第17回 ヴィクトリアマイルの回顧
いや~、ソダシはここで完全復活ですかあ~
正直、一度、どん底までパフォーマンスを落とした馬が、たった半年でトップパフォーマンスを取り戻すなんて、過去にほとんど記憶がありません。
時代が変わって、馬を育てるノウハウが向上したからなのか、それともソダシが稀代の変わり者だからかなのはわからないですけど、この結果は、今の私の力ではとてもとても予見できなかったな、と。
だって、オジュウチョウサンの復活劇のように、相手のレベルが下がったことが大きく影響して、成し遂げられた快挙というわけではありませんから。相対的な力関係がどうのこうのじゃなくて、ソダシ自身が元のパフォーマンスを取り戻したのですから、そこが何よりもスゴイこと。私たちの目には見えないところで努力を重ねてこられた関係者の皆さんに、心からの敬意を表したいと思います。
では、早速レースを振り返っておくことにしましょう。
日曜 東京11R ヴィクトリアマイル
今週は、先週日曜の後半とは打って変わり、非常にフラットな馬場。スローでも大外一気がバンバンと決まるような馬場ではなく、道中が流れれば外差しも決まるけれど、基本は立ち回りの丁寧さが求められるオーソドックスな条件に戻っていました。
そしてこのヴィクトリアマイルも、上がりの速い競馬になって、レース序盤に後方に位置した馬たちには、完全にノーチャンス。そんなやや特殊なレースになったと思います。
勝ったソダシは、好スタートを切ったものの、ハナを主張したりはせず、自分のペースで走らせることを優先するレースとなりました。結果的に、ポジショニングのうまさがこの快勝に直結したわけですから、吉田隼Jのエスコートも、ほぼ100点満点だったのだろうと思います。
そして馬自身も、最後、この馬としては究極の切れ味を使えていますから、完全に昨年の桜花賞当時のデキを取り戻していたのでしょう。そうでなければ、仮に好勝負するにしても、もう少し危なっかしさがあってもいいくらいでしたからね。
2着ファインルージュは、直線の入り口で大きく躓いたのが致命傷になってしまいました。おそらく、あれがなければこの馬が勝っていたでしょうから、返す返すも残念なアクシデントになってしまったな、と。
まあそれでも、躓いて完全に勢いを失ったところから、エンジンを再点火させて2着まで突っ込んできたのには本当に驚かされました。中心視していたこちらから見ても、かなりインパクトがあるパフォーマンスでしたし、負けて強しとはまさにこのこと。そんなレースだったように思います。
結局は、昨年の桜花賞上位組のワンツー。しかも、他の組とははっきりとした力の差があるということが、このレースであらためてはっきりしたとも言えそうですね。
3着レシステンシアは、展開に恵まれての好走ではありますが、何かが少しでもズレていたら馬券圏外だったわけですから、これは横山武Jの大ファインプレーと言っていいように思います。
ただし、ジョッキーがこれ以上ないほど完璧に乗って、それでいて根っきり葉っきりの3着ですから、レース内容的に、特に見るべきものはありませんでした。いいところ、昨年と同じくらいのデキは維持していた、というくらいの評価が妥当なのではないでしょうか。
4着ローザノワールは、大健闘でした。何が何でもハナ、という強気な姿勢で乗った、田中勝Jの好騎乗だったと思います。
5着ソングラインは、結果は伴いませんでしたが、内容的には素晴らしいレースができました。トラックバイアス的に、内枠はむしろプラスに働きましたけど、上位馬の中で唯一中団から差してきた脚はかなり目立っていましたから、今回は完全な展開負け。少なくとも、もう一回やってレシステンシアやローザノワールに先着を許すことはないでしょうから、惜しいと言えば惜しいですし、運がなかったと言えばそうなのでしょう。
6着デアリングタクトは、まだまだデキが戻り切っていないように見えた中で、よく頑張っているほうなのではないでしょうか。じゃあ次、すぐに元どおりのパフォーマンスを発揮できるかはなんともですが、少なくとも完全に終わってしまったようには見えませんでしたから、一定程度は再上昇の期待をしていいのかもしれないですね。
11着ディヴィーナは、あれだけ前半から行きたがってこの着差ですから、もし違う鞍上だったら、勝ち負けに加わっていた可能性まであったと考えています。右回りでどうかという課題はありますけど、間違いなくこの馬は重賞を勝つ資格のある馬ですから、今後の活躍に期待したいな、と。
12着レイパパレは、マイルで勝ちに行く競馬をしたことが敗因の一つではありますが、ここまで大きく失速したとなると、その理由だけではすべてを説明しきれない部分はあるのでしょう。
ただし個人的には、自らが考えていた不安がズバリ的中しての敗戦でもあると考えているのですよね。昨年のNHKマイルCでのグレナディアガーズ、昨年のこのレースのデゼルもそうですが、川田Jが東京のマイル戦で外から勝ちに行く競馬をして失速するのは、本当によく見る光景。したがってそこのところは、競馬ファンのこちら側でちゃんとケアしておかないといけないポイントなんだろう。そう考えています。
結局のところ、このレースで強い競馬をしたのは、みどころ解説でも触れていた現4歳世代の上位3頭。そこに、トラックバイアスと展開を最大限に味方につけたレシステンシアが喰い込んできたという結果ですから、「現4歳世代の強さ」という部分にフォーカスすることができた競馬ファンの皆さんは、シンプルに馬券が的中したんじゃないでしょうか。
個人的には、トラックバイアスの読み違いがあったりもしましたけど、それ以上にソダシの完全復活はまったくのノーマークでしたから、いずれにしてもハズレはハズレ。ただし、最も強い競馬をしたファインルージュを中心視できていた点は良かったですし、当たらなかったけど納得のレースではあったのかなと思っています。
さあ、次週は、オークスですね。
ここも難しいレースにはなりますけど、まずはトラックバイアスをしっかりと見極めて、後悔のない判断ができる下地をつくらないといけません。そのためにも、この週末も土曜日の馬場傾向には要注目、ですね!