空の光の君へ。



ORβIT待望のデビューアルバムOOが11/11に発売された。

メンバーは作曲こそ行なってはいないが、作詞は多数制作している(ラップに至っては全曲)。作家陣のチョイスから始まり、綿密なやりとりを重ね、修正を依頼し、レコーディングのディレクションも行い、0から最終的なクオリティ管理、更にはジャケットのアートディレクションまで行なった作品であり、名実ともにこれはORβITの7人でなければ成し得なかった作品になっている。

メンバーの今出来る事、やりたいことを全部盛りこんだらこうなりました、とでもいうような、1曲毎に世界観が変わる非常にバラエティに富んだ内容なのに、散漫な印象はなく、パッケージとして不思議な統一感。
0.1秒も無駄にはしない気概にあふれた、捨て曲一切なしの快作。恐らく綿密に練られたであろう曲順の妙もあると思うが、緩急があり、飽きがこない。つい繰り返し聴くたびに、新しい発見のあるアルバムだ。

感想は全曲に対して溢れるほどわいてくるものの、最初にまずこの曲に驚かされ、しばらくこの歌詞のことばかり考えてしまったので、思った事をまとめておきたいと思った。

リーダーであるHEECHO作詞の自身ソロ、「君へ」 について。

ハイライトメドレーを聴いた時点では、「君はもう 孤独に苦しむ事はない。 さよなら…」という
意味深なフレーズだけが公開されており、「君」はファンのことなのかな?と思っていたのだけど、潤くんが歌詞が「憂鬱」と言っていたので、すごく気になっていて。

蓋を開けてみたら、君は、キムヒ(作詞名)氏ご本人のことを歌っていて、とても驚かされた。

伝えたい事は音楽で伝えるので多くは語らない、というようなことを言う彼だけど、まさかここまで音楽で雄弁に自分の人生、内面を語るなど、想像もしていなかった。

彼だけは、日プの辞退後、それについての本人からの言葉がなく、そこからのORβIT結成からの代表就任という事実を知らされていて、一体どういうことなの?と心配や憶測が飛び交ったものなのだけど。
ファンクラブコンテンツのQ&A内でその過程や気持ちを時々急にぽつぽつと話し出すことがあったりはしたので、なんとなくこうなのかな、ということはファンは認識していた状態で。
ここまではっきりとした気持ちの流れを歌詞で知る事になるとは。

それはとても赤裸々で、真っ正直で、私小説のような、自分への手紙だった。
辛かった過去の自分を客観的に励ましていて。今も完全に足下が安定した訳ではないけれど、自分に向き合い、仲間を得て、心を開き、頼ることを覚え、1人ではなくみんなで未来へ向かって行こうとしている。そんな情景なのかなと読み取る事が出来た。


ファンとして彼を見て来た立場としては、過去の部分はとても切なく、だけど、高らかに孤独との決別を歌い上げているのを聴くたびに、胸がいっぱいになる。

(ここからは特に個人の解釈強めなのでご注意ください!)

彼がこれまでファンに見せてきた姿は、とても繊細で、アーティスティックで、照れ隠しが多くて、努力家で、ストイックで、自己肯定感が低い傾向があるように見え、だけど今まで出会った誰よりも他人への愛が深い、利他の人。そのように受け取っていた。

自分でも誤解を生みやすいと自覚しているのか、時々ファンに向けて自分のことを説明してくれる時があるのだけど。

これはもしかして、事務所代表としての自分のトリセツの意味もあるのかもしれないと思った。

彼が、彼自身のためだけに自分のことを歌おうと、本当にするだろうか?それがずっと気になっていた。なので、私はこの歌詞を届ける意味を、そんな風に考えた。

ファンや周りの人達にたくさん心配をかけたことをとても気にしてるけど、言葉では語れない、きっと今後も語ることはなくて。でも、音楽で語ってくれる人。とてもしっくりきたような気がした。

