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第84回 皐月賞/第29回 アンタレスSのみどころ


中山11R 皐月賞


今年の皐月賞は、先週の桜花賞に輪をかけて多くの馬に好走のチャンスがある大混戦の様相を呈しています。

桜花賞発走時の阪神芝コースもそうでしたけど、展開やレース時のトラックバイアスによって結果はどうにでも転びそうなメンバー構成となりましたので、レース直前まで馬券検討をする時間のある方は、できるだけギリギリまで引っ張ってから買い目を決定するのが得策ではないでしょうか。


次に各馬のポテンシャル比較ですが、今年はこのレースが初めての直接対決となる馬の組合せもありますし、ここに至る有力馬の臨戦過程を振り返ってみても、ドスローあり、ドン詰まりあり、ポカありと、正確な比較がとても難しい状況にあると言っていいのかな、と。

そんな中、当研究所が現3歳世代中距離部門におけるパラメータホースとして引っ張り出してきたのが、先週、福島の自己条件戦ひめさゆり賞を辛勝したキープカルムです。

このキープカルム、ベストディスタンスが1,800~2,000mで、どちらかというと1,800mのほうが合っているかなという印象もありますが、どちらの距離でも毎回自分の力をほぼ出し切ってきたという意味で、パラメータホースとしてうってつけの存在と言える気がしています。


ではここから、キープカルムと皐月賞出走馬の対戦成績を振り返っておくことにしましょう。

キープカルムのこれまでの戦績は、先週の自己条件勝ちを除くと下記のとおりとなります。

新馬2着(ジャンタルマンタル1着)
未勝利1着(ウォーターリヒト3着)
京都2歳ステークス5着(シンエンペラー1着、ダノンデサイル4着、コスモキュランダ8着、 ホウオウプロサンゲ9着、ルカランフィースト13着)
つばき賞2着(メイショウタバル1着)
若葉ステークス3着(ミスタージーティー1着、ホウオウプロサンゲ2着)


さて、どうでしょう、パラメータホースとして、彼はかなりいい仕事をしているように見えますよね。

もしもキープカルムが皐月賞に出走できたと仮定するならば、だいたい半分くらいの馬を負かしてくるであろうというのが当研究所の想定ではありますので、ひとつの基準として、キープカルムをレース内容で圧倒するくらいの力がないと、今年の皐月賞で好勝負に持ち込むのは難しい。そんな見立てでいいのかな、と。


ではここから、ここまでのステップレースをひとつずつ丁寧に振り返って行くことにしましょう。


まず最初は、昨秋の京都2歳ステークスから。

ここは、シンエンペラーが苦しいレースを強いられながら馬群を捌いて勝ち切ったわけですけど、ダノンデサイルはロスの多い立ち回りから最後脚を余しての4着と、両馬ともに高いポテンシャルを示すレースではありました。

ちなみコスモキュランダとルカランフィーストは本格化前のレースであり、ホウオウプロサンゲはハナに行く自分のスタイルに持ち込めなかった中での敗戦でしたので、この3頭の着順に関しては、過度に神経質になることはないのかもしれません。


続いては、朝日杯フューチュリティステークス

ここは、ジャンタルマンタルが早め先頭から押し切るという内容で完勝。エコロヴァルツが最内枠から出て苦しい立ち回りを強いられながらも2着に健闘するという内容でした。

ただしこのレースの勝ち時計は、前週の阪神ジュベナイルフィリーズと比べ明確に遅かったわけですし、ここで内容の濃いレースをしていた牝馬のタガノエルピーダが、チューリップ賞に出走して桜花賞出走の権利すら取れなかったという事実からしても、4着ジューンテイク、5着タガノデュード、6着サトミノキラリのその後のレースぶりを持ち出すまでもなく、レースレベルはかなり低調だったと結論づけていいのではないでしょうか。


次に、ホープフルステークス

ここは、牝馬のレガレイラが勝負どころから馬場の大外を通して完勝し、2着にはインを上手に捌いてきたシンエンペラーが入線。続いて外目から長く脚を使ったサンライズジパングが3着、インを捌けずドン詰まったミスタージーティーが5着、中団から流れ込む形となったシリウスコルトが6着という結果でした。

このレースに関しては、勝ち馬レガレイラの力が完全に一枚抜けていて、矢作厩舎の2頭、シンエンペラーとミスタージーティーがそれに続くというシンプルな評価でいいように思います。


続いて、京成杯

ここはダノンデサイルが正攻法のレースで完勝し、2着にはどうにか馬群を捌いて伸びてきたアーバンシックが入線。全体時計は概ね標準レベルにとどまったものの、この上位2頭に関しては、この先の伸びしろを存分に感じさせてくれる非常に内容の濃いレースをしていたとみていいでしょう。

お次は、きさらぎ賞

ここは超スローから上がり勝負となった中で、デビュー戦同様に出遅れて直線で大外から追い込む形になったビザンチンドリームが、速い上がりをもろともせずに全馬をなで斬る豪快な勝ち方を披露。

