見出し画像

東京ヴェルディがゼビオ傘下に、スポーツビジネスを本業とするゼビオのお手並み拝見

東京ヴェルディの経営陣が刷新されました。羽生社長を含めた3名の役員が退任し、新たに3名の役員が就任することとなりました。日経ビジネスの記事によると潜在的な株主であったゼビオが新株予約権の権利を行使して筆頭株主となったそうです。ゼビオホールディングスでは東京ヴェルディ株式会社を連結子会社とするとして、7億5千万円の特別損失を計上するとプレスリリースを出していました。金額の大きさが事態の深刻さを物語っています。

東京ヴェルディとゼビオの関係は時系列で追わないと解りにくい問題です。詳細はプロが執筆された記事を巻末にリンクしておきますので、そちらを読んで下さい。私は要点だけまとめます。

10年前に日テレが撤退した後の経営危機を救ったのがゼビオでした。その時にスポンサー契約の一部に内々的に付与されたのが「新株予約権」という権利です。これはいつでも破格で東京ヴェルディの株の過半数を取得可能であり、いつでも大株主になれる権利でした。それ故にゼビオは潜在的な大株主という立場で経営に口を出してきました。

東京ヴェルディはゼビオに救われた以降は何とか健全経営を続けてきました。スポンサー契約も増加し、トップチームの成績が振るわない以外は特に問題が無かったようです。しかし、今年はコロナ禍によって積み上げてきたものが水泡と帰し、再び経営危機に陥りいます。この危機をどう乗り越えるかという方針で羽生社長以下前経営陣と潜在的大株主であるゼビオが対立しました。結果としてゼビオは新株予約権を全て行使して大株主となり、東京ヴェルディの体制の刷新を決めました。ゼビオが覚悟を決めた形です。

様々な意見がありますが、私は割と楽観しています。ひとつにゼビオはスポーツアパレルの販売だけならず、スポーツの普及に注力している会社だからです。サッカー関係だとFリーグ(日本フットサルリーグ)のスポンサーも行なっており、2015年にはタイトルスポンサーも担いました。Bリーグ仙台89ERSがホームアリーナとしているゼビオアリーナ仙台を保有しています。アイスホッケーのチームである東北フリーブレイズも保有しています。他にもスポーツを軸とした多岐にわたる事業を展開しています。スポーツビジネスにおいて経験値の高い企業の傘下に入るのは歓迎すべきことです。

ゼビオも東京ヴェルディを正式に傘下に入れたことで、東京ヴェルディの成績やブランドイメージを蔑ろにできなくなったはずです。今回の経営危機の話題は日経ビジネスほかテレビ東京のワールドビジネスサテライトでも取り上げられるなど、全国規模で報道されています。「ヴェルディ」は良くも悪くも注目を集めやすいので、無責任な売却や放任はゼビオ自体のブランドイメージを毀損することになります。逆にこれで東京ヴェルディの再建に成功してJ1昇格を果たせば、スポーツビジネスの成功者としてゼビオのブランド価値は大きくなるはずです。その意味は異業種の経営者がJリーグクラブの経営を担って成功するのとは意味が異なります。ゼビオにとってスポーツは「本業」です。

個人的に羽生前社長は非常に情熱的で好きな人物の一人です。しかしクラブ経営の結果は不満でした。トップチームのJ1昇格を目指すといいながらそれは叶っていません。その裏で有力な若手を「泣く泣く」と言いつつ売却して資金繰りしてきた手法にも不満があります。中島翔哉選手のように日本を代表する選手となった例もあるので全否定はできませんが、その様な選手らとJ1で一緒に輝きたかったのがサポーター心理です。経営的に守りに入らざるを得ない事情もあったでしょうが、この悪循環を断ち切るには社長を交代するなど頭を変えるしか無いと思っていました。ひと悶着ありましたが、結果としては私が望む形の体制となりました。

紆余曲折を経て東京ヴェルディは新体制でのスタートを切ることとなりました。全てがマイナスからのスタートです。経営的にもそうですし、サポーターからの印象もマイナスです。特にスクール事業を切り離すという案が出たことに悪印象を抱いているサポーターは多いと思います。ゼビオは負の印象を払拭する必要があります。他にも2021年シーズンの編成も遅れをとっています。

とりあえずゼビオは腹を括る形で1つの責任をとりました。ここ2週間で噴出した禍根はこれで終了としましょう。ゼビオがJリーグクラブを経営したらどうなるか、お手並み拝見です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?