競馬番組理論とは?
競馬必勝法の歴史(競馬番組理論登場前)
ここで言う「競馬必勝法」とは、例えばパドックで馬体を見て、血統で適性を探り、各馬の脚質を考慮して展開を読んだり、或いは指数(一体何のかさっぱりわからない)から浮かび上がった馬を選ぶとかいう手法ではなく。「競馬は予め勝ち馬が決まっている」という前提の「競馬必勝法」の話です。かなり前の事なので記憶が間違っている部分もありますが、その歴史を振り返ってみたいと思います。
「競馬は予め勝ち馬が決まっている」という事を謳っていた「競馬必勝法」の中で恐らく一番流行ったのがいわゆる「サイン」というものだと思います。今もない訳ではありませんが、昭和から平成になる頃にはかなりの勢いがあり、書店にはその手の本が多数出版され、もちろんそれなりに売れていました。今はなくなってしまいましたが、総武線の水道橋駅から東京ドームに向かい途中にあるWINS後楽園の並びに山下書店(その後オークスブックセンターとなった)というのがあり、そこには野球やプロレスの本が豊富にあったのですが、競馬本もまたここに行けば大抵置いてあるという所でしたが、もちろんそこにも新刊が出ると山積みになっていたりしました。
それほど魅力的で楽しいものだったからこそ多くの人が虜になった訳ですが、一言で「サイン」と言っても実に様々。「今年のG1は●●騎手の隣の枠が来る」とか「的場と中野で的中となる枠が来る」とか、或いは今は懐かしい「サラブレッドインフォメーション」の文言や写真・イラストから勝ち馬を読み取るとかとにかく多種多様なものがありました。「サラブレッドインフォメーション」は関東と関西で文言やイラストが違ったので、特にG1の時は、関東の人は関西の、関西の人は関東のサラブレッドインフォメーションを手に入れようと躍起になっていたと記憶しています。今とは違いネットもなければスマホのない時代でしたので、持っている人はFAXでやり取りをしていたのではないでしょうか?
また、日曜日のお昼過ぎに放送される「NHKのど自慢」のゲストからヒントを得たり、今は終わってしまいましたが、テレビ朝日で日曜日の夜にやっていた「日曜洋画劇場」の映画のタイトルがヒントになったりというのがありました。「NHKのど自慢」は今でもやっていますので、よくよく見れば何かヒントがあるかもしれません。「NHKのど自慢」にしろ「日曜洋画劇場」にしろ一見競馬に何の関係もなさそうですが、NHKに関しては言うまでもなくNHKマイルカップ(昔はダービートライアルのNHK杯)があり、クラシックや天皇賞などはNHKがフジテレビ系列とは別に放送していますし、テレビ朝日は朝日新聞系列で、こちらも朝日杯フューチュリティステークスや朝日杯セントライト記念など非常に関係が深く、全く根拠がないという事でもないというのが面白い所です。
そんな中ちょっと一線を画すると言ってもいいのが中山一考氏の本でした。どちらかと言うとマイナーだったと思いますが、サインと言ってもかなり「硬派」で、今でも通用するサインが有ったりします。中山一考さんの本に書かれていた内容が、後に登場する「競馬番組理論」でも登場する「一走単価」というのは中山氏がかなり前から書籍で書いていた話ですので、もしかしたらその後登場する競馬番組系の人達と何らかも繋がりがあったのかもしれません。その他にも色々興味深いサインもありますのでAmazonやブックオフで検索すれば今でも時々出品されていますので、興味のある方は一度読んでみてもいいかもしれません。内容的には初期の本の方がいいです(これは他の方の本にも共通する部分です)。
競馬新聞やスポーツ紙の記事や調教欄を見たり、最近流行りの「ウマ娘」などをきっかけに競馬に入って来たピュアな人には全く理解出来ない世界かも知れませんが、何故それほど流行ったかというと、実際そういう手法で馬券を買うと当たったからです。ただ、一体何故そのようなサインがあり、何故教えてくれるのか?という問いには「誰かが、何故か、誰かに教えている」というような言葉でしか言えていないので、これはある意味「逃げ」だと当時も感じました。
