赤い公園とぼく

赤い公園 というバンドが大好きだ。

とりあえず赤い公園とは なんたるやをWikipediaより部分的抜粋。
(多少 こちらで編集してます)

2010年1月4日、高校の軽音楽部に所属していた
津野米咲(ギター・コーラス)
藤本ひかり(ベース)
歌川菜穂(ドラムス・コーラス)
佐藤千明(ボーカル・キーボード)
の4人により結成。

藤本と歌川が友人たちとバンドを始める。脱退したボーカルに代わり 同級生の佐藤が加入。

その後、ギターも辞めたため、サポートメンバーとして一学年上の津野が加入した。
当初、東京事変やチャットモンチー、土屋アンナ、GO!GO!7188などをコピーしていたが、当時から作曲をしていた津野の加入により、オリジナル楽曲の演奏をするようになる。

地元 東京都立川市のライブハウス「立川BABEL」を拠点に活動を開始。

複数のレコード会社による争奪戦の末にEMIミュージック・ジャパンと契約。

2012年2月15日、EMIミュージック・ジャパンよりミニアルバム「透明なのか黒なのか」をリリース、メジャーデビューを果たした。

2013年6月5日リリースのSMAPのシングル「Joy!!」で、津野米咲が作詞と作曲を担当する(アレンジは菅野よう子)。

簡単に かいつまむと こんな感じ。

多くの人が赤い公園を知るきっかけになったであろう このSMAPへの『Joy!!』を提供した時に 僕も例に漏れず 赤い公園を知り、聴きだした。

さかのぼって初期の音源を聴いたり、その時々の最新の音源を追いかけても その都度 作品(アルバム)の表情が大幅に異なる。
コロコロと音の表情は変わるのだけど 根底にある「そもそもの曲の良さ」は一貫している。

ここからは、本当に 「だからどうした」という話なんだけど、
バンドにおけるボーカルと、ソングライターが異なる場合、曲を聴きながら「これはボーカルと違う人が曲を作ってるのかな?」なんて 思いながら聴いてしまうクセがある。

漫才を見ながら 「これはどちらがネタを作っているのか」と考えながら見てしまうのに似ている。

そういった感覚で音楽やお笑いをインプットする人は他にも たくさんいるんじゃないだろうか。

いや、ほんと 「だからどうした」 という話だけど、

この僕の『ボーカルとソングライター、別人予想』がそれなりに 当たる。

ボーカルがソングライティングしてようが そうでないかなんて音楽を聴く側には 本当に本当に どうだっていい話だ。

というのを大前提に話すけど、
赤い公園は、ボーカル(佐藤千明)と、ソングライター(津野米咲)が異なると思いながら曲を聴いていても 聴いているうちに「ソングライターが歌っている歌」に聞こえてくる。
ここまで強烈に「今 歌っている人が この曲を作っている人に間違いない」としか思えなくなる感覚は、赤い公園以外で 感じたことのないものだった。

赤い公園のそれぞれのメンバーの顔がなかなか覚えられなかった。ライブに足で運んだこともないし、演奏している映像も観たことがないというのも大きな要因であるのは間違いない。でもそれだけじゃない気がする。

赤い公園の歌を聴いていて 思い浮かぶ歌い手の顔は、ボーカルの佐藤千明でもなく、ソングライターの津野米咲でもなく、赤い公園という概念を具現化したような『メンバーの誰でもない誰か』の顔。
しかも、なんなら曲によっても思い浮かぶ顔が違う。
つまり これはおそらく津野米咲の作る楽曲が『自分ではない誰か』を包み込んでしまうぐらい 許容量があり、強度のあるポップソングになっているから。
そして、その津野米咲が作る楽曲を完全に自分のものにしてしまう佐藤千明の表現力の凄さなのだと思う。

人形作家で例えると 魂を宿す為の精巧な造形と、命を吹き込む塗装を、完璧なバランスで分業しているような感じ。

ちょっとソングライティングの話ばっかりしてしまったけれど、赤い公園は『歌』だけでなく そもそもバンドとしての 演奏が抜群にカッコいい。

つまり何言いたいかと言えば、赤い公園の楽曲は最高ということだ。


だけれど、Wikipedia情報には続きがある。

2017年7月3日、佐藤千明(Vo)が8月31日をもって脱退を表明。佐藤は「7年の活動の中で自分の手に負えない程のズレが生じていることに気付いた。そのズレが迷いとして音楽にまで介入してきたとき、赤い公園のボーカルという使命に、限界を感じた」ことを脱退の理由としている。

2017年8月27日、Zepp DiverCity TOKYOで行われた「熱唱祭り」が4人体制での最後のライブとなった。

そう、佐藤千明が脱退してしまった。

これまで散々書いてきた通り 佐藤千明の存在は僕にとって 大きいものだったので、この報せを聞いたとき 僕は強烈な喪失感に襲われた。

2018年2月に発売されたベストアルバム『赤飯』の初回版のDVDには佐藤千明の最後のステージ『熱唱祭り』の模様が収められている。
僕はこれで初めて赤い公園が演奏しているのを見た。