ただし相手関係が軽かったことと、ビザンチンドリーム自身のレースぶりがあまりに大味だったことを踏まえた時に、はたしてこのレースの結果がどれだけGⅠ本番に直結するのか、やや判断が分かれることになりそうです。


今度は、共同通信杯

ここは、ドスローからの上がり勝負になった分、各馬のパフォーマンスをどの程度評価すべきなのかが非常にわかりにくい、参考外と言ってもいいようなレースでした。

正攻法のレースで勝ち切ったジャスティンミラノと、課題を持ってレースに臨み一応の結果を残した2着ジャンタルマンタルの評価を落とすべき理由は特にないのですけれど、かと言って先々に向け大きな収穫があったのかと言えば、それもどうかなというレース内容ではあったのかな、と。

ちなみにこのレースで逃げて3着に残ったパワーホールは、札幌2歳Sでセットアップ(朝日杯FS7着)に完敗、前述の京都2歳ステークスで見せ場も作れなかったくらいでしたので、この馬に先着を許したエコロヴァルツミスタージーティーに関しては、それぞれに言い分があるにせよぶっちゃけあまり印象が良くないですね。


そして、地味ながら無視はできないすみれステークス

ここは、実質一戦一勝でレースに臨んだサンライズアースが大外をひとマクリで完勝。2着には朝日杯FS4着のジューンテイクが入りました。

このサンライズアース、実に大物感がある勝ちっぷりでしたので、ここへ至る臨戦過程や豪快なレースぶりを踏まえるならば、未知の魅力にあふれた一頭とみることができるのではないでしょうか。

この馬、現状のイメージでは菊花賞向きの印象ですが、かつてこのレースを勝って後にダービー馬となったフサイチコンコルドとどこか被るところがありますので。


今度は、弥生賞

ここはひとつ前のレース、中山2,000mで行われた1勝クラス戦で好時計の2着と好走していたコスモキュランダが、大外から自ら動いて行く強気な競馬で完勝、好位から常識的な競馬をしたシンエンペラーが2着入線という結果になりました。

ただしこのレース、複数の人気馬にポカがあったようにも見えただけに、はたしてこの結果を額面通りに受け取って良いのか、かなり判断に迷うレースであったようには思われます。


最後は、若葉ステークス

ここはインのポケットに収まって完璧な立ち回りを見せたミスタージーティーが完勝し、注文をつけて逃げたホウオウプロサンゲが最後までしぶとく喰い下がっての2着という結果に。

2着ホウオウプロサンゲのほうは、ハナを切る競馬で本領を発揮し、アイビーステークスでレガレイラに先着した実力を見せつける好走劇となりましたが、その分、勝ったミスタージーティのレースぶりにもの足りなさを覚えたのも確か。3着キープカルムとの差を考えても、過大な評価は控えたくなるレースだったようにも思われます。


ここまで、いかがでしたでしょうか。

例年であれば、これだけ丁寧にステップレースを振り返ってみれば、その中から必ず何らかの明確なヒントが見つかるものなのですが、今年はコレと言えるだけのものがどうしても見つかりません。

この点は、桜花賞前の状況と大きく変わりないとも言えそうですね。


さて、ここで展開についても検討しておくことにしましょう。

逃げ候補は、内からメイショウタバル、シリウスコルト、ホウオウプロサンゲの3頭。

枠の並びと出脚の鋭さからして、最初に主導権を握るのはメイショウタバルでしょうが、矢作調教師が逃げ宣言しているホウオウプロサンゲが押して押して競りかけていくパターンもありそうで、そこをどう読むかはこのレースを予想する上での重要なカギとなりそうです。

それからもう一点、ここはサンライズアースのM.デムーロが向正面マクリを敢行してきそうなイメージがあって、コスモキュランダあたりがその動きに呼応すると、仕掛けの早い消耗戦となるパターンも十分に考えられます。

そう考えると、いずれにしても先行馬有利のペースにはならない公算が高いと言えますので、メイショウタバルの立場からすると、「変に競られるくらいなら、ペースを緩めることなく後続を引き離して逃げてしまおう」と考えてもおかしくはありません。

このあたりに関しても、勝負の分け目になることは間違いありませんので、競馬ファンの側がそこをどう捉えるのか、腕の見せどころと言えばそうなのかもしれないですね。


ということで、ここからまとめに。


中心には、⑯ダノンデサイルを推すことにしました。

この馬に関する当研究所的評価では、京都2歳ステークスのレース内容からシンエンペラーよりもこちらの能力が上とみているんですよね。

前走の京成杯でも、最後の直線で外に切れるシーンを見せつつの完勝。加えて、調教映像を見ても今は京成杯の時以上にデキが充実しているようにも見えますので、ある程度ペースが流れて外枠の不利が相殺されるようなら、この馬で十分に好勝負に持ち込める。そう判断しました。


