えられたことに安堵しています。

オジュウチョウサンは有終の美を飾ることはできませんでしたけど、現時点での力は十分に発揮できたと思いますから、その点でとても納得感のあるレースにもなりましたし……。

では、早速、レースを振り返っていくことにしましょう。

中山10R 中山大障害


今年のこのレースの勝ち時計は、4:45.9。昨年よりも若干時計が詰まりましたが、レースレベル的には、昨年のこのレースとほぼ同等という評価でいいのかな、と。

ザックリとレースの全貌を振り返ってみると、既存勢力の中で昨年のこのレースや春のグランドジャンプとほぼ同等の力を発揮できたのは、3着マイネルレオーネと5着ビレッジイーグルの2頭だけ。オジュウチョウサン、ブラゾンダムール、ケンホファヴァルトの3頭が揃ってパフォーマンスを落とした中で、新興勢力の各馬が相対的に浮上してこの結果になった。そのように総括するのが正しい解釈のように思います。

つまり、勝ったニシノデイジーや2着のゼノヴァースが、大障害コースでさらなる上積みを見せつけたわけではなく、既存勢力のパフォーマンスダウンに乗じる形で好結果を得ただけ。やや意地悪ではありますが、見方によってはそんな言い方もできそうな気がします。


勝ったニシノデイジーは、「今回は控える競馬をする」と決め打っていた感じでしたが、レース序盤はリズムを崩して外に逃げたりしていて、決して完璧な立ち回りができていたわけではありませんでした。

勝負どころからは、絶妙なコース取りで先頭に立ったものの、何度かケンホファヴァルトと接触するシーンもありましたから、「スムーズなレースをしてスマートに勝った」とはお世辞にも言えないのでしょう。

ただしその分、この馬の強さが際立ったのも事実で、この勝利には時計以上の価値があると評価できますから、今後を占う上においては、この馬が障害界のトップホースとして、GⅠレースを盛り上げて行ってくれるはず。そんな期待を抱かせる、時計以上に中身の濃い勝利だったと言えるのかもしれませんね。


2着のゼノヴァースは、やはり大障害コースでいろいろと削がれた部分もあったと思いますが、それでもしっかりと連対を確保したのですから、この馬なりに素晴らしい走りを見せたと言えるのではないでしょうか。

中山の大きな障害にフィットするような飛越ではない中で、鞍上の森一馬Jは苦心しながらも最後まで大きなミスなく見事にクリアしてきましたから、ジョッキーのエレガントなエスコートあってのこの結果。そんな評価もできそうです。


3着マイネルレオーネは、前走から見違えるほど馬が良くなっていました。

高齢馬が短期間でここまで良くなるとは驚きですが、まずは力を出し切れるコンディションに仕上げてきた陣営の底力に拍手を贈りたいですね。

また、いつもは冷静な騎乗が目立つ植野Jが、最後の直線でインに潜り込んで渾身の追いっぷりを見せてくれたことには、心底感動しました。まだまだやれるジョッキーだけに、今年で引退となるのは本当に残念ですけど、最後のGⅠ騎乗でとてもいいものを見せてもらったな、と。


4着マッスルビーチは、馬券圏内にはあと一歩届きませんでしたけど、「一発があればこの馬」と事前に評価していたこちらの期待に応える見事な走りを見せてくれたと思います。

ただこのレースを観ると、やはりこの馬にはスタミナ勝負の方が合っているようで、スピード勝負になって取りこぼすシーンは今後も続発しそうですから、「狙いどころをしっかりと見定めないといけない馬であることに変わりはない」と引き続き考えておいたほうがいいのかな、と。


5着ビレッジイーグルは、またしても他馬に早めにかわされる苦しい競馬になった割には、最後までよく踏ん張っていると思います。

ただ、「どう乗っても掲示板の下のほう」という近況を大きく変えるまでには至りませんでしたから、GⅠの舞台では、概ね今後も脇役の地位に甘んじることになりそうですね。


6着オジュウチョウサンは、よくぞここまで体調面を戻してきたな、と。残念ながら結果はついてきませんでしたけど、パドックの映像で馬のつくりを観た時、「この陣営、ハンパないわ!」と思ったくらいでしたからね。

この馬に関しては、11歳の暮れでこの走りですから、「長い間、本当にお疲れさま!」のひと言しかありません。


7着ブラゾンダムールは、前哨戦を使えずメンタルを含めた体調面が万全でなかったことと、西谷誠Jが勝ちを意識していつもよりも早めに動き過ぎたことの合わせ技で、想像以上の大敗を喫したものと捉えています。

ただ、敗因はそれなりにはっきりとしていますから、この敗戦をより深刻に受け止める必要は特にない。そうも思います。


8着ケンホファヴァルトは、ニシノデイジーと何度か接触したりして、精神面の脆さを露呈してしまった印象でした。仕上がり自体は悪くなかったと思いますし、あくまでも結果論でしかありませんが、やはりこの馬は熊沢Jじゃないと動けないんだな、と。

確かにこの馬も高齢馬ではありますから、ピークアウトしてしまった可能性を完全に否定はできないですけど、もしも熊沢Jが鞍上に戻ってくることがあれば、その時はもう一度、この馬の能力に賭けてみたいと思っています。


たとえ自分のシミュレーションがうまくいかなくても、やっぱり、障害戦はいいですね!

世間の注目が集まるのは概ね年に2回だけですけど、当研究所では常に障害戦にフォーカスしてこの先も投稿を続けていきます。

これまであまり障害戦に興味がなかった競馬ファンの方も、オジュウチョウサンの活躍をきっかけとして是非ともジャンプレースのファンになってもらい、日々、必死に鍛錬を続けている障害馬と障害ジョッキーを共に応援していきましょう!

それでは引き続き、「本気の競馬力向上研究所」をどうぞよろしくお願いいたします。

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