For the GHOSTsが凄く良かったので、遊んで感じたことを書き殴っておきたい

とりあえず遊んでいない人は遊んできてください。
この作品がどこまで深く刺さるかは人によると思うのですが、とりあえず美少女ゲーム方面の友人と文字書き方面の友人には胸を張って推せるかな、と、いう感じです。


というわけで、遊び終わった瞬間に居ても立っても居られなくなったのでとりあえず筆を執ったのですが、
なんか何から書き始めればいいかわからないですね。

最初はねずみちゃんの話だけしようと思ってみたのですが(単純に一番好きだったので)、いざ書いてみたらそれも違うなあとなってしまい。
胸に残ったいくつかの話だけつらつらと書き留めて、おしまいにしたいと思います。


まず印象的だったこと。
他者との距離の取り方のお話。

友達になる、とか、それ以上の関係になる、とか考えた時。
自分と違う部分を不思議がる、じゃなくて、自分と同じ部分があったことを喜びたい。
というかそもそも、全ての思想は違って当たり前であって、それを無理に合わせたくもないし合わせに来てほしくもない。

こういう感覚を当たり前のように持って、当たり前に理性的な人付き合いが出来ている人もきっと一杯居るのでしょう。
ただ、この世界に干渉した私という読者――或いはプレイヤー、或いは――? は、そういうのが上手く出来ない人間で。大切にしたい相手の気持ちに必死に合わせたがる時も有れば、合わせてくれない友人にやきもきしてしまうこともあって。
自己と他者とをまだ正確に切り分けられていない幼稚な人間にとって、彼女たちの間で暗黙的に共有されていたそんな価値観が、それだけで凄く心地良く感じました。

それは別に人との距離を遠ざけることとか、相互理解を諦めるといった事ではなく、むしろその逆の意味合いを持っていて。
違うものを違うと認識しておく事こそが、回り回ってお互いを最大限に尊重することに繋がっていくんですね。
だからこそ、彼女たちの会話が凄く温かく感じたんだろうなあと思います。


それからもう一つ。
自分で自分を定義する、ということのお話。

これはもう完全に一読者としての感情の話なんですが、
一番好きな子はねずみで、一番心に残った子はAcrylでした。
なんでAcrylかって? 彼女が、なんだか自分の決め事、自分で定義した「自分」に強く縛られているように見えたから。
口にする機会なんて一生なくとも、自分の定義する「〇〇らしさ」だとか「お似合い」みたいなものをずっと持っていて、自分一人ではそこから一生離れられない。そういう感覚だけは、痛いほどわかってしまうからです。

彼女は、人間の心とか、在り方みたいなものに対してひどく真摯です。少なくとも私の目にはそう映りました。
ただ、そう在ろうとすることが、彼女自身の心に重い荷物を背負わせているような。
正しく他者との間に線を引いて、絶対に傷つかない/傷つけない距離感を守り切って生き抜くというのは、きっととんでもなく辛いことだと想像します。

彼女の立場がそうさせたのか、或いは彼女という人物が元来そういう性質を持ち合わせていただけの話なのか、そんなことは分かりません。私たちが知ることの出来る情報なんてあまりにも少ないもので、きっと推測したって詮無いことでしょう。
ともかく、そんな彼女の厳格さは、自分自身に対しても強く作用しているように感じました。

それで、そんな彼女の生き辛さをほんの少しでも和らげられるとしたら。
否、そんな大層な話ではなくとも、そんな彼女が見られる景色をほんの少しでも豊かに出来る存在がいるとしたら。
それはきっと、ねずみちゃんみたいな子でしかあり得ないんですよね。

人間としてのタイプは根本的に違えども、どこまでも他者に対して真摯で心優しい、という一点に関して、きっと彼女たち二人に違いなんてありません。
それでいて、自己という存在に対してだけは何故だかその優しさを発揮してあげられない。そういう所も、多分似ていると思うんです。

ねずみが花冠を作ってあげて、Acrylにとっての決定的な呪縛を一つ解き放ったお話。あのお話が、私はどうしようもなく好きでした。
これからもAcrylはねずみの優しさに焼かれ続けて、至らない自分に苦しみ続けて、それでもやっぱり幸せに生きていくのでしょう。


それから、最後に。
忘却についてのお話。

さよならを言う二人、ねずみとAcryl。
さよならを言わない二人、さかなと彩度。
彼女たちと一人ずつ別れの言葉を交わす中で、なんだかそんな対比が生まれているような気がして。
それが、とっても美しかったです。
それだけ。

「For the GHOSTs」はいつか彼女たちを忘れてしまうことを赦してくれるゲームであり、
また、彼女たちとの関係に浸り続けることを赦してくれるゲームでもあるんだなあと。
感じたんです。感じただけ。


語りたいことなんて星の数ほどあります。
このゲームの一番の特徴と思われるメタ的要素について、結局全然掘り下げられませんでした。それから、この記事で一切名前を出せなかったさかなと彩度の内面についての話とか、後はそうだなあ、四人がもうここに並べきれないぐらいに語ってくれた世界の美しさの話とか、全然拾えていません。
でも、私はまだ全然このゲームのことを、彼女たちとの会話をしっかり咀嚼しきれていない気持ちがあるので。
今はこのぐらいにしておきます。

ねずみと最後に交わした、さよならの挨拶。
いつか忘れてもいいと、喪われてもいいと言うけれど。
どれだけ忘れてしまったとしても、きっと彼女と、或いは彼女たちと交わした言葉の数々は、拾い上げられないぐらい小さな欠片になって私の胸に残るんだろうなあと思っています。

素敵な出会いをありがとうございました。

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