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自分だけを見てほしい

近所にしんくんとゆうくんという
年子の兄弟がいる。

2人ともとってもやんちゃ。
お母さんはいつも怖い顔で怒鳴っている。
子どもを引きずり、ひっぱたいている。

しんくんは、入学してしばらくすると、
登校時に大声で騒ぐようになった。
繊細で、少し気に食わないことがあると
癇癪を起こす。

学校では、「帰りたい」と言って
騒ぐ。


なかなかママたちに
心を開いてくれなかったお母さん。

子ども同士遊ばせるうちに、
徐々に状況を話してくれた。


とてもやんちゃな男の子ふたりを
年子で育てたお母さん。
本当に大変だったと思う。


お兄ちゃんは、
弟が生まれたことで、
たくさん我慢してきただろう。



そこで、うちの子たちのことを思い出した。

「うちはね、下の子が生まれた時、
お姉ちゃんは6歳。
授乳をしてれば
物を取ってくれたり、
お腹がへっても待っていてくれて、
とてもお利口だったの。

でも下の子が大きくなるほどに、
お姉ちゃんは、できていたことが
逆にできなくなった。
私に頼んでくることが増えた。

『お母さん、ランドセル背負うから
フード持ってて』
『お母さん、手洗うから袖まくって』
『お母さん、ぎゅうして』
『お母さんと2人で出かけたい』
こんな風に。

まるで、赤ちゃんをやり直しているみたい。
それか、小1をやり直していたのかも。

あきらめずに、表現してくれたんだな、
と思ったよ。

今のお母さんなら、
サユの面倒見てくれるんじゃない?って。」

と、そのお母さんに話しました。




数週間経って、
近況を聞くと、


「あれから、
お兄ちゃんが、
何にもできなくなっちゃったの。
『パンツ履かせて』
『着替えさせて』
『布団かけて』って。
だから、全部やってあげてる。
下の子は、延長保育に預けて、
お兄ちゃんとの時間を
たくさん作ってみたよ。」

と、話してくれました。

正直、
私は、
うちの子の話をした時には、
少しでも気持ちが楽になればと
思って言っただけで、

ふーん、って思われちゃうかもな、
っていう気持ちもありました。

でも、私の話を参考にしたのか、
自然とそうしたいと思えたのか、
それは分からないけれど、

私と同じ思いで、
同じ方向に進んでくれていたことに、
とっても驚きました。

今では、兄弟ふたりとも
なにもなかったかのように学校に通い、
楽しそうに公園で遊んでいます。


『自分だけを見て欲しい』

よく表現できたね。

それは、
弟が、物事を良く分かる子だったから。
そして、

はたから見ると
怖そうなお母さんに見えて、
実は、子どもたちの良さを
よく分かっているし、
正直で隠し事をしない人だから。

だからお兄ちゃんは、
小学校低学年で
一度、赤ちゃんに戻れたのだと思う。



いつからでも、
子育ては、
やり直せる。

子どもは、
いつまでも
待っていてくれる。

もう、お母さんは分かってくれないやって
あきらめても、

お母さんにゆとりができれば、
隙を見つけて頼ってくれる。
それが、子どもの
素晴らしい力だと思います。

子どもは、
上手に愛情を引き出して、

親を、育ててくれます。




子育ては、
終わりの見えない階段を登っている
ようにしんどい。

一段一段進めていることを
喜べばいいのに。

どこまで階段が続いているのか
そればかり気にしてしまう。

振り向いてみると
ずいぶん長い道のりを
進んで来れた自分に
誇らしさを感じるから。

どうぞ、
先のことは気にせずに
ここまで来れた
自分を褒めてあげてくださいね。

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