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中山大障害の回顧


絶対王者オジュウチョウサン不在の中、どんなレースになるのかを注目していた今年の中山大障害ですが、最後の直線まで手に汗握る白熱の大接戦になりましたね。

ジョッキー同士の道中の駆け引きも見どころ満載で、そこでうまく立ち回れたかどうかが、最後、着順として結果に表れたことも印象的でした。

あくまでも個人的な感想を言えば、一年の最後に、会心の一撃とも言える見どころ解説ができてよかったなあ~、という充実感に浸っていたい気持ちもあるのですが、ひとまずそれは措くとして、早速、レースを振り返っていくことにしましょう。


スタート直後、まず先手を奪ったのがストレートパンチでしたが、極端なスローになることを嫌ったシンキングダンサーが、レース中盤、内から先頭を奪っていく形になりました。

そのことによって、レース序盤、絶好のポジションを確保したかに見えたブライトクォーツやビッグスモーキー、ヒロシゲセブンあたりは、ややとばっちりを喰ったような印象もありましたね。

そんな出入りの激しい流れの中、先団でうまく立ち回っていたのがケンホファヴァルト。大竹柵と大生垣の着地でちょっと危ないところはあったのですが、そこでブレーキを踏まずに立て直した熊沢Jの手腕は光りました。こういうところなんかは、さすがに勝負強いジョッキーはひと味違うな、と思わせてくれます。


人気のメイショウダッサイは、好スタートを切ったものの、序盤は中団の後ろでリズムよく走らせることに専念。できるだけコースロスがないように立ち回りつつ、襷となる大障害コースの絶妙なコース取りで、大生垣を飛んだところではなんと3番手のインを取り切ってしまいました。ある意味、この時点で、すでに「勝負あった」の感じがなきにしもあらずでした。

それにしても、森一馬Jの騎乗ぶりには、凄みがありますねえ~。技術力の高さはもちろんのこと、そのメンタルの強さは、彼の騎乗ぶりを高く評価している僕でさえも、完全に感服させられるものでした。ゲートの中で発馬を待つときのピンと背中の張った姿勢とか、位置取りが後ろになっても、決して慌てることのない落ち着いた立ち回りとか。さらには、大生垣飛越時の美しいフォームなんかは、ホントにもう惚れ惚れしてしまいます。JGⅠ初制覇がかかったレースでこの落ち着きぶりですから、これから、障害界の歴史に名を刻むジョッキーへと間違いなく成長してくれることでしょう。

もう一頭の人気馬、タガノエスプレッソは、中団でじっくりと脚を溜める競馬を選択。大きな障害と距離に対する不安がある中で、そのことを真正面から受け止めつつ、そこにしっかりと対策を打ってきた平沢Jの騎乗ぶりも、実に見事でした。


最終障害を飛び終える段階では、シンキングダンサーを競り落としたケンホファヴァルトが完全に抜け出す形になって、それをメイショウダッサイ、ブライトクォーツ、タガノエスプレッソの人気3頭が追う展開となり、勝負は、実質この4頭に絞られる形に。その中では、道中で少しずつロスを作っていたブライトクォーツの手応えが、もっとも怪しく見えました。

この時点で、もしこれが最後の直線に置き障害のある中山グランドジャンプだったら、ケンホファヴァルトがギリギリしのぎ切る可能性が高いシチュエーションになっていたわけですが、ここからが、実に中山大障害らしいレースになったと思います。

馬場のいいところを選び、絶妙のタイミングで追い出したメイショウダッサイが見事差し切って1着。最後は脚が上がりながらも、ギリギリ粘り込んだケンホファヴァルトが2着。そして、大外から猛然と追い込んだタガノエスプレッソ3着。この上位3頭は、道中の立ち回りが素晴らしく、まさに馬と騎手の一体感が生んだ好走だったと言ってもいいでしょう。


勝ったメイショウダッサイは、前走時と比べて、パドックの気配がずいぶんと良化。さすがに春の絶好調時までは戻っていなかったようにも映りましたが、不安のないレベルまでは体調を戻していたと思います。

今回に関しては、森一馬Jの絶妙なアシストがあってこその勝利。そんな見方もできると思いますが、この馬のポテンシャルは、こんなものではないでしょう。もし、来春、オジュウチョウサンが復帰してきたとしても、この馬は、十分に太刀打ちできるだけの能力を秘めています。今から、中山グランドジャンプのレースが楽しみになりますね。


2着のケンホファヴァルトは、積極的なレース運びで、この馬の長所であるしぶとさを如何なく発揮してきました。まだ障害戦のキャリアが浅く、ところどころ危なっかしいところがあった中での好走ですから、現状におけるベストパフォーマンスは出せたのではないかと思います。あれだけ大きな不利が重なった中での前走の3着は、やっぱり伊達ではなかったということでしょう。

3着タガノエスプレッソは、道中のスタミナロスを抑えつつ、そのスピードを終いに生かす競馬で、勝ち負けまで加わってきました。このレース条件で好走するためには、現状はこの作戦しかなかったと思いますし、それをいきなり具現化してきた馬もジョッキーも、本当に大したものだと思います。こんなレースができるのなら、今後は、適条件とは言えない長距離戦での戴冠も、十分視野に入ってくるかもしれません。

4着ブライトクォーツは、まあ、無難な結果だったかなとも思います。もし西谷Jが完璧な立ち回りをしていれば、上位3頭に肉薄できた可能性もあったとは思いますが、西谷Jの現在地を冷静に見つめれば、このくらいの騎乗ができれば及第点であるとも言えます。馬のほうは、今回も長距離戦に高い適性があることをしっかりと見せているので、今後も、大障害コースを使用するレースでは、目を離せない存在になってくるでしょう。

5着ヒロノタイリクは、難波Jの完璧なエスコートで掲示板を確保してきました。この5着は、考えうる中での最高の結果だったと思いますし、今後の可能性を広げるという意味でも、今回、好走できた意味は大きいと言えるでしょう。

6着フォワードカフェは、石神Jの道中の立ち回りも完璧でしたから、現状の力を出し切った結果。7着ヒロシゲセブンは、レース中盤で流れに乗り損なったのは痛かったですが、もともと不器用なところはあるので、現状は、東京コースがベスト。ポテンシャルも、ここではやや足りなかったということでしょう。

8着シンキングダンサーは、休み明けで馬体の張りがひと息の状態でしたから、そんな中でも、積極的な競馬で見せ場をつくったのは立派だったと思います。決め手不足は相変わらずですが、順調なら、来春はもう少し上位に肉薄するレースができそうですね。


個人的には、力を入れている障害戦、しかも一年の総決算となる大レースで、精度の高い見どころ解説ができたことを、大変うれしく思っています。3着と4着が逆だったら、100点満点だったんですけどね。もちろん、こんなことがしょっちゅうあるわけではありませんが、会心の一撃には違いないので、今回は一応、自分をほめておきます(笑)

おそらく、この研究所のリピーターの方は、点数を絞った中で、ガッツリ好配当をGETできたんじゃないかと思います。今回のことを一つの成功体験として、今後、さらに競馬力を向上させてもらうことができたら、よりいっそううれしいですね。

今年は、コロナ禍で、何かとストレスの多い一年でもありましたから、払戻金を元手にして、皆さんにとって大切な人に、あるいは皆さん自身に、是非、ご褒美を買ってあげてください。それが、来年に向けての活力になることは、間違いありませんから。

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