創作大賞2024 書きかけ1

書きかけの記事です。
書きかけを公開するなと思った方、すみません。
下書き保存しているといつまでも進まないので、投稿しちゃいます。


3か月前、いとこが家に来た。

私は29歳女性独身で、現在横浜の下町で一人暮らしをしている。
6帖1Kの狭い賃貸だ。

いとこがなぜうちに来たか。
家出をしに来たのだ。

いとこは女の子で、現在高校2年生だ。

春休み中に母親とけんかをし、その勢いで家を飛び出したそうだ。

家を出た際スマホは持っており、母親の鬼電により連絡はついた。

そして、
「家に帰らなくてもいいから、陸ちゃんの家に泊まらせてもらいなさい」
ということになったらしい。

もちろん事前に私に打診はきていた。
「迷惑で大変申し訳ないのだけど、1日で良いから泊まらせてくれないかしら。年頃の女の子がどこにいるかと思うと不安で。」

アラサーの私にとって、高校2年生の女の子の家出を匿うなんて、こんなにわくわくすることはない。
「1日と言わず1週間でも2週間でも!春休み終わるまでいてもらっても構わないですよ!」
と食い気味に返答し、うちに来てくれることになった。
2週間滞在してくれるらしい。

いとこの名前は、はるちゃん。埼玉県在住。
横浜駅で待ち合わせることになった。

はるちゃんと会うのは15年ぶりくらい。誰かの結婚式で少し会った。
まだ2、3歳だった。披露宴の際、テーブルで塗り絵をしていた気がする。


顔を見てもお互いわかるはずがないので、洋服の特徴を教えあっていた。


午後2時。横浜駅。
JR改札口近くのドトールの前で、
・小柄
・髪型はボブ
・水色系の花柄のワンピース
・ベージュのサンダル
・茶色い眼鏡
という手掛かりを頭の中で唱えながらはるちゃんを探した。


見つけた。
「はるちゃん・・・?」
と声をかけると、恥ずかしそうな笑顔で答えてくれた。

はるちゃんは、
「迷惑を・・」
と言いかけたが、
「久しぶりだ~!最後に会った時はこのくらいだったのに!」
と言いながら親指と人差し指で5cmを作り、続く言葉を遮った。
「横浜あんま来ないよね?どこ行く~?」と言いながら歩きだした。
迷惑をかけると謝ってほしくなかった。


その日は駅近くのカフェで軽くお茶して、すぐに家に帰った。
ロフトベッドを組み立てる予定があったのだ。

というか、はるちゃん来訪に合わせてこの予定を作った。

なぜこんな予定を作ったか。
何かしらの共同作業がないと、高校2年生の女の子と仲良くなれる自信がなかった。
そしてずっと前からロフトベッドを買いたかったものの、一人では組み立てられないので断念していた。ちょうどよかった。


「来てもらって早々に悪いんだけど、ロフトベッド買ったから組み立て手伝ってもらえないかな?一人では組み立てられなくて。」
はるちゃんは、「?」という表情を浮かべつつ、うなずいてくれた。

「ロフトベッドを組み立てる」という共通の目的ができた私たちは、ロフトベッド関連の話題で盛り上がった。

私「今日、今のベッドを解体して、明日新しいベッドを組み立てるよ。」
はるちゃん「そうなんですか・・。工具とかは買わなくていいんですか?」
私「一応工具はうちにあるよ。でももしかしたら買いに来るかも。」

はるちゃん「今日ベッド解体しちゃったら、今日は何で寝るんですか?」
私「マットレスは捨てないから、床に直接マットレス敷いて寝るよ。」
はるちゃん「そうなんですか・・。あっ、マットレスってシングルですよね、私床で寝るので陸さんマットレスで寝てください。」
私「もうそんな気を遣えるようになったのか~、前会ったときはこんくらいだったのに(指で5cmを作る)」
はるちゃん「そんなに小さくないですよ笑。」

休憩用のアイスを買い、帰宅した。
「お邪魔します~」と言いながらサンダルを脱ぐはるちゃんの足のかかとが、赤くなっていた。

疲れているかもしれない。

彼女は家出をしてきているのだ。親とけんかした後、埼玉からはるばる横浜まで移動したのだ。ほぼ初対面のいとこを相手に、気疲れもしているのだ。
今からベッドを解体するのは酷だと思った。


「なんか疲れちゃったね。ちょっと早いけど今日はもうお風呂に入って、ゆっくり寝ようか。」
「ベッド解体しないんですか?」
「今日はもう疲れちゃったからさ。明日にしよう。」

はるちゃんにシャンプーやボディソープ、化粧水の場所や洗面所の説明をした。その間、はるちゃんはすいませんすいませんと言いながらうなずいていた。

「そうだ、はるちゃんがお風呂入ってる間にウーバーでなんか頼もうよ。何食べたい?」
はるちゃんが遠慮がちに私のスマホをのぞき込む。
「お金は、はるちゃんママに多めに請求するから気にしなくていいよ。」
というと、はるちゃんは笑ってくれた。私たちはピザを選んだ。

生地選択の欄。
「ミルフィーユって何だろうね?食べたことある?」
「たぶんないです・・。さくさくしてるんですかね?」
「なんかそんな感じするね・・。よくわかんないからこれにしちゃおっか!」

オプションの欄。
「はるちゃん、レモネードって飲んだことある?」
「レモネード・・・。ないかも!炭酸のはちみつレモンみたいなやつ?」
「そんな感じ。あのね、悪いことするときはレモネードを飲むんだよ。」
「え?なにそれ!どういうことですか?」
「私が高校生の時に決めたルール。親に秘密でライブハウス行くときとか、悪いことするときはレモネードをお供にするってルールを高校生の時に作ったの。はるちゃんもいま家出中でしょ?レモネードをお供にしなきゃ。」
「なにそれ!おもしろい!お供にしてどうするの?」
「別にどうするとかはないんだけどさ。なんか、楽しいんだよね。自分だけにわかる合図というか。レモネード飲んでる間ははめ外してもOKって思えるというか。」


はるちゃんがお風呂に入っている間、ピザの写真をはるちゃんママに送った。
「今日はピザを食べますー。オプションで、生地を『ミルフィーユ』に変更してみました。私もはるちゃんもこの生地のピザを食べたことがないので、どんなものかわくわくしながら待ってますー。」
送信するとすぐに既読が付いた。









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