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第144回 中山大障害の見どころ

明日は中山競馬場で、暮れの大一番「中山大障害」が行われます。

個人的には、例年、有馬記念以上にワクワクするレースなんですけど、今年はメンバー構成がかなり小粒になってしまった分、率直に言って、昨年と比べワクワク感が半減してしまった印象も否めません。

ただその昨年は、レース前からケンホファヴァルトの大障害コースへの適性をいち早く見抜いていたこともありましたし、メイショウダッサイへの圧倒的な信頼感がある中で、結構な手応えを感じた状態でレースを迎えられた部分もありました。

よって、昨年と単純に比較すること自体、あまり意味がないとも言えますし、今年は予想を的中させる手応えに乏しい現状ではあっても、そのことを必要以上に悲観することはないのかもしれないな、と。

とはいえ、日頃から、障害レースの魅力発信に特に力を入れている当研究所。その威信にかけて、今年もポイントをしっかりと押さえたわかりやすい見どころ解説を、本気で目指そうとは思います。

では早速、レースの見どころを解説していくことにしましょう。

中山10R 中山大障害


まずは、今年もコースのおさらいから。この大障害コースを使用するのは年に2回だけで、春の中山グランドジャンプとの主な違いは、少しだけ距離が短いことと、最後の直線に置き障害が設置されていないことの2点。

バンケットを1回多く通過する点も違いといえば違いですが、その点に関しては、あまり神経質にならなくてもいいと思っています。レースシミュレーションを行うにあたり、距離と大障害コースへの適性を重視すべきである点も含め、大枠では、中山グランドジャンプと大きく変わらないアプローチでOKと考えていいのではないでしょうか。

ただし、最後の直線に置き障害がないことで、混戦になった時に平地力が勝負を分けることも少なくないので、この点だけは、必ず頭の片隅に入れておきたいところではありますね。


さて、今の障害界では、メイショウダッサイ、ケンホファヴァルト、タガノエスプレッソの3頭が主力を形成。

京都ジャンプステークス前の見どころ解説の際にも触れたのですが、昨年の中山大障害と、今春の中山グランドジャンプの1~3着が、組み合わせだけでなく順番までもがまったく同じだったことを踏まえれば、あえてこの評価に異を唱える必要はないと考えます。

そして、そのうちの2頭がいない今年のレースでは、タガノエスプレッソが中心的な役割を担うことはほぼ確定的ですから、この馬に対して、新興勢力を形成する馬たちと復活を期すオジュウチョウサンが、はたしてどこまで肉薄できるのか。そこが、今年の中山大障害最大の見どころになるのはないでしょうか。


ではここから、出走各馬の個性ができる限り皆さんに伝わるよう、一頭ずつ丁寧に短評を加えていく作業を今年もやっておこうと思います。

やっぱり、各馬の個性をちゃんと理解した上で、皆さんには馬券を買ってもらいたいですからね。


①ブルーガーディアン
 転厩と伴Jへの乗り替わりが大きな転機となり、今年に入ってついに初勝利を挙げたこの馬。関係者の不断の努力には頭が下がるし、9歳にして地力を強化していることもどうやら間違いはなさそう。
 たださすがにこのメンバーに入ると、強調材料に乏しい印象しかないし、伴Jが乗れないことも大きなマイナスになりそうで、無事完走が当面の目標になりそう。

②レオビヨンド
 前走でオープン特別を快勝したこの馬、もともとスタミナは豊富だから、大障害コースに替わって、さらなる上昇を見せる可能性も十分だろう。
 ただしこの馬は、ギアの上げ下げが苦手なこともあってか、平沢Jでないと力の8割も出せないという超クセ馬。その点、植野Jは腕達者なジョッキーで、平沢Jの負傷で急遽の代打となった春の中山グランドジャンプでは、臨機応変な騎乗でタガノエスプレッソを馬券圏内に導くなど、実績も十分なのだが、じゃあこの馬でも平沢Jと同じようにうまくエスコートできるかと言えば、さすがにそれほど簡単な馬ではないような気が……。

