烏 × 蜜…-二

誰に聞いても、会ってない、知らないって、
しばらく子犬が来ない日が続いて、
久しぶりに出没し始めたって聞いても、なんか落ち込んでんのか疲れてんのか、
いつもみたいに笑えてないって聞いて、
探しても全然会えなくて
ペット兼相棒の白にも見つけたら報せてって言っておいて

静かな居住区の、落ち込んでるみたいな談話室で、それでも下らない話してて、
突然白から通信が入る、これは俺の居場所を知りたいほうや、
「白?談話室におるで?来る?」
「わう」
「わかった。ここで待つわ」

「白さん?どうかしたん?」
「わからん。今は警戒体勢やないし…」
お腹空いたんかなくらいに思ってた
「インカムで情報伝達出来たら犬やないでそれ」
「ほんまや」
「ある程度は解るで?」
「は?まじで?」
「機嫌は良さそうやった」
「ああなるほど?唸ってたら警戒モードとか?」
「白が唸ってたらある意味緊急やろ」
「それはそう」
「確かに」

話してたらドアが開く。白の為にほとんどのドアノブを棒状にしたからひとりで開けられる。
白の背に、子犬が乗っていた
「烏龍茶やん!」
「あれま」
「まじやん。お久」
「お久☆」
「ほんま久しぶりやんどうしたん」

「なあ黒ニキ、イタズラしねえ?✨」

聞いてたのは、笑ってくれない、落ち込んでるのか疲れてるのか分からない、悩んでるみたい、鬱いでるって…
だから、「ええでっ!☆」速答するに決まってる。
久しぶりに会えて久しぶりに笑顔まで見れたら、嬉しくて、楽しくて、愉しそうな提案まできたら乗らないなんてバカやろ

「「待て待て待て待てお前ら」」
「ハモんなよキモ…」
「仲良しかよw」

「イタズラって何するん?二人きりで話そか?」
「おんっ♪」
そう吠えて満面の笑みで腕広げるから、抱っこして部屋を出る
部屋に入った時、通を見て眉をしかめたのを見逃さなかった俺えらい。

「待て言うとるやろが!!」
「嫌な予感しかせえへんのやけど?!」
「大丈夫やってw俺と烏龍茶やで?ww」
「なww」
「こっわ…」
「その嗤いが全てを物語ってんねん!」
「まじ勘弁してや?!」

「で、いつ何するん?」そう言いながらドアを閉めた。もちろん白は先に部屋を出ている。頭の良い子や。
「まだ考え中…」
…少し声が…怯えた?
「俺の部屋でええ?」
「おん」
服を掴むちっこい手も、力が入ってる。さっきの笑顔の会話が無かったら怖くて泣いてるくらいの。
だから…俺は苦手で下手だけど、言葉を選ばないといけなくて、
「白は居ってええの?」
「おん。好きにしときん。」

「…最近いろんな奴ん所に現れるやん?でも元気無いって、皆言うてたで。」
自室のソファーに下ろして頬を撫でる。すり寄るのがかわいくて脳がとろけそうになる。
幸せを堪能しとる場合やないけどな。
「………」
あかんかったかと思ったけど、…烏龍茶も言葉を選んでるみたい…だと思う…からしばらく待ってみる

「迷ってる…」
「…イタズラ?するかやめるか?」
子犬に似つかわしくない…大人の…複雑な…悲しそうな痛そうな苦しそうな苦笑い
「………好きで…。…襲いたい。」

「     …襲えばええやん」
びっくりし過ぎて頭真っ白なった…烏龍茶にオスとしての欲が有るなんて微塵も思わんかった。
それに、言うのに、苦しそうなんが、
わからない

「後悔する。絶対。嫌になる。襲った俺を、事実を。手に…入れられなくなる。あいつは惨しか見てない。なのに俺が喘がせて、心が向く訳無い。苦しい。好きなのに…手に入らない。昔は…手に入れなくて良かった、好きなだけで幸せだった、だから、…好きで欲しくて、好きなのに…愛されなくて…苦しい…。
石榴石からも逃げて、人間が嫌になって、閉じ籠って、…」

