サーフ ブンガク カマクラ の曲の歌詞に沿って物語を書いてみる②
鵠沼サーフ
嗚呼 リアルに何もないな。
大学生とはこれほど何もないものなのか。藤沢にある大学に進学した当初、自分のやりたいことを山ほどやってやろうと思っていたが、リアルに何もない。20歳を超えたら何かを大きく動かせると思っていたけど、そんなことは全くなくて、ただバイトして友達と飯食ってみたいな生活。
そんな時友達からサーフィンをしてみないかと誘われた。正直言って全く乗り気ではなかったのだが、暇ついでに一番近くのサーフショップに行ってみることにした。
江ノ電に乗り、鵠沼駅を降りて10分。
梅雨明けのまだ少し湿った空気が鼻を通る。
年季の入った店だった。
近づくと、中から中学生ぐらいの、よく焼けた少年が、黄色のサーフボードを持って出てきた。
まん丸い彼の目は遠い海岸の高波を見つめているようだった。それは大人の不埒な目とは似ても似つかない、真っ直ぐそのものな目だった。
その時、不意に本気で映画監督に憧れていた高校生の頃を思い出した。初めて自分で撮った作品も、こんな初夏の海沿いの街を題材にしていた。
俺は、何故かとても満足して、店に背を向け鵠沼駅へと折り返していった。反対側の改札にはちょうど電車が到着していた。
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