③オジュウチョウサン
 昨年来、年齢的な衰えを隠せないかつての絶対王者ではあるが、前走のレース内容を見る限り、昨年の秋や今年の春に比べると、体調面がいくらかは良化している印象が強く残った。
 何より、コース経験の豊富さは武器になるだろうし、とてもとても全盛期の走りは期待できない現状であっても、今年のメンバー構成なら相対的な力関係の部分で、勝ち負けに加わってくる可能性まで視野に入れておく必要がありそうだ。

④タガノエスプレッソ
 このメンバーが相手なら、過去の実績NO.1は疑う余地なし。強い相手とも互角に戦える一方、弱い相手に簡単に取りこぼすタイプでもないから、ここでの能力的な比較では、圧倒的な優位性があると考えていいだろう。
 一方で課題は、飛越の面で全幅の信頼を置きづらいこと、本来はスピードタイプでこの舞台が最適とまでは言えないこと、前走のレースぶりからいくらかは年齢的な衰えがありそうなことの延べ3点か。どれも致命傷になるほどのウィークポイントになるとは言わないが、昨年のメイショウダッサイのような信頼感があるわけではない点を、最終的にどう評価するか。そこが、まさにカギだろう。

⑤ラヴアンドポップ
 この馬、これほどまでに順調にレースを使えない厳しい状況下で、重賞連勝とは恐れ入ったというほかない。さすがは、全盛期のアップトゥデイトと、一騎打ちを演じただけのことはある。
 この戦績を見れば、ここでも能力が足りないということは絶対にあり得ないし、本来なら五十嵐Jが乗れるに越したことはなかったが、草野Jで重賞を勝てるくらいの馬だから、白浜Jへの乗り替わりがただちに致命傷になるとも思えず……。
 ならば、あとは初の中山と大障害コースが合うのかどうか、すべてはそこにかかっていると言っていい。

⑥マイネルプロンプト
 約2年ほど前までは、バリバリに一線級を張っていたこの馬。当時の力を発揮できれば、当然、ここでも通用の力はある。
 ただし近走は、そのレースぶりから年齢的な衰えが顕著に窺えるので、いかに相性抜群の森一馬Jに手が戻るといえども、ここで一気の巻き返しを期待するのはさすがに酷か。立ち回りのうまさを生かせば、見せ場くらいは作れそうだが、、、

⑦アサクサゲンキ
 この馬は、入障後着実に力を付けてきて、特に今年に入ってからは、もともとの安定した先行力に加え、簡単には崩れない精神力の強さを身に着けた印象。今年のメンバー構成なら、走破圏内に加わってきてもおかしくない実力は、すでに備わっていると考えるべきだろう。
 ただし、初の一線級相手となった今年秋の東京ハイジャンプが、上位3頭に完全な力負けを喫した格好ではあるし、元来、スピードタイプで距離が伸びていいとはお世辞にも言えないのだから、その点でも、このレースへの適性に大いなる疑問を抱かせるのもまた確かではある。

⑧アースドラゴン
 この馬、道中で無理をせず自分のペースでレースを進めれば、平場のオープンなら通用してもいい力は持っている。
 ただしここは、今までとはまったく相手が違うし、大障害コースのレースに出走するにあたっての乗り替わりも、この上ないマイナス材料。つまり今回に限っては、完走すれば100点という評価でいいのではないだろうか。

⑨ベイビーステップ
 キャリアを積むごとに強くなっていることを実感させるこの馬、もともと豊富なスタミナを内包している分、「ここでも、もしかして……」くらいの希望を持てる位置にはいると言ってよさそう。
 ただ、前走は展開に恵まれた部分が大きく、そこから相手が一気に強化し、加えて前半から前がガチャガチャしそうなここで、さらにパフォーマンスを上げられるイメージはちょっと湧きづらい。あとは、差す競馬もできるこの馬で、伴Jが臨機応変な騎乗を見せられるかどうか。それ次第では、ここでもノーチャンスではないのかもしれない。

⑩ブラゾンダムール
 この馬は、なぜか中山コースでしか走らない超個性派ではあるが、オープンでは3着が最高成績で、さすがにこのメンバーに入ると、胸を張れるほどの材料に乏しいのが現状ではあるだろう。
 ただしこの馬は、後ろからじっくりと脚を溜めてレースを進められれば、終い確実に脚を使えるタイプなので、各ジョッキーの意識が極端に前がかりになると、最後の最後に漁夫の利が転がり込んでくる可能性は残されている。そんな気がしてならない。期待しすぎはよくないが、もし人気薄の一発があるとすれば、今年はこの馬なのではないだろうか。

