対価は、お前の全て。
「お前に自身の何もかもを差し出してでも、守りたいものがあるか?」と問われ、男は「ある」と答えた。
男の願いは、死の淵にある愛する女性を救うことだった。
その何者かは男の願いを叶えた。男は助けた愛する女性と一生を共にし、幸せに天寿を全うした。
「対価はどうなったのか?」と聞くだろう。あぁ、差し出してもらったさ。この男の未来そのものを差し出してもらったのだ。現実では、男は何も成せず、ただ姿を消した。愛する女性は運命のままに亡くなった。
だが、それでも良かったのではないか。夢であれ、現実であれ、自分の全てを差し出して救ったという一生分の達成感とその喜びを味わえたのだから。