昔話〜研修所①〜

一次募集は落ちた。筆字で縦書きにお名前が、それぞれのお席の前に、大きく垂れていたのを覚えている。

先生の名前を聞かれ、「ああ、だからここ(喉を指して)で歌ってるんだよ!」

と言われたことも覚えている。

二次試験は受かった。何とか受かった。

通っていた大学の大学院に落ちてからの研修所受験。

演奏者のプロフィールに見る、○大卒業、〇〇コンクール大賞、〇〇財団奨学生。演奏は何も覚えていないけれど、いつも肩書きは頭に残った。

「私も欲しい」。

とにかく、研修所に行くことが決まってほっとした。

もともと短大に入学し、編入してもう2年、それから3年間の東京生活延長。

外食も、旅行もせず、家でとれた野菜が主な食事。散々不満を言って、学費、生活費については、面と向かって話をした事がない。

今思えば、そんな奴の夢なぞ、誰が叶えてやろうと思うか。

幸か不幸か、区画整理にかかった先祖代々の田んぼに感謝。






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