見出し画像

第74回 朝日杯FSの回顧

いや~、今週もビックリするほどペースが流れましたね。

結果だけを見れば、「相対的にハイレベルだった前哨戦で最も内容の濃いレースをしていた2頭が、シンプルにワンツーフィニッシュを決めた」という形にはなりましたが、その内実は、「前哨戦とは異なる超ハイラップのレースになっても、結果は変わらなかった」とも言えるでしょう。

つまり上位の2頭は、どんなレースになっても結局は力上位だった。そんな言い方ができるのかもしれません。

では、早速、レースを振り返っていくことにしましょう。

阪神11R 第74回 朝日杯FS


レースのラップは、12.4 - 10.4 - 11.3 - 11.6 - 12.1 - 11.7 - 12.0 - 12.4。

この構成は、馬場状態こそ先週とは違っていましたけど、阪神ジュベナイルフィリーズの12.1 - 10.5 - 11.1 - 11.5 - 11.8 - 11.1 - 12.5 - 12.5というラップ構成と、かなりの部分で酷似しています。 

つまり、序盤からスプリント戦並みのえげつないラップを刻んだ上に、仕掛けも早い消耗戦となったわけですから、本来なら中団からの差しがズバッとと決まってもよさそうな流れになっていた。そうは言えそうです。

にもかかわらず、結果として「差し・差し決着」にならなかったのは、圧倒的にイン有利なトラックバイアスが、勝敗を大きく左右するほど決定的な役割を果たしたから。つまり1,2着馬の差は、「極端なトラックバイアスを味方につけられたかどうかの差だけ」と見ることもできるのではないでしょうか。


勝ったドルチェモアは、パドックの様子を観ていても、一戦ごとに着実な成長を見せている感じでしたね。

ただ、スローからの上がり勝負しか経験のなかったこの馬が、トラックバイアスに恵まれた部分があったにせよ、ハイペース寄りのレースに自ら持ち込んで後続の追撃を抑えてしっかりと勝ち切ったことは、こちらの想像以上に力をつけている証拠であると言っていいのかもしれません。

キャラ変してGⅠを勝ち切ったことは、単にこのレースを勝ったというだけでなく、今後に向けた大きな大きな収穫となるのではないか。そんなふうに考えています。


2着のダノンタッチダウンは、最後の最後に脚色が鈍ってしまいましたが、こちらも過去2戦とはまったく別のレースをして、それでいてしっかりと結果を出しているのですから、そのことは大いに褒められていいのではないでしょうか。

川田Jも、午前中のレースでしっかりとトラックバイアスを確認していて、道中でインに入れることに一切迷いはなかったように見えましたので、「これで負けたら仕方がない」というレースはできたのかな、と。

実際、前2走のように外々を回る大味なレースをしていたら、おそらく馬券圏内もなかったでしょうから、究極の好騎乗により勝ち負けまでは持ち込んできたけれど、それでも最後はトラックバイアスを味方につけられずに惜しくも敗れ去った。そんな評価になりそうです。


3着レイベリングは、本当によく走りました。

この馬は、まさに正攻法のレースをして僅差で敗れ去った格好ですから、もしもトラックバイアスが先週程度の偏りにとどまっていたら、かなりの確率でこの馬が勝ち切っていたのでは……。そう思えるくらい、素晴らしいパフォーマンスを示してくれたと思います。

まあ、この先、どこまで馬が成長するのかは未知数ですけど、新馬勝ち直後の関西遠征でこの素晴らしい走りをできるのですから、この馬がデビュー戦で見せた圧巻の勝ちっぷりは、やっぱり伊達ではなかったということになるのでしょうね。


4着キョウエイブリッサは、前日のみどころ解説の短評で触れていたこちらの指摘が、まさにズバリだったことを示す見事なパフォーマンスを披露してくれたと思います。

馬券圏内にあと一歩足りなかったのは、一定の幸運に恵まれることがなかったからで、この馬は自身は、現状における最高の走りで競馬ファンをアッと言わせることに成功した。そう評価していいのかな、と。


5着バグラダスも、みどころのある走りを見せて大健闘。8着のティニアも含めてこの結果を見ると、前走の東京の平場戦は、なかなかのハイレベルレースだったと言えるのかもしれません。

ちなみに……ですけど、当時逃げて4着だったトレンディスターは、土曜日の中京2歳Sで2着に逃げ粘っているわけですし……。


6着オールパルフェは、この厳しいラップを踏みながら大崩れせずに踏みとどまったわけですが、これを強いと言っていいのか、それともトラックバイアスに助けられた部分が大きいと評価すべきなのかは、ちょっと迷うところではあります。

このレースでインを通って好走した馬に関しては、今回のレースぶりだけを見て高評価しないほうがいいのかも……。感覚的にはそう思いますが、はっきりと結論を出すのは、各馬の次走を見てからにしたいですね。


13着スズカダブルは、位置取りが思ったよりも後ろになって、しかも4角で大外に持ち出す最悪の形となってしまいましたから、「器用さを生かしてナンボ」というこの馬にとっては、まったくのノーチャンスになってしまったという理解でいいように思います。

17着エンファサイズは、大外枠が堪えて何もできずに終わってしまいましたが、極端に有利不利のない馬場で自己条件戦を戦えば、即巻き返しがあってもまったく驚けませんから、その点だけは最後に補足しておきます。


いや~、想像以上に激しいレースになったことは大歓迎なのですが、ここまで極端なトラックバイアスが生じてしまうと、正直、ちょっとしらけちゃうよな、と。

こういうレースをサッカーの試合に例えるなら、選手が魅せるせっかくの素晴らしいプレーを、レフリーのおかしな判定で全部ぶち壊してしまうようなものですから、馬場造園課の方々の苦労には十分敬意を表しつつも、もう少し何とかならないものかとは、正直思ってしまいますね。

個人的には、みどころ解説の内容で予想は概ね的中しているのですけれど、当たりゃあ何でもいいってものではありませんから、今日は最後にひと言、あえて苦言を呈しておくことにします。


さて、来週は有馬記念ですね。

でもその前に、オジュウチョウサンの引退レースとしても注目を集める中山大障害がありますから、個人的にはそっちをメインに据えて、この先の一週間を過ごしていこうと考えています(笑)。

サポートは任意です。 この記事があなたのお役に立てた時だけでかまいませんので、サポートしてもらえたら励みになります!