デニーズで朝食を!

「目玉焼きには塩?醤油?それとも....」

僕はわりかし朝食を外でとる。そして、ファミレスを利用するときは、いつもデニーズだ。

接客が良いのと、美味しいコーヒーがテーブルでサーブされるから。

コーヒーサーバーを持ったスタッフが、テーブルを巡回するサービスがお気に入り。

サラダ・ベーコン・ソーセージ・目玉焼きかスクランブルエッグにパンケーキやトーストが付く洋朝食か、ご飯と味噌汁の付く和定食を選べる。この内容で592円(税込)。味も良い。

ただ1つだけ問題がある。

塩がないのだ。

洋朝食を選んでも、和朝食を選んでも運ばれてくるのは何故か醤油とソース。塩がない。

「???」

初めは出し忘れかと思っていたのだが、何度通っても、塩が出てこない。

いつからか店員にも顔を覚えられた。頼まなくてもコーヒーがサーブされ、目玉焼きの焼き方の好みまで記憶してくれている。それでも相変わらず塩は提供されない。

「???」

何かがおかしい。

たまにいつもと違うデニーズにも行く。が、やはり塩ではなくソースがでてくる。

注文の度に、恐縮しながら塩をお願いするのが馬鹿らしくなり、また仕事柄の好奇心も手伝い、ついにデニーズのお客様相談室に問い合わせてみた。

以下、相談員との会話。

僕「朝食に塩が提供されないのには、理由があるのですか?」

相談員「デニーズのマニュアルでは朝食にお出しする調味料はソースと醤油とケチャップになっております」

僕「洋朝食の卵料理に使うものがありません。普通、卵料理には塩ではないでしょうか?」

相談員「塩がご希望でしたらスタッフに言って頂ければ提供させていただきますので、その旨をお伝え下さい」

僕「そもそもソースは何に使うのですか?」

相談員「ソースは卵料理にお使いください」

僕「卵料理は塩じゃないでしょうか?世界中どこに行っても塩でしょう」

相談員「最近はソースを使われる方も多いですよ」

僕「ソースも出されるのは良いのですが、卵料理に塩ではなくソースをファーストチョイスにしているのは理解できないのですが?」

相談員「わたくしどもでは、塩はご希望に応じて提供させて頂いております」

僕「毎回毎回、塩をお願いするのが面倒なのです。目玉焼きに塩。可笑しなことを言っているとは思えないのですが?せめてテーブルに塩をセットしておいてくれないでしょうか?」

相談員「砂糖など使用頻度が高いもののみテーブルセットさせて頂いております」

僕「失礼ですが、卵料理にソースはある種の食文化の乱れではないでしょうか?お客様の希望で対応するのは塩ではなく、むしろソースだと思いますよ。デニーズさん以外で塩が出ないお店に遭遇したことないですし」

相談員「他の店ではどうされてるかは調べたことがないのでわかりません。そのような要望があったことは担当部署に伝えさせて頂きます」

このあたりまで話して、頭がクラクラしてきたので電話を切った。驚くことに塩が提供されないのは、デニーズ本社の方針だった。

ちなみに、これ、3月17日(木)昼の話。翌日、僕の苦悩はいとも簡単に解決された。

翌日18日(金)朝。

この日、朝から仕事の打ち合わせがあった僕は、打ち合わせ場所をデニーズに指定した。この日からデニーズが始める普通じゃないモーニングサービスを確認するためだ。

僕はフードビジネスを生業としているので、あらゆる種類のフードビジネスモデルを体感するようにしている。

さて、この新サービス。明らかにコメダ珈琲をベンチマークしたものだか、価格が破壊している。

ゆったりとした席に着席できて、コーヒーには軽い朝食付き。しかもコーヒーおかわり無料。アジア最安値かも?

ちなみに、このタイプのビジネスモデル。その格安サービスがどれだけ売れても利益に繋がることはない。

「リーチ(接触)とフリークエンシー(頻度)」と呼ばれる手法で、低価格メニューにより新規客との接点を広げることでリピーターを獲得するというマーケティング手法である。この戦略の最も有名な使い手がマクドナルド。

ポイントは低価格メニューで引き寄せた新規客をリピーターにして、どれだけその他の商品の購買に繋げられるかにある。

マクドナルドでは来店客がサービスメニューを注文しにくくするために、広告宣伝の段階では大きく表示しているサービス商品を、店内メニュー表では異常なほど小さく表示している。

これは古いやり方。お客様は感動しないし、喜ばない。企業の姑息さが伝わり逆効果。

デニーズはどうだろう。

店頭ポスター・店内ポスター・メニュー表にその存在を大々的にアピールしていた。この姿勢は好感が持てる。もちろんサービス開始初日においての話だが。

果たしてこのリーチとフリークエンシー戦略は上手くいくだろうか?

以下簡単に考察しておく。

僕のようなものぐさな人間は、一旦、デニーズのようなアメリカンスタイルのコーヒーサービスに慣れてしまうと、セルフタイプのドリンクバーには戻れない。

初めはモーニングサービスに釣られてきた新規客でも、フルサービスの心地良さから何度か通うようになる。このような状態の客をリピーターと呼ぶ。リピーターは次第に他のメニューも注文するようになっていくのだ。

幸い、 デニーズは魅力的な朝食メニューを揃えている。本部は新規客を朝食リピーターにする自信があるのだろう。

これがデニーズがモーニングサービスを始めた狙いではないかと考えている。今のところ。

最後に僕の苦悩が解決した理由について。

相談室に連絡した翌日朝、打ち合わせのためにデニーズに行くと、なんとテーブルの上に卓上塩がセットされているではないか。

「僕の電話がきっかけか?」「早っ!」と驚いたのも束の間、新しいモーニングサービスを見て納得した。

モーニングサービスはトーストとゆで卵だったのだ。

まさか僕の電話がきっかけではないだろう。。。

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