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第74回_阪神ジュベナイルFのみどころ


明日は、阪神競馬場で阪神ジュベナイルフィリーズ行われます。

今年は、強いのか弱いのかどうにも掴みどころがないメンバー構成になった印象ですが、ポイントとなるのは、各ステップレースのレースレベル評価になるのでしょうね。

そこの評価を正確にやることができて、その上で展開の読みが噛み合うようだと、シンプルに的中に近づくレースだとは思うのですけれど、関東馬には試練となる長距離輸送もありますし、つまるところ2歳牝馬のGⅠらしく、予期せぬ紛れも十分に起こり得る。そんな想定はしておかないといけないのかもしれません。

それでは、早速、レースのみどころについて、簡単に解説していくことにしましょう。


阪神11R 阪神ジュベナイルフィリーズ


ということで、今日は各ステップレースのレベル評価からスタートしたいと思います。

まず、上位人気を形成するのは、アルテミスステークス組と札幌2歳ステークス組。そこにもみじステークス勝ちのウンブライルと、コスモス賞勝ちのモリアーナが絡む格好になっていますね。


個人的な評価では、アルテミスステークス組の優勢に変わりはないと考えていますが、レース内容自体は「直線での単なる瞬発力比べ」にほかならず、全体時計も飛び抜けて速いというわけではない点に、一定の注意が必要になるのでしょう。

レースで破壊力抜群の瞬発力を見せつけたラヴェル、リバティアイランドの上位2頭に関しても、ペースが流れた時に追走で削がれるパターンは、一応考えておかないといけない。そんな気がしています。


一方の札幌2歳ステークスですが、こちらも飛び抜けて全体時計が速いわけではなく、先日の京都2歳Sで2着と健闘したトップナイフが翌日の2,000m戦を2:02.5で勝っていることや、翌日に行われた古馬1勝クラスの勝ち時計よりも遅いことなどを考え合わせると、一昨年のソダシとユーバーレーベン、昨年のジオグリフのようなレベルにはないと考えるのが、大枠の考え方としては自然なのではないでしょうか。

実際にステップレースのコスモス賞では、札幌2歳ステークス2着のドゥアイズが、モリアーナに完敗を喫しているわけですしね。


そうすると、アルテミスステークス組と札幌2歳ステークス組の力がやや上という感じはありつつも、他路線組との差は絶対的なものとは言えず、展開次第で紛れも十分に起こり得る。今年のレースに関しては、そんな全体の構図になっているような気がします。

一頭分だけ外を回されたとか、ちょっと折り合いを欠いたとか、それくらいの小さなことでも、簡単に着順が入れ替わる可能性は十分。そう考えておいたほうがいいのでしょう。


それではここから、久しぶりに全頭評価をやっておきたいと思います。

2歳GⅠは、基本的に振れ幅の大きいレースになりがちですから、「ちょっと足りないかな」と感じる馬に関しても、一応の注意は払わないといけないでしょう。

昨年のラブリイユアアイズの走りが、そのことを私たち競馬ファンにしっかりと教えてくれている。そう思います。


①サンティーテソーロ

前2走は、マイペースの逃げに持ち込んで完勝。見た目の印象は地味でも、前走の勝ち時計が同日の未勝利戦を同じく逃げ切った、のちのデイリー杯2歳S勝ち馬オールパルフェをコンマ5秒上回っているという事実がある以上、ここでも軽視はできない。さらにこの鞍上なら、思い切った徹底先行策を仕掛けてくるはずで、あとは道中をマイペースで行けるのかどうか。そこがこの馬の命運を握っている。

②キタウイング
今年の新潟2歳Sは、全体のレース内容がかなりもの足りないものだったにもかかわらず、「負けた馬たちの次走での好走が目立つ」という不思議なレースであった。ここは相手関係的に厳しそうだが、レースでの意外性が発揮されれば、もしかするとノーチャンスとまでは言えないのかもしれない。

③シンリョクカ
新馬勝ち直後のGⅠ挑戦、関西への長距離輸送、乗り替わり、時計の短縮と課題だらけのこの馬であるが、瞬発力の質だけなら大きくは見劣らない印象もあるので、ワンチャンスあるとすればヨーイドンの瞬発力勝負になった時かも……。

