空が好きだ

空は何も言わない。何も言わないくせにずっと見てる。私に幸せなことが起きようが、くそみたいに病もうが、そんなの構いっ子なしに空はそこにいる。

私がパイロットを目指すようになったのは小学生から中学生にかけての時。ミスパイロットというドラマがきっかけ。ドラマがきっかけなんてベタだけど、ベタなりに私が初めてちゃんと持った夢だった。

両親が旅行好きなこともあり、昔から家族で海外に行くことが多かった。
ある日、家族旅行でマレーシアへ行った時、調子に乗った父親がCAにこいつパイロットに会わせてくれませんかぁ〜!とか言った。絶対無理でしょ何言ってんだ。と思ってた矢先、CAが戻ってきて、どうやら私が乗った便が今日最後のフライトだったらしく、本当に運良く会わせて貰えることになった。
そして最後に下りて、出口で待っていたら出てきた機長と副機長。

本物だ。嬉しすぎて興奮しすぎたあまり当時の記憶は会ったということ以外正直全くなかった。でも唯一、覚えている会話がある。

私が将来パイロットになりたいということを伝えたら、機長が帽子を私に被せてくれて、「いつかコックピットで会おう」と言ってくれたこと。

それから私の夢と世界は空一色になった。

中学生になってから今まで以上に空のことをたくさん調べるようになった。GOOD LUCK!!やハッピーフライトなど映画やドラマも沢山見たし、仕事に限らず、航空事故のことや、機体の仕組み、無線もYouTubeで聞いたりした。そうして色々調べていく中で私は航空管制官という仕事を見つける。

聞いたこともない、初めて知った職業だった。
調べてみると、航空管制官は飛行機を安全に飛ばす『空の交通整理人』。こんな馬鹿みたいに広い空にも道があることを知った。

今思うと情けないが、当時まだ幼かった私はずっと、飛行機を飛ばしているのはパイロットだ!パイロットのお陰で空は飛んでいるんだ!と過信していた。だからこそ余計興味を持ってしまった。調べれば調べるほど夢中になっていく。
何より私は航空管制官は縁の下の力持ちであるということにどっと惹かれてしまったのだ。

少し話は逸れるが中学の時から高校卒業までの6年間、部活でずっと裏方の仕事を全うしてきた。舞台を見ている人には誰にも感謝されないし拍手もされない。だって見えないところで働いてるんだから。でもやりがいは感じていた寧ろやりがいしか感じてなくて私は大好きな仕事だった。仕事が終わると私の仕事を見ていてくれた人はありがとう!お疲れ様!と言ってくれる。そう、私の仕事をしっかりと見てくれてる人だって少しだけどいる。それだけで十分嬉しかったし満足だった。なにより好きでやっていたから心底楽しかった。演者が出てきたら光がついて、演者が捌けたら光が消える。そんな誰もが特に意味もなく観ているあたりまえの景色には、私含めたくさんの裏方がいるからこそ、あたりまえはあたりまえとして存在しているんだって。『縁の下の力持ち』がまさに私にはピッタリだった。

そして出会ってしまった新たな空の仕事、航空管制官。
こちらも運良くドラマが出ていてTokyo コントロール、Tokyo エアポート。どちらも航空管制を題材としたドラマ。

良くも悪くも単純な私はドラマを見てすぐに落ちた。また夢を見つけてしまった。

夢を抱えてるくせに、まだ中学生ながら航空業界の就職ガイドブックなんか買ったりして空の仕事を調べて調べて、どんどん夢中になっていく。

正直叶うなら全部やりたかった。というか今もやりたい。パイロットや航空管制官は唯一ガッツリもった夢と言える夢だけど、冗談半分、本気半分で、整備士もグランドスタッフもディスパッチャーもグランドハンドリングも税関も。空の仕事全部やりたい。とにかくこの世界が大好きだった。

空港にいる乗客にはみんなどこに行って何をするという何かしらの目的をもっている。そしてそれぞれがその目的に対しての気持ちを抱えている。楽しみかもしれないし、不安かもしれない。パイロットはただ乗客の命を背中に乗せて飛ぶんじゃなくて、そういった想いまで乗せて空を飛ぶ。そして飛んでる飛行機1つ1つが、整備士が隅から隅まで確認して完璧な状態にして、ディスパッチャーとやり取りをして航路を決めて、航空管制官が地上から指示を出して飛んでいる。

空港職員だけじゃない。
飛行機の部品は一つの機体に約300万個。その部品が1つでもないと飛行機は空を飛べない。遠い地方でそんな部品を作ってる工場の人達だって飛行機を飛ばしているのチームの一員。

そうしたたくさんの人達がそれぞれの仕事を完璧に全うすることで、ようやくあの大きな機械の塊である飛行機1つが空を飛べる。

乗客の知らない、見えないところでたくさんの人達に支えられてあの飛行機は飛んでいる。空と地上は切っても切り離せない、見えない糸で繋がっているんだ。と、空を見上げて飛行機を見る度に思う。

だから前で言ったことに付け足すと、パイロットは乗客の命と想い、そして空港スタッフ全員の努力までも乗せて飛んでいる。チームの代表と言っても過言じゃない。

だからやっぱ1番惹かれてしまうんだと思う。

あと私がもう1つパイロットに憧れた理由。それはコックピットからの景色を自分の目で見てみたかった。大した理由じゃないかもたけど、離陸して飛んだ先にどんな景色が待っているのか、どんな空が見えるのかこの目で見てみたかった。これはコックピットという特等席でしか見れないパイロットだけの特権。

でもやっぱ航空管制官もいい。航空管制官については語り出すと止まらないから割愛するけど本当にかっこいい。かっこいいだけじゃなれないのも分かってる。もう今の私にはパイロットも航空管制官もなれない。悔しいけどいい。空はそこにずっといる。

来世だろうが、もっと先になろうが、人間にもしまた生まれ変わったら絶対パイロットになるし航空管制官にもなる。たとえそれがドラえもんの時代でみんなが自由に好き勝手空を飛べてる時代であったとしても私は飛行機に乗って空を飛ぶ。

飛行機オタクって訳でもないのに、この世界にこんなに夢中なのは何故だろう。飛行機の種類とか全然知らない。ただ空が好きなだけ。

夢しかない、この世界に。
見上げれば必ずあるあの空に。

私もいつかどんな形であれ飛行機を飛ばすためのチームの一員になりたい。いつか必ず。

一部だけど私が好きな本たち。載せる。🛬