事務所を作り、代表に就任し、社長としてメンバーの盾となろうとしたり、責任を一手に引き受けたことをファンはとても心配していた。だけどファンクラブコンテンツ内でファンに向かって「自分は強いから心配しないで、ただ楽しんでほしい。」というような事を言っていて、とても波紋を呼んだし、ファンの中では「あれ?もしかして、自分たちが思っていたよりもすごく強いのかも…」と思い始めるきっかけになったように思う。

だけど、彼自身のファン以外にも伝えないといけない。ORβITのファンだけでなく、背負った事務所の子たちの全てのファンたちから信頼を得なければいけない、それには正直に現在の自分をさらけ出すことが必要だと、思ったのではないか。
そして、一番大切にしている家族やまわりの人、そして自分のファンに向けても、今の自分を届けて安心してもらいたい、大丈夫なんだと思ってもらいたかったのではないか。


私自身の最推しであるユンドンも、よく考えれば彼からお給料を貰い、生かすも殺すも彼の手の中なんだと思うと不思議な気持ちになるけれど。二人の関係性を勝手にわかっているつもりだから、不安はなかった。ヨンフンもまた同じだろう(理事だしね)。

だけど、他のファンはどうだろうか。これまで日本メンバーだけのファンで、彼を見て来ていなかったり、誤解があったら。バグベルのメンバーのファンは、同じプデュの練習生だった人が代表の事務所に推しが所属するという事に疑問や不安、心配があったり、どういう人なの?と思われている人もいるだろうと思う。
きっと彼なら、そこまで考えていない筈がないように思えた。

今一度、自分を知ってもらう必要がある場面で、わかりやすい安心感だけではなく、あくまで等身大の自分を見せるあたりが彼らしいなとも感じた。そして、弱さも見せる事が出来る彼は、本当の強さを身につけつつあるのかもしれないとも。


そして、社長という肩書きを、所属メンバーを「背負ってしまった」という側面ばかりを心配していたけれど。
君へを聴いてから、彼にとってそれは、もしかして、彼自身の「救済」にもなっていたのかもしれない、と思うようにもなった。

人はある時期から、自分だけのことで生きていくことが難しいと感じるようになる生き物だと私の好きな作家もよく話しているが、自分も子どもを持ってその意味がわかる様になった。
自分が守るべき、自分よりも大切な存在が出来る事、その存在を人生賭けて背負う事は、とても不安なことも増えるし、苦しい事も沢山ある。自由も減る。
だけど、圧倒的に「生きぬこう」と思うようになった。
そして、背負う存在をこの世で肯定していくためには、まず自分自身を肯定出来なければいけない。
この世自体も、良くしていかなければいけない。全てが他人事ではなくなる感覚。
それは恐ろしく大変なことだけど、それまでの自分と乖離があればあるほどもがくけど。
自分以外の人の幸せを真剣に想って生きることは、結果的に自らの救済にもなるように感じている。
(これは、推しという存在を持った時もそう)

もちろん、彼の状況とは全然違うし、自分が産んだ子どもと、会社経営と人材を全部背負うこととの重みは天地の差だとも思う。
だけど、ほんの少しは重なる部分があるように感じた。そして、そうだといいな、とも思った。
彼の本当の気持ちなんて全くもってわからないけど、自分の持っているすべてを使って、ほんのちょっぴりでもわかれたらな、と願ってしまう。この気持ちはなんなのでしょうね。

今の彼ならば、自分一人で抱え込んで、自分だけが損をし、消えれば良いというような考えはしないと思えた。それが一番私にとって嬉しいことだった。代表になったと知らされた時から、それが一番怖い事だと思っていたので。


自分は強いから心配するなと彼は言うけれど。
恐らく彼自身も、事務所の「うちの子たち」に対して、同じような気持ちを抱くことになるのだろうと思う。強くても、信じていても、愛する存在のことは心配してしまうものなんだと。
彼のことが本当にはわからないように、ファンの気持ちがわからないのは仕方ない。だけど、せめて、今後はファンの心配を重荷にしないでいてくれたらと心から願っている。

空の光の君へ。素敵な曲をありがとう。あなたを信じています。

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