④アロマデローサ
デビューからの2連勝は評価できても、相手関係にかなり恵まれた勝利であったことは否めず。前走は外枠の不利があったものの、完全な力負けという雰囲気もあって、ここでの巻き返しはさすがに期待薄だろう。

⑤モリアーナ
前走では、札幌2歳S2着のドゥアイズに完勝。距離もマイルくらいがベストと思え、ここでもポテンシャル面では確実に通用するだろう。残る課題は、関西への長距離輸送と、鞍上のエスコートの部分。厩舎力、鞍上の胆力を考えると、馬のポテンシャルの高さは認めつつも、どちらかと言えば不安のほうが先立ってしまう。

⑥ミスヨコハマ
前走は、ヨーイドンの瞬発力比べて位置取りの差を生かしての勝利。出世レース勝ちを評価する向きもあるが、レース内容自体は非常に中身が薄く、このメンバーに入ってひと泡吹かせるイメージは正直湧いてこない。

⑦ハウピア
前走の勝ち時計が、翌週のもみじSを勝ったウンブライルと同等なら、箸にも棒にもかからぬ存在とは言えないのだろう。しぶとさがあって距離延長にも対応できそうな走りをしているので、さすがに勝ち負けまでは厳しいだろうが、意外な健闘はあるのかもしれない。

⑧エイムインライフ
この馬、条件戦はいつでも勝てそうな走りをしているので、入着くらいまでならチャンスがありそう。ただしそれ以上となると、現状のパフォーマンスではさすがに厳しいか……。

⑨リバティアイランド
前走の敗因は、包まれて脚を余したこととハッキリ。馬群の中で上手に脚を溜める競馬ができて、そこから切れる脚を使えるこの馬のキャラクターは、このレースとの相性が良さそう。あとは、ペースが流れた時に追走で削がれないかがカギになるが、位置取りにこだわらず自分のペースを守って道中をやり過ごせるようなら、最後はこの馬らしい爆発的な末脚を繰り出して豪快に伸びてくるだろう。

⑩ミシシッピテソーロ
前走で底が割れてしまった印象のあるこの馬、調教後の馬体重も大きく減っていて、ここで一気に巻き返す理由を見つけるのはかなり難しい。今回に関しては、今回がGⅠ初騎乗となる原Jの手綱さばきに注目する手か。

⑪イティネラートル
これまで逃げた時に結果が出ているので、ここも徹底先行策を仕掛けて行くのか、それともサンティーテソーロにあっさりとハナを譲ってしまうのか、そこは見もの。岩田望Jのエスコート次第で、レース全体の結果が大きく左右される可能性もあるため、この馬がゲートを出てからどんな挙動を示すのか、そこから目を離すことはできない。

⑫リバーラ
前走はハナに行く策がハマった印象もあるが、重賞勝ちという結果には一応の評価が必要であろう。ただしここは、前走のような楽な展開は望み薄であるし、距離延長、相手強化も大きな課題として立ちはだかっているので、過度な期待まではしづらいのかな、と。

⑬ドゥアイズ
堅実な走りと並んでのしぶとさには目を瞠るものがあるこの馬、コレと言った持ち時計がないわりに、常に可能性を感じさせる不思議な馬ではある。新馬戦で退けたウヴァロヴァイトをものさしにすれば、ここに入ってもポテンシャルが足りないということはなさそうで、あとはいかに道中をロスなく立ち回れるか。そこがカギになってきそうな予感はする。

⑭ブトンドール
前走は、負けて強しの内容で、ファンタジーS組の中から好走馬が出るとすればおそらくこの馬だろう。ただし、血統面のみならず、回転の速いフットワークもまさに短距離馬のそれ。脚を溜めるのが上手なこの鞍上なら、直線で確実にひと脚は使えそうだが、鋭い脚で伸びてきて最後に止まる。そんなシーンを思い描けないわけでもない。

⑮ムーンプローブ
前受けして、そこからひと脚使えるのがこの馬のセールスポイント。切れる脚がない反面、スッといい位置を取ってそこでガッチリと折り合えるようだと、直線で一旦先頭のシーンくらいはありそうだ。ただし、切れ味の質では明らかに劣るので、できれば4コーナーである程度のリードをつくる形に持ち込みたいところだろう。