⑪キタノテイオウ
 入障時からセンスあふれる走りを見せていたこの馬だが、その後の成長がひと息。トップジョッキーが騎乗した平場のレースでも通用していないのだから、このメンバー相手に小野寺Jの初騎乗では、さすがに強調材料に乏しいといわざるを得ない。

⑫ハルキストン
 この馬は、自分の型にハマると強い相手にも善戦できる個性派で、難波Jとの相性が良く見える点には、少しだけ期待してみたい気持ちもある。
 ただ、4コーナーの手応えから「コレはやったでしょ!」と思わせておきながら、直線であっさりと失速してしまった前走のレースぶりにはどうしても不満が……。さらに相手が強化するこのレースで、前走から一気にパフォーマンスを上げてくるところまでは、さすがに期待しづらいか。

⑬ビレッジイーグル
 もともと福島専用だったこの馬が、前走、中山コースで善戦したように、ここにきて確実に力を付けてきている点は率直に評価したい。
 ただ、まだまだスタミナ面に課題が残る現況を踏まえると、このメンバーに入ってしまえば、「テレビ馬」的な位置に甘んじるのは仕方のないことかもしれない。

⑭シンキングダンサー
 かつては一線級相手にも通用していたこの馬だが、昨年のこのレース以降は、明らかな衰えを感じさせるレースを続けている。
 大障害コースの経験が豊富な点は強調材料になるし、前走で復調の兆しを見せていたことも悪い材料ではないが、「いい脚は一瞬」というタイプの馬に大外枠かつロスの多い草野Jでは、全盛期でもどうなのか、と。地力の高さは認めても、過度な期待まではさすがに……。


これらを踏まえ個人的な見解をまとめると、内から順に、③オジュウチョウサン、④タガノエスプレッソ、⑤ラヴアンドポップ、⑩ブラゾンダムールの4頭を上位評価にしたいと思います。

ただ率直に言って、この4頭それぞれに死角が少なくない現状ではありますから、伏兵が食い込む余地がまったくないとは考えていません。その反面、伏兵陣目線で言えば、いわば敵失待ちの状況であることも確かではあって、確率が低いわりに穴人気しそうな伏兵馬を、あえて身銭を切って積極的に狙う理由もないのだろうと考えます。

ならば、人気上位3頭+ブラゾンダムールという評価でも仕方がないですし、もしブラゾンダムールが激走してくれたら、配当が一気に跳ね上がるという状況が出来上がっているだけでも満足すべき。そんなふうに思います。


なお、上位4頭にあえて順番をつけるとすれば、④タガノエスプレッソ、⑤ラヴアンドポップ、③オジュウチョウサン、⑩ブラゾンダムールの順であると考えていますが、例えばタガノエスプレッソが何かをやらかすとしたら、それは間違いなく飛越のところだと思いますし、ラヴアンドポップには、初コースでまったく力を発揮できないリスクがあることも否定はできません。

さらに、もしタガノエスプレッソとラヴアンドポップに力を出し切られてしまったら、今のオジュウチョウサンではおそらく太刀打ちできないでしょうし、ブラゾンダムールに至っては、西谷誠Jのエスコートの部分も含め、何から何まで噛み合わないと苦しいという事情があります。

つまり、死角のツボが各馬バラバラなので、あえて順番を付ける意味があるのか、という部分には、ちょっと疑問があったりもするんですよね。


ということで、まとめとしてどうなのかというのはありますけど、今年は上位評価とした4頭に注目して、レースを楽しめたらいいな、と。

オジュウチョウサンの復活劇がここで完結するためには、決して低くはないハードルがあると思っていますが、このメンバー構成なら、可能性は当然ゼロではありません。全体のレースレベルが下がらないと、おそらく奇跡は起こらないのでしょうけど、筋書きのないドラマとしては、「復活!オジュウチョウサン!」という結末があっていいのかも、とは思ってしまいますね。

なにはさておき、全馬無事に、とひたすら祈りつつ、スタートの時を待つことにしましょう。読者の皆さんの馬券が的中することも、これと併せ、心から願っていようと思います!

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