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垣根の病葉には、脱皮の瞬間をさえ見なかったはずの蝉の抜け殻がおびただしい程にしがみつい…
景義先生は蛞蝓に似ている。石を食む悍ましさと、ぬらぬらと粘液を纏う艶かしさが、あの愉し…
ツツジの花の蕾が緑の合間から見え隠れする隣に、満開になった別のツツジが鮮やかに並んでい…
私と妻は幼馴染で、かつてはこの荒んだ、というよりは元々荒んでいたのが、少子化により多少…
物事が何もかも上手くいかない日というものはある。詳細は思い返すのも億劫なので省くが、仕…
正気のはずなのだ。正気でない人間は皆そう言う。空い自問自答を繰り返すが、目の前には取り…
近所に景義先生と呼ばれる人がいる。先生と呼ばれているが、何かを教えている訳ではなく、また過去にそのような職業に就いていた訳でもないらしい。昼間は大抵、公園に面した一軒家の縁側で穏やかに佇んでいる──景義先生と『私』の奇妙な関係、何かに取り憑かれた町の、時々軋む日常オムニバス小説。 近所に景義先生と呼ばれる人がいる。先生と呼ばれているが、何かを教えている訳ではなく、また過去にそのような職業に就いていた訳でもないらしい。昼間は大抵、公園に面した一軒家の縁側で穏やかに佇んでい