競馬必勝法の歴史(競馬番組理論登場後)
そんな所に登場したのが「競馬番組理論」というもので、これは片岡勁太氏の伝説の本と言ってもいい「恐るべき競馬の本(KKベストセラーズ)」でした。「競馬は同じ事を繰り返すゲーム」という格言は今でも覚えている人が多いと思います。この後「競馬番組理論」とか「オペレーション」とかいう言葉がかなりメジャーになり、競馬の月刊誌も多く出されてました。その中でも「競馬ゴールド」は競馬番組理論を披露する方々の記事が多数掲載されるという状況でした(もちろんサイン派の記事も多数あり非常に濃い内容でした)。昨年春まで有料サイトを一緒にやっていただいた浜田幸司氏(単行本も出していますので検索してみてください)もその中に一人で、他にも多数の方がひしめき合う伝説の雑誌でした。
一口に競馬番組理論やオペレーションと言ってもその切り口は実に多様ですが、その中でも一番の根幹になるのが戦歴の分析でしょう。また競馬番組的にある決まった分類から導き出される流れといったものもその中に入ると思います。例えば昨年古馬G1は全ての競走が58キロ化しましたが、その中でダート競走とグレード制当初から元々58キロだった天皇賞を除く非牝馬限定戦は、馬連は牡馬と牝馬という組み合わせで決着していました。恐らくジャパンカップが終わった頃には多くの方が気付き、有馬記念もその前提に立って検討していれば6頭いた牝馬の中からスターズオンアースを選ぶ事は出来たのではないかと思います。
note の競馬のカテゴリーの中にも何人かの論者が記事を執筆されているかと思いますが、全体の比率からすると恐らく少数であり、かつての勢いを感じさせる状況ではないと思います。それなりに勢いがあり非常に盛り上がっていた競馬番組理論もある時を境にその勢いは衰えて行きます。具体的にいつというのははっきりはしませんが、競馬ゴールドが廃刊になった時が一つの契機だったと思います。何故勢いを失ったのか?というのははっきりしていて、これは競馬番組の変貌に付いて行けずにそれまで通用した理論が通用しなくなり(今までとは違う見た事もない馬が来たり等)当たらなくなったというのが原因だと思います。これは初期からやっていた人であれば実感としてわかっていただけるのではないかと思います。
競馬ゴールドが廃刊になったのも、クリティカルな事を書ける人がいなくなってしまったというのがあったのかなと思いますし、結果として競馬番組理論から離れる人もいたと思います。また、方向性を失った為により先鋭化した手法に向かい、結果として本質から離れて行ってしまい、迷路に迷い込んでしまったというのもあるかもしれません。そして「競馬は予め勝ち馬が決まっている」系の世界がどんどん小さくなってしまい、今では極一部のマニア?的な人達が細々やっているというのが現実だと思います。
では、今はもう全てがガチの競馬しかやっていないのか?というと全くそんな事はなく、今でもJRAは(特にG1では)きっちりオペレーションしていると思います。手前味噌の話ではありますが、「2020年に牡馬クラシック三冠馬が誕生する」という話をかなり前(正確に覚えていませんが5年以上前)からその理由をブログやメルマガで発信していました。皐月賞を勝ったのはコントレイルでしたので、その時点でダービーも菊花賞を勝つ事が確定。無観客だろうが東京オリンピックが延期になろうがコントレイルは三冠馬になるべくしてなりました。
決めた事は絶対にやるというJRA競馬は今も続いています。そこは疑いようがありません。「そういえば昔やっていたな」というリピーターの方は是非戻って来てもらいたいですし、「何それ美味しいの?」というウマ娘世代の方も是非足を踏み入れていただきたいと思います。note の中にも探せばそういう記事がありますし、Amazonやブックオフの100円コーナーとかにもその手の本はあると思いますので、足掛かりにはなるかと思います。