…やば…だめだ、範囲外だ、俺じゃ、救えない
それを聴くべきは俺じゃない、待って

「…いろんなやつに…会いたかった訳じゃないけど……愛されない…普通の…優しさが…知りたくて……その、……愛じゃない優しさ…を……」

烏龍茶が笑顔だから乗っただけじゃない、あれは…危険な、信号が、察知できたんや
完璧に隠しきった緊急信号が助けを求めてた

「好きな奴に…愛されないのは…辛くねえの?…なんで…」
「…辛いで。」
「じゃあなんで諦めねえの?諦められねえの?なくなれば、すきな気持ちなんてなくなれば……」
「…諦められるかよ。他の奴らと笑う惨は見たくない。俺が笑顔にしたいんや。」
「だから困ってる……あいつが好きなのは惨で……俺は…愛されてない……なのに…好きで…困ってる…」

「誰なん?」そいつにイライラしてきた。俺らの仲間内やったら烏龍茶を嫌いなわけあらへん。絶対や。なのにそいつは烏龍茶が好意を持ってんのに愛してないとか
「……みつ……と…通…」
…あぁ(優しいもんな上っ面は)…え、まって、通は鈍くないやん…蔑ろにはしてへん…はず…

「付き合いたいん?」
「(ふるふる)……喘がせたい…だけ…愛されたくない……綺麗だから、可愛いから、喘がせたい。逝かしまくって…嫌われたら…諦められる…?」

…ええっと…
「…なんで愛されたくないん。あいつら普通に撫でるし、子犬としては愛されてるやろ?」
「欲情しない。特別じゃない。惨じゃない…。お前だって、惨のほうがいい。
でも、愛されたくない、人間きらい…愛も性欲もいらない…」
「病んでるやん…あぁでも石榴石から逃げたら治れへんのちゃうん?チョコレートは?」
しっぽ揺れてるやん
「…話してる……」

暖かさは感じれるんやな…あと俺にできることは…
「俺は?」
「?」
「俺は襲いたくならへんの?」襲わせへんけど

「……求めてることが違う。俺も惨も………お前の格好良い姿が好き。だから鳴かせたいとか喘がせたいとか無い。
…綺麗で優しくて…愛されたい…けど…愛されたくない…襲いたい…けど襲うべきじゃない…」
「襲ったらええやん。俺はあいつらがどうなろうと、お前にどう接してもどうでもええけど、…お前がムラムラして襲いたいんやったら襲ったほうがお前はスッキリするやろ。良くも悪くも。」
「…嫌われるなら…無くなってしまうほうが…」
「もしかしたらドMに目覚めるかもしれへんやん」それはそれでキモい
「それは…やだ…(苦笑)」
「いやなんw」

「…一回襲っただけで、…どのくらい嫌われるかわからなくて、怖くて……優しいから好きなのに…嫌われたくない…だから…手を出せない…」
「らしくないやん。臆病になって、人が嫌で、」
「鬱屈してる。光が無い。臆病も嫌悪も不安も…きらい。幸せで、好きなだけで暖かくて幸せで甘えたくて撫でてくれて喜べる自分に戻りたい…こんな…気まぐれに喘がせたくなる欲なんていらない…」

「俺は見てみたいで。烏龍茶が男を食う様。食われる男は見たないけど。キモすぎたら退室するけど手伝うで。襲ったらええやん。一晩喘がされたくらいでお前を心底嫌う奴やないで、蜜も通も。」
知らないやろ?お前は。どれだけあいつらがお前に惚れ込んでるか
そんなに驚く事やないんやって
「いっそドMに開発する勢いで、オス全開で迫ったらええねん。格好良いお前好きやで。俺は見たい。」

…ほんまかわええ…
「…そういう…ことは…彼女に言えっての、
ふしっ(子犬顔洗う図)」
「こんなにかわええのに襲われたら靡くて」
「…それはヤダ。…嫌がってくれたらいい…もう二度としたくなくなるように」
「…わからんわ。逝かしまくって飼えばええやん」
「ヤぁなのっ。…恋は一度きりの逢瀬で良い。」
「かっこよw」
「けっw…みるの?襲うとこ。」
「おん。当たり前やん。手伝うでwwイタズラ仲間やろ?」
「…フヒヒ。」

