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中山大障害の見どころ


明日は中山競馬場で、暮れの大一番、中山大障害が行われます。日頃から、障害レースの魅力発信に力を入れている当研究所としては、ポイントをしっかりと押さえた、わかりやすい見どころ解説を目指したいですね。


まずは、コースのおさらいから。この大障害コースを使用するのは、年に2回だけ。春の中山グランドジャンプとの違いは、少しだけ距離が短いことと、最後の直線に置き障害が設置されていないことです。

レースシミュレーションを行うにあたって、距離と大障害コースへの適性を重視すべきである点は、中山グランドジャンプと大きく変わらないのですが、最後の直線に置き障害がないことで、混戦になった時に平地力が勝負を分けることも少なくないのですよね。この点は、必ず頭の片隅に入れておいたほうがいいでしょう。


さて、今年のメンバーをざっと見渡すと、コース実績で上回る実績馬と、勢いのある上がり馬の戦いという構図になっています。

ただし、コース実績のある組は、基本、オジュウチョウサンの高い壁に跳ね返されてきた馬ばかりで、一方の上がり馬は、大障害コースの経験がない点がどうか。そのことが、面白くもあり、難しくもある今の状況をつくり上げているのかなと…。

少なくとも、前評判どおりオジュウチョウサンとアップトゥデイトの完全な一騎打ちとなった3年前のこのレースのような結果になることはない。そう断言してもいいと思います。結果的に人気馬同士で決着することはあっても、基本は混戦想定でいいのではないでしょうか。


ではここから、出走各馬の個性ができる限り皆さんに伝わるよう、一頭ずつ丁寧に短評を加えていこうと思います。やっぱり、各馬の個性をちゃんと理解した上で、馬券を買ってもらいたいですからね。


①シンキングダンサー
 この馬の長所は、飛びが安定していて、道中の立ち回りが器用なこと。ここまで10戦連続して4着以内という安定感が、最大の魅力であると言えるだろう。大障害コースにも不安はないし、絶好の1番枠を引いたとなれば、好走条件が揃ったようにも見える。
 問題は、休み明けと詰めの甘さ。正直、このレースにぶっつけというのは多少の割引が必要だし、最後の直線に置き障害がないのも、この馬にとってはマイナスだろう。さらに昨年のこのレースでは、石神Jがコースロスのない神騎乗を見せたにもかかわらず、直線でメイショウダッサイに競り負けたのだから、ここで逆転してくるイメージはあまり湧いてこない。

②ヒロノタイリク
 この馬には、難波Jでないと力を出し切れない難しさがある。その点、主戦ジョッキーの連続騎乗となるのは大きなプラス。ただ、純粋にポテンシャル面で足りなそうなのと、大障害コースでパフォーマンスが上がるタイプにも見えず、やはり大きな期待まではしづらい。

③ケンホファヴァルト
 地味に力をつけてきている印象のこの馬、致命的な不利が重なった前走でも3着を確保したくらいだから、気性面に課題はあっても、相手なりに走れそうな雰囲気は十分に備えている。また、経験こそないものの、長距離戦が向きそうな点も大きなプラス材料になるだろう。
 問題は、実績面ではっきり見劣る点だが、ここは内枠から無理せずいい位置を取れそうだし、今年のメンバーなら、そこそこ戦えそうなイメージも十分。ダークホースは、間違いなくこの馬。

④アズマタックン
 障害界一のムラ馬も、ここ最近は、これといった見せ場のないレースが続いている。このメンバー、このコースだと、最大限ハマっても掲示板がいっぱいいっぱい。そんな評価が妥当だと思う。

⑤ヒロシゲセブン
 この馬の長所は、折り合い面に不安がなく、終いに確実に脚が使えること。秋2走の内容も上々で、ここにきて、確実に地力を強化してきている様子をはっきり見て取れる。
 ただ、ここ2走は、高田Jが完璧な騎乗をした結果とも言え、さらなる上昇は望み薄。今なら、さらにメンバーが強化したここでも、大崩れすることはないのかもしれないが、他馬の自爆がない限り、さすがに勝ち負けまでは厳しいのではないだろうか。

⑥ストレートパンチ
 長所は、出脚がよく前に行けること。積極的な伴J騎乗あることも考慮すると、今回はハナにこだわるレースをしてくる可能性もあるだろう。
 ただし、スムーズに運べたとしても、ここで勝ち負けできるほどの地力はないので、馬券云々よりも、展開面でのカギを握る馬の一頭という位置づけでいいのだと思う。

⑦シゲルピーマン
 確実な末脚が売りのこの馬だが、展開がハマっているはずの前走でも、終いの伸びは平凡。ここは、いつもどおり後ろから行って、下がってきた馬を一頭一頭拾っていくようなレースになりそうで、無事完走して入着賞金を取れれば100点というイメージでいい。

⑧フォワードカフェ
 障害入り後、前走ではじめて馬券圏内から外れたこの馬であるが、落馬はとばっちり的な面が大きく、割り引く必要はない。基本、飛びは安定しているので、大障害コースにも十分に対応はできそうだ。
 ただし、東京ジャンプS2着時くらいの走りでは、このメンバー相手に勝ち負けするのは難しいし、石神Jもここが落馬負傷明けの復帰戦。穴人気しそうなムードもあり、ノーチャンスとは言わないまでも、あまり積極的に狙いたいとは思わない。