これがもう とんでもない。
一曲目「カメレオン」の演奏が始まったとたん 体中の血液が煮えたぎった。

おそらく赤い公園のメンバーは、佐藤千明が脱退するからといって感傷的なライブをするつもりはなく、いつも通りの平熱感で ただただ最高な演奏をすることを目指していたのではないか。

でも、そうやってステージでの佇まいがクールであればあるほど こちら見る側が勝手にエモーショナルを増幅してしまう。もしくは 実際 当人たちから溢れ出ているのかもしれない。もはや冷静に判断できないが、ライブの最初から最後まで鬼気迫るものがあった。(編集も素晴らしい。)

アンコールも含め、その日1番最後に演奏した「NOW ON AIR」に関しては もはや 何が原因か自己判断できないぐらい 曲の演奏が始まって終わるまでの間 ずっとずっと鳥肌が立っていた。
今までに体験したことない感覚だった。

このDVD映像で 初めて演奏している赤い公園を見て、なぜ一度もライブに足を運ばなかったのか と後悔した。
それぐらい素晴らしいものだった。

このライブを観ていると 佐藤千明の脱退が辛くなって仕方ないのだが、悲しいことばかりでは無かった。

ベストアルバムの発売が今年(2018年)の2月なので 僕が佐藤千明脱退ライブを観たのと時期は前後するが、今年の初め 2018年1月4日、立川BABELにて赤い公園3人体制になって初のワンマンライブが開催された。

ライブ当日まで謎も多かった その内容は、20曲全て新曲、津野米咲だけでなく 藤本ひかりと歌川菜穂も楽曲製作をし、曲によってそれぞれ演奏する楽器を替え、ボーカルも曲によって替えた。

ボーカルが抜けて3人になってしまったバンドの新たな一手の大喜利としたら どうだろう?かなり魅力的じゃないだろうか?

前々から思っているが赤い公園のこういう大喜利力は素晴らしい。

この新たな一手のニュースを見たときに、赤い公園はやはりこれからも間違いなく面白いだろうし、こちらが赤い公園の今後を心配するなんて 余計なお世話でしかないと思った。

なんてこともあり、今後の活動の詳細を今か今かと 楽しみにしていた。

そこからまた 少し月日が経ち、2018年5月4日、『VIVA LA ROCK2018』に出演が決定していた赤い公園から、新たな一報が届いた。
ライブ2日前の5月2日、VIVA LA ROCKにて 新ボーカルのお披露目があると発表された。

驚いた。新ボーカルが加入するのか。

今後は3人で自由に活動していくということを受け止めて 気持ちをそちらに持っていっていたから尚更。

新しいメンバーがお披露目されるという2日後の未来で 自分自身どんな気持ちが芽生えるのか想像もできなかった。
バンドというものは本当に不思議なもので、ファンからすれば その集合体こそが一つの生き物であり、メンバーの関係性はダイヤモンドの輝きより美しい。
今まで4人組で一つの生き物として捉えていて 、やっと3人組で一つの生き物と捉えられるようになってきたのに、そこに新しい生命体が加わる。違和感があったら どうしよう、などと僅かながら不安がよぎった。

現体制の3人と、佐藤千明が学生時代から築いていた関係性を新ボーカリストに求めてしまうのだろうか。

こちら側には そんな呪いがかかっているかもしれない。

ドキドキしながら、ライブ当日を待つ。
その日、GYAOでライブ映像の生配信もあったのだが、遠出していたので視聴は断念。
ネットニュースの更新を待機。
そして、発表されたのは、

新ボーカリスト 元アイドルネッサンスの石野理子。

恥ずかしながら石野理子という人のことを知らなかった。

その後、石野理子の動画を見漁った。
グループ名を聞いたことはあったけど、音楽を聴いたことがなかったアイドルネッサンス。
とても良いグループだった。
その中でも石野理子という人はなんて切実に、なんて丁寧に歌を歌う人か。

数日後、GYAOでVIVA LA ROCKでのライブの模様が一曲だけ期間限定でアーカイブされた。
ドキドキしながら視聴。
曲は「NOW ON AIR」。

そう、佐藤千明脱退ライブで最後に演奏され 一曲中まるまる鳥肌が立っていた あの曲。

それはもちろん あの時に演奏されていた あの曲とは別物だった。
でも そこにネガティブな感情は一切芽生えなかった。

ついつい 気が緩んで 要らぬ不安が顔を出したけれど、やはり 赤い公園の大喜利力は凄かったのだ。

新ボーカリストは、佐藤千明との『同じ釜の飯を食べてきた感』を目指しても どこまでも比較される。
その呪縛を振り払い(そもそも相手にせず?)『石野理子という宝物を 赤い公園メンバーで大事に育てて行く』という新しい物語の幕開けに思えた。

石野理子の切実さ、真面目さは きっとどんどん色々なことを吸収していくだろう。
3年後、5年後の姿を想像したらワクワクしてしまう。

VIVA LA ROCKの映像は、新生赤い公園が丁寧にスタートラインを引く作業をこちらに見せてくれたのだと思う。
そこからスタートを切って、走り続けていく様は 想像するだけで美しい。
あー、死ねない理由が一つ増えた!

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