「あいつらが嫌いになるなんてありえへんねん。俺が保証したる。そんな浅い愛情やない。大丈夫や。お前はやりたいこと全部叶えろや。そのかわり、お前はちゃんと笑顔で、幸せで満足せなあかんでw」
手ぇ震えとる。…向き合ってるん?恐怖と

「………優しい光だ。…一方的に襲って……また優しく…構ってくれるものなん?」
「大丈夫やで」
お前はかわいいんやから
「…おそいたい。」
「よっしゃ☆どっち襲う?」



ネクタイピンを留めてやる
「ばり格好ええやん…」
「…けっ…」
お前が照れると理性が削れる。腰を抱き寄せて見つめて
「俺が食べたいわ」

「!…めっ。」
格好ええのにかわええって…なんやねんお前

「…食い食われ…なんかより…悪戯仲間の称号のほうが…うれしい」
奪われ続けてんのよなぁ

「それもプロポーズやで」
「なんでじゃ」

「俺と組んでくれへん?これからも。お前と笑い合って愉しみたい。愛してる。」
「…ぷ、プロポーズにすんなっ!受けとるけどもっww」
…良かったー…その笑顔が見たかってん。心からの照れた笑顔
「んじゃ、ヤろうぜ相棒☆標的は蜜。一人になる時を狙う、ええな?」
「おん。先ず何処に居るかわかるん?」
「それやけど…監視カメラ見n」

ドアを叩く音に邪魔される

「くろー!」「烏龍茶ー!」
「立て込もってんと出てきいやー!」

「なんやねん…俺が出るわ」
…服掴んでついてくるとか押し倒したいんやけどどうしてくれんねんこの子犬…

壁を背にドアを少し開け足で押さえる
「なんや。」
「なんややあらへんやろ。どうせお前らの組み合わせじゃろくなこと考えてないやん絶対」
「今からでも遅ない、堪忍せえ」
「せや、」
「お前らには関係無い。邪魔や。」
烏龍茶の手を震わせるこいつらを凹る前に、烏龍茶の頭を抱き撫でる。
「邪魔って…」
「ってか仕事なん?その格好…」

格好良い烏龍茶に合わせて、本業の正装を着こんだ。(飾りのオモチャじゃない)催涙ガス対応ガスマスクを見れば仕事やと分かる奴らや。
「せや。だから邪魔や、帰れ。」
「ってかそこに烏龍茶居るやろ」
「まさかもうイタズラに出かけるん?!」

「バレちゃあしょうがねえw」
バラすんかい!!
「俺らの邪魔すんならそれ相応の覚悟があるんだろうなあ?ええ?」
低い声で目が笑ってない烏龍茶はよほど恐ろしく感じたようで

「ィャ…アノ…」
「歯向カウナンテトンデモネエ」
「俺ラハ邪魔致シヤセン」
何この寸劇
「解ったら帰れガキ共」
乗らざるをえないやんか

『ハイそこの悪ガキイタズラっ子二人組は出頭すること。イタズラ前に被害想定を報告しなければ晩飯減らすぞ解ったな。』

…睨むしかないよな?扉の前の邪魔な三人組がインカムで抜きよったんや
「お、俺らは邪魔せえへんので、はい」
「せやせや、か、帰るわ」
「邪魔して悪かったな、ほなまたなー」

雑っっ魚www
「…まあw邪魔は居らんくなったでww」
「お仕置きが待ってるんじゃーwくっそw」

「黙って遂行する?」
「…いや、タルトには言う。反対されたらそん時はそん時。むしろスケジュール把握してるら。大事な仕事あったら困るし…」
「ああ、せやな。それはそうやわ。しゃーない、俺も庇うし援護すっで、

安心しいや」
頭ポフって手え繋いだらもう子犬
ああかわええ…

気軽な支援など要らない。いつか離れるなら気にかけるな。 支えるなら…どこまで追える。いつまで付き添える。 どれほどの覚悟と信条があって