⑯ドゥーラ
どの位置でも折り合えて、そこから長くいい脚を使えるのがこの馬の長所。目立つ持ち時計こそないものの、未勝利勝ちの際に負かしたドゥラエレーデとの比較で言えば、ここでも比較上位の存在であることに疑いの余地はなさそうだ。あとは、距離短縮となるここで、中途半端な位置取りになって外々を回されると厳しくなるので、いかの道中のロスを最小限に抑えられるか。GⅠ初勝利がかかる斎藤新Jの手綱さばき次第で、この馬の命運は大きく変わる。そんな言い方ができるのかもしれない。

⑰ウンブライル
2連勝のレース内容が突出しているこの馬、走りっぷりの良さもひと際目を惹き、高い素質を感じさせるのは確か。ただし、前2走の相手関係を吟味すると、かなりレベルの低いところで戦ってきたという印象は否めず、スタートダッシュの遅さも気になる材料ではあるので、見た目の派手さとデータ上の数値に大きな乖離があるのも事実。その大きな溝を、秘めたる潜在能力の高さで埋めて見せられるのかどうか。そこから目が離せない。

⑱ラヴェル
過去2戦とも、明確に出遅れながらの豪快な差し切り勝ち。切れ味抜群の末脚を駆使できるという面においては、「この馬の素質の高さに疑いの余地はない」と断言してもいいように思える。ただしここで、急に器用な競馬ができるとも思えず、再度最後方からの競馬で差し届くのかと言えば、そう簡単に行かないことも確かだろう。それでもなお、一番後ろから自分の競馬に徹するという選択をするのか、それとも多少のリスクは覚悟しつつ促して位置を取りに行くのか、坂井瑠Jがそのどちらを選択するのかが明暗を分けることになりそうだ。


ということで、最後に個人的な結論を。


中心には、⑨リバティアイランドを推します。

土曜日の競馬を観ている限り、ペースが流れないと外からの差しが利きづらい馬場状態となっていましたから、ポテンシャルの高さ、馬群の中で折り合える器用さ、前が開いてからの加速力と、明日のレースを勝つために必要な能力をバランスよく備えているこの馬を上位に採るべき。最後はそう判断しました。

川田Jはコロナからの回復直後のレースとなりますし、この馬自身、スタートも速くはありませんから、それなりに死角はあると思いますけど、そんなリスクを一定程度考慮したとしても、確率論で言えばやはりこの馬なのかな、と。


2番手は、⑯ドゥーラ

この馬にとってマイルの距離は、ベストよりはやや短い印象もありますが、どの位置でも折り合えるセンスは大きな武器となりますし、未勝利勝ちの内容を振り返ってみれば、阪神でもそれなりに切れる脚を使えることも想像できますので、シンプルにこの位置に置いておくことにします。

できれば、道中で前に馬を置く形をつくれると理想ですから、斎藤新Jが落ち着いてその形に持ち込んでくれることを期待しましょう。


3番手は、⑬ドゥアイズ

ドゥーラを2番手に評価するなら、札幌での力関係からこの馬も上位に評価するのが妥当。そう考えます。

こちらは、馬群の中で脚を溜める競馬でさらに良さが出そうなイメージもありますから、まずはスタートを決めて、少しずつインに寄せていく競馬ができるといいですね。


4番手は、①サンティーテソーロ

こちらは、単純なポテンシャルの比較だと他馬に見劣ると思いますが、今の阪神芝コースのトラックバイアスを考えると、マイペースで行ければかなりいい線まで逃げ粘れる気がするのですよね。

もしも道中で他馬に競り込まれたりしたら、あっけなく惨敗するでしょうが、スタートセンスのいいこの馬がロケットスタートを切ってマイペースに持ち込むパターンは、一応ケアしておいたほうがいい。そう考えました。


なお、次点は⑱ラヴェルですが、この馬は十中八九出遅れると考えているので、イメージは昨年のナミュールなんですよね。

坂井瑠Jのことですから、それなりにうまくリカバリーはしてくるでしょうけど、外差し有利な馬場で一気に全馬を出し抜いた前走みたいな競馬にはならない。そう決め打ちすることにします。


例年のことではありますが、今年もこのレースは激戦になりそうな予感が漂っています。

考え方によっては、本番は来年とも言えるわけですから、騎乗するジョッキーたちには激しくもフェアなレースにしてもらって、来年につながる中身の濃いレースになればいい。そう願っています。

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