2番手は、⑨アーバンシック

ダノンデサイルを高く評価するなら、当然こちらも……とはなります。

本質的にはダービー向きの馬でしょうが、ここが仕掛けの早い消耗戦になると予想するならば、不器用なこの馬にも差し込みのチャンスは巡ってくる。そう考えています。馬のスケール感だけなら、ダノンデサイル以上と評価してもいいくらいですし、、、


3番手は、⑩レガレイラ

ホープフルS組からは、この馬一択という評価でいいように思います。

ぶっちゃけ、ルメールJの騎乗なら素直にこの馬から入るつもりだったのですけれど、北村宏Jに乗り替わることを踏まえるならば、どうしてもドン詰まり等々のリスクを考慮に入れざるを得ませんので、位置としてはこのあたりが妥当なのかな、と。

もちろん、道中をスムーズに捌ければこの馬が勝ち切るシーンも十分にありそうですけど。


4番手は、⑮サンライズアース

当研究所的には、この馬の素質は相当に高いと評価しているんですよね。

前走のすみれステークスでは、後半1,000mを57秒台で走破しているわけですし、しかもそれをデビュー2戦目、かつ取消明けのレースでやってのけるのは尋常ではないと考えるべきでしょう。

ただ、これだけ不器用なレースぶりを見せつけられると、ジョッキーの仕掛けどころ次第で大敗もあるという評価にならざるを得ないのですけれど、たとえその点を考慮に入れたとしても、選外とするにはあまりに惜しすぎる。そう判断して、この馬を最後のひと枠で拾うこととしました。


その他、メイショウタバルに関しては、展開次第でこのレースを勝つ資格のある馬だと考えています。ただどの角度から見ても、今回に限ってはプレッシャーのかかる厳しいレースにはなりそうですので、サンライズアースとの比較でどちらを上に採るか最後の最後まで悩んだのですが、最終的に断腸の思いで選外扱いとしました。

ジャンタルマンタルは、朝日杯のレースレベルと距離適性を考慮して、ジャスティンミラノは、激流を経験するのが初めてになることと共同通信杯の完勝を額面どおりには受け取れないと判断し、どちらも迷わず消しと判断しました。

ビザンチンドリームは、当研究所としても高く素質を買っている馬ではありますが、関東への長距離輸送、出遅れ必至のゲート癖、終い一手の脚質、折り合い面の難しさと、今回に関してはあまりに悪い条件が揃い過ぎていますからね。もちろん、ハマれば昨年のソールオリエンスのような突き抜け方をするイメージも湧いてはきますけど、その少ない確率に賭けるのはあまりにリスクが大きすぎる気がしています。

シンエンペラーは、対ダノンデサイル、対レガレイラでどちらも劣勢という評価になりますので、評価順としてはせいぜい6,7番手あたりまで。そう考えています。


阪神11R アンタレスステークス


ここは、ダートの中距離重賞としてはかなり小粒なメンバー構成となりました。

そんな中、前が残る今の阪神ダートで先行馬の少ない組合せになっては、多少力が劣る馬でも前半の位置取りの差でなんとかできてしまう可能性も十分にありそう。大枠としてはそんな見立てとなりそうです。


展開的には、十中八九テーオードレフォンの単騎逃げと考えるのが自然でしょう。

この馬なんかも、ガチンコ勝負ではやや厳しい相手関係のように思われますが、前半を楽なペースで行けるようなら残り目があっても驚けませんので、いずれにしても展開の読みが正確でないと、箸にも棒にも掛からぬ結果になってしまいそう。そんな気がしています。


と言いつつも、ここは地力を信頼して①ハギノアレグリアスを中心視することにしました。

実際、どの角度から考えてもこの馬の地力が一枚上なのは確かですので、仮にインで包まれて展開負けを喫することがあったとしても、なんだかんだ馬券圏内は確保してきそう。そんな気がするのですよね。

もしも望外にペースが流れれば、圧勝まであり得る力関係だと思いますので、最後は展開重視からこの馬の地力を信頼するほうに舵を切りました。


2番手は、⑯スレイマン

この馬にとってここは枠の並びが非常に良く、ゲートが決まれば番手外の位置からテーオードレフォンを大名マークできるのではないかと考えます。

前々で脚が溜まれば、この馬の力を100%出し切れるはずですので、ここはようやくめぐってきた重賞勝ちのチャンスと言えるかもしれません。


3番手は、⑦サヴァ

この馬には、久々のダートがどうかとか、千八の距離がどうかとか、いろいろと課題がついて回るのは事実。

ただ、この馬の長所は意外性なのであって、ユニコーンS2着と六甲ステークス勝ちの実績があれば、ここで力が足りないということはないでしょうから、ならば「この小粒なメンバー構成となった中で、この馬の一発に賭けてみる」という選択があってもいいのではないか、と。


4番手は、⑨ラインオブソウル

この馬の好走パターンは、阪神ダート千八で前々の位置をスムーズに取り切れた時。

今回はそのパターンにハマる可能性が十分ですので、地力不足は承知の上、最後のひと枠で拾うという判断ならアリなのではないかと考えました。


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