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ルカツィテリ (Rkatsiteli)

極めて有用で、多用途、広く植えられており、元々はジョージア王朝時代の品種です。

主要なシノニム: Baiyu(中国)、Corolioc(モルドバ)、Dedali Rcatiteli(モルドバ)、Mamali Rcatiteli(モルドバ)、Rkatiteli(モルドバ)、Rkatziteli、Topolioc(モルドバ)

起源と家系:ルカツィテリ(Rkatsiteli)はジョージアで最も古いブドウ品種の一つです。その名前は、「つる芽」を意味する"rka"と「赤」を意味する"tsiteli"を組み合わせて、つるの外観を表しています。最近のDNA研究では、遺伝的に地元の野生のブドウの木に非常に近いことが示されており(Ekhvaia 他 2010年)、レフラ渓谷の地域で何世紀も前に栽培されていた可能性を示唆しています。然しながら、使用されたDNAマーカーは非常に少なく、この仮説を証明するにはより詳細な研究が必要となっています。
ルカツィテリは、KANGUN、PERVENETS MAGARACHA、PODAROK MAGARACHAの繁殖に使用されました。

その他の説:紀元前3000年にルカツィテリの種子を含む粘土製の容器がジョージアで発見されたと主張するワインライターもいますし、聖書に記されている洪水後にノアによって植えられた最初のブドウがルカツィテリであったという者もいますが、これらの主張を裏付ける植物学的、考古学的、 歴史的、遺伝学的証拠はありません。多くのジョージアの土着品種と同様、ルカツィテリは西暦5世紀に早くも言及されていると言われていますが、これに関する証拠も存在しません(2004年: ChkhartishviliとBetsiashvili)。

植物学的特徴:小粒の実からなる中~大サイズの房。高い酸を保ちながら、高い糖度を得ることができます。出芽が遅く晩熟で、生産性が高く、フィロキセラ耐性があり耐寒性が高い品種です。

栽培地域とワインの味わい:ルカツィテリは、ジョージアで白黒あわせた全品種の中で最も多く植えられているブドウで、特にジョージア南東部のカヘティ(Kakheti)全域、カルデナヒ(Kardenakhi)とチバアニ(Tibaani)村の最高級ワインのいくつかで用いられています(2004年には19,503 ha/48,193エーカー、ゴルバチョフのブドウ引き抜き施策以前よりも少ない)。
ツィナンダリ、グルジャニ、ヴァジスバニなどのアペラシオン(ムツヴァネ・カフリを15%までブレンド可能)で一般のテーブルワインだけでなく、カルデナヒのようなカヘティの暑い地域での酒精強化ワインにも使用されています。伝統的なスタイルのワインのお勧めの生産者はアラヴェルディ・モナステリ、フェザンツ・ティアーズ、ヴィノテラなどで、粘土製のクヴェヴリと呼ばれる甕で果皮ごと醸造され、リンゴの皮のような風味を持ち琥珀色をしていることが多いです。ヨーロピアンスタイルは、花やストーンフルーツ(※桃など)、リンゴやカリンの香りがあり、さわやかな酸と豊かな果実味を持つ傾向があり、バダゴニ、シャトー・ムクラニ、シューマン、トビルヴィーノ、テラヴィ・ワインセラー、テリアーニ・ヴァレーなどで造られています。ルカツィテリは旧ソ連のほとんどの国で非常に人気があり、生産性、耐寒性、酸を保持する能力が評価されています。ウクライナで最も栽培されている品種で2009年の総面積は11,552 ha(28,546エーカー)であり、モルドバ共和国では2009年に11,508 ha(28,437エーカー)を記録しました。ロシアでも栽培されていますがその範囲は限定的で(2010年にロストフで569 ha/1,406エーカー、2010年にクラスノダール地域で133 ha/329エーカー)あるほか、東ヨーロッパでも栽培されています。またソビエト時代にはルカツィテリはアルメニアで最も広く栽培されていたブドウでしたが、20世紀末には栽培面積の約7%にまで減少しました。しかし、ブルガリア(2009年: 12,631 ha/31,212エーカー)では今でも最も広く栽培されている白ブドウ品種であり、ルーマニア(2008年: 354 ha/875エーカー)でも栽培されています。コンスタンチン・フランクがニューヨーク州のフィンガー・レイクにこの品種を導入し、ホートンもバージニア州で採用したほか、他のアメリカの州でもわずかに植えられています。1956年にはBaiyuという名前で中国に持ち込まれ、今日では中国北部、山東省、江蘇省、安徽省の旧黄河地域で広く栽培されています。中国のワインメーカーは、甘口、辛口、スパークリングワインのほか、蒸留にも使用しています。

※この文章は、「ワイン用葡萄品種大事典(Kindle版)」ジャンシスロビンソン他2名の英語版からの翻訳です。



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