⑨ビッグスモーキー
 3走前までは、危険な人気馬を地で行くタイプであったが、ここ2走は、はっきり地力強化をうかがわせる好内容。器用さを生かせる中山替わりも、はっきりプラス。大障害コースも無難にこなしてきそうで、ここは善戦以上があっても驚けないだろう。
 ただ、詰めが甘いのは相変わらずだし、最後の直線に置き障害がないのもマイナス。見せ場はつくってきそうな予感はあるが、馬券圏内に突入してくるには、他馬の自爆がないとさすがにちょっと厳しいかもしれない。

⑩ケイブルグラム
 ただいま6戦連続連対中のこの馬、ここのところの地力強化には目を瞠るものがあり、スタミナタイプで距離に不安がないのもいい。
 ただ、基本は飛びが低いタイプで、大障害コースはおろか、固定障害のコースを使うのも、入障初戦となった中山の未勝利戦11着以来。スタートが遅く、序盤は最後方に近い位置取りになりそうなのもマイナスで、ここでさらなる躍進があるかというと、さすがにちょっと期待薄の印象も。

⑪タガノエスプレッソ
 前走で、ついにオジュウチョウサンの連勝を止めたこの馬。機動力があって、自在なレースができるという長所を、平沢Jが最大限に生かし切った結果だろう。レースぶりから、確実に力をつけてきている印象もあって、ポテンシャルだけを言えば、ここでも3本の指に入る存在であるとは言えそうだ。
 ただし、この馬の最大の長所は、置き障害をスピードを落とさずにスイスイと飛んで行くところ。反面、固定障害になると、こなしてはいるがややスピードが落ちるところもあって、スムーズさを欠くシーンも少なくない。大障害コースへの適性には?が付くし、春の京都ハイジャンプのレースぶりなんかを見ていると、はっきり距離延長もマイナス。地力強化は認めても、これだけ厳しい条件が揃っていると、さすがに馬券は買いづらい。

⑫ブライトクォーツ
 昨年の2着馬で、切れないけどバテないのが最大の長所。この点、大障害コースへの適性では、他の追随を許さないものがある。この馬が100%の力を出し切れば、勝ち切るシーンも十分だろう。
 ただし、とにかく出脚が鈍いし、インでソツなく立ち回れる器用さもない。基本は乗り難しいタイプだから、成績にムラがあるのもうなずける。しかも、昨年は鞍上熊沢Jでの好走。最近の西谷Jに多くを求めるのは酷であり、馬のポテンシャルは高くとも、それを引き出せるかどうかは完全に別の話。今年のレースでは、正直、この馬の評価がもっとも難しいと言える。

⑬セガールフォンテン
 平場のオープン戦でも、まったく通用していないのが現状。ゴーカイを父に持つことが、唯一、目を惹く話題であると言えるのかもしれない。

⑭メイショウダッサイ
 昨年のこのレースでは3着に敗れたこの馬だが、今年の春はさらに地力を強化し、もし、年末にオジュウチョウサンを力でねじ伏せるなら、この馬をおいてほかにないとまで思わせる、圧巻のパフォーマンスを見せていた。さらにコース適性にも不安はないから、順当なら、この馬を最上位評価にするのがシンプルな帰結だと思う。
 問題は、前走時のパドックでは気配が薄く、明らかに春の好調時のデキがなかったこと。ただ、そんな状態でも、ここで穴人気するヒロシゲセブンを寄せつけなかったわけだから、たとえ絶好調でなくとも、このメンバーなら負ける要素は少ないと考えていいのかもしれない。

⑮ナリノレーヴドール
 当時は未勝利戦だったし、さらに相手は初障害戦だったのだが、この中山でタガノエスプレッソに先着した実績は、それなりに評価してもいいだろう。
 ただ、展開がハマり、失礼ながら小野寺Jらしからぬタイトな立ち回りができた前走でも、4着が精いっぱいだったわけだから、さすがにこのメンバー相手にどうこうは言えない。

⑯スズカデヴィアス
 平地力があって、入障後もセンスあるレースぶりを見せるこの馬。距離延長は悪くないし、キャリアが浅い分、まだまだ大きな上積みが見込める。
 ただ、ここで好勝負できるくらいなら、前走の貧弱なメンバー相手に取りこぼすことはないはず。未知の魅力はあっても、さすがに大きな期待まではかけづらい。


まとめると、中心は⑭メイショウダッサイ。鞍上、コース適性、相手関係のどれをとっても、負ける要素はほとんどないでしょう。問題は体調面だけで、パドックで馬体に張りが戻っているようなら、この馬を全面的に信頼したいですね。

相手には、実績不足を承知で、あえて③ケンホファヴァルトを狙ってみます。前走の内容から、力を出し切れればヒロシゲセブンよりは必ず前に来るはず。鞍上、距離適性、平地力の高さを加味すれば、ここでも十分に好走可能と見ます。

3番手は、⑫ブライトクォーツ。すべては鞍上次第とも言えますが、前走のように自然体で乗ってきたら、上位争いは必至でしょう。正直、かなり取捨に迷いましたが、馬のポテンシャルを考えると、さすがに4番手以下には落とせないという判断ですね。

人気の⑪タガノエスプレッソは、コース適性が低いと見て、思い切って消します。その他、①シンキングダンサー、⑤ヒロシゲセブン、⑧フォワードカフェ、⑨ビッグスモーキーあたりに、馬券圏内ワンチャンスくらいありそうですが、個人的には手を広げるという選択はしません。

何はともあれ、年末の総決算となるレースですから、まずは無事に、そして見ごたえのある激しいレースになることを期待したいですね。

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