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4.ごめんね、ベイシー

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誰そ彼レゾナンス/Calmera

18歳の春、ジャズサークルに加入した。
本当は軽音楽部に入りたかったのだけど、赤い髪の毛のお兄さんとかいて怖くてウジウジしてたところ、授業で一緒になった友達がジャズサークルに入ったというから一緒に入ったのだ。
当時、AIRさんの音楽に衝撃を受けて、ジャズすげー!ってなった(というか、AIRさんをジャズだと思ったって・・・)のが始まりで、しかも、スリーピースとかフォーピースのシンプルなバンドにハマりがちだったので、サークルの基本として聴くことになった、カウント・ベイシーをうるさいと思っていて、ジャズの中でもトリオなど小編成を好んでいた・・・私がだよ?

その約20年後には、8人編成のエンタメ・ジャズバンド、Calmera(カルメラ)にハマるんだから、人生どうなるか分からない。

長い書き出しとなったが、つい先日5月12日に、Calmeraの12枚めにして、15周年アルバム「誰そ彼レゾナンス」が発売になった。

というわけで、その感想を・・・(ベイシーなんで出したん?)。

このアルバムは、味変のある金太郎飴みたいな1枚である。

彼らはインストバンドなので、当たり前と言えば当たり前なのだけど、歌モノのバンドとは異なり、曲ありきで編成が変わったりすることなどなく、どれもしっかりCalmeraの音が鳴っているのだ。
ファンだからかも知れないけど、プレイリストも見ずに彼らが選曲したラジオ番組を聴いて、初耳の曲(しかもカヴァー)で、「これ、Calmeraちゃうん?」って思ったくらい、彼らの音というのが区別できる。
そして、演奏するジャンルはジャズバンドと言いながらも、ロックもあれば、昭和歌謡もあれば、ヒップホップのバックトラックも演ってしまう、とんでもない幅の広さ。
だから、途中でジャンルが混ざり合いながらも、Calmeraの音が貫かれている、そんなアルバムなのである。

今回は15周年記念アルバムということで、多彩なゲストを迎え、歌の伴奏という形になっている曲も数多くあるが、毎年ホストバンドとして出演している、やついフェスティバル歌合戦が血となり肉となっているのが、良く分かる。
去年の筋肉少女帯、ZIGGY、すかんち、爆風スランプといった大御所の本人歌唱の圧巻の演奏、貴重な反面、CDでは味わえないというジレンマがあったのだが、万能バンドとしての姿も惜しみなく収録されている。

さて、曲単位で話をしていこう。

特に管楽器については経験もないので、それぞれの演奏について詳細な感想を述べることが出来ないのですが、アンサンブル、個性溢れるソロともに素晴らしく心地よいということを先に記載しておきます。

1.上に行きたくないデパート

舞台「上に行きたくないデパート」テーマソング。
Calmeraらしい、ハッピーで哀愁があって、でもゴキゲンな1曲。
ジャズだけど、ちゃんとメロディーがあって、ジャズって難しいと思っている人にも「そんなことない!」と出せるカードの筆頭となる1曲。

2.Mato Pato

上記の「初耳でCalmeraだと気づいた」カヴァーナンバー。アッパーな超絶系の演奏に驚いた。特にベースラインが好きで、動きまくっているラインなのに、キーボードソロのバックで同じ音をデデデデデと鳴らすところがツボ(細かっ)。あとBメロのカウベル。
この曲がこんなにも足回りが軽いのは、エレキベースを使っているからこそで、エレベとアップライトの両方を使い分けているところも、彼らの扱う曲の幅を広げている。

3.炎のたからもの

大野雄二さんのカヴァー。
新メンバー、きたいくん大活躍、ドラム「良すぎ問題」の1曲。
でも、ジャズのドラムって、曲の盛り上がりに一緒に盛り上がっていくというのが定石とジャズサークルで習っているので、ジャズ上がりのきたいくんがさすがだなぁ〜と思う。頭は真っピンクだけど(笑)。

4.Desafinado -English Version

ジャズ・シンガーのakikoさんをゲストヴォーカルに迎え。
もともとポルトガル語というこの曲、ポルトガル語=ブラジル、心地よいボッサのリズム、滑りの良い歌声、カフェで流したらよろしい。
akikoさんの歌声も素敵なのだけれど、弦フェチの私にとっては、あっちゃんのボッサギターがツボることツボること(ブラジル音楽好きみたいだし)・・・。

5.Recado Bossa Nova -MAOH-

ヒップホップユニット、アスタラビスタを迎えての1曲。覚えるまで、アブラカダブラだと思いこんでた、米米知ってる世代(笑)。
スタンダードナンバーのRecado Bossa NovaをCalmeraアレンジで演奏し、それをバックトラックにヒップホップが乗るという実験的1曲。というか、メロディが確立しているRecado Bossa Novaに別のメロディをつけて歌っているところが、個人的にはラップが乗っている以上にスゴい。
ちなみに、小さい子どものいるオカン的には、子どもが歌詞を意識しないことを祈っている。。。

6.GARAGE

またもやガラっと変わって、ロック的なアプローチの入る曲。
だけど、哀愁ある曲を好むCalmeraらしく、ロック的でありながら、どこか歌謡曲的でもある。

7.333

映画「ロックンロール・ストリップ」テーマ曲。読みは「さんさんさん」。
映画監督を夢見て突き進む、映画のストーリーに沿ったと思われる、疾走感ある曲。
映画タイトルにロックンロールが入っているだけあり、ブラス・ロックとして成立しているインストナンバー。
さっきは心地よいボッサのリズムを刻んでたのに、なんだこのアツいギター・ソロは・・・と思わせてくれるのが、このバンドの特徴であり強みである。

8.沖縄に雪が降る

沖縄のバンド、きいやま商店をゲストに迎えた1曲。
これは完全にロックだが、三線を加えて、沖縄テイストの強い1曲となっている。
雪の珍しい地域ならではの体験を歌う曲で、小学校の思い出が入っているあたり、沖縄情緒の中にノスタルジーを見る。

9.Golden Hour

シンセサイザーの音が大胆にフューチャーされた、新しいアプローチの1曲。
アプローチこそ新しいものの、彼らの本領とも言える、心揺さぶるメロディーを持つインストナンバーとなっている。
アウトロのギターにまたしても打たれる・・・(どんだけギター好きよ?)。

10.ヘイ・ユウ・ブルース〜許せ、友よ〜

カンニング竹山さんとコラボした1曲。
竹山さんが「もう一度ヘイ・ユウ・ブルースをCD化したい、演奏はCalmeraで」とテレビで話したことがきっかけで2年がかりの異色のコラボが成立。
マスクだとか、消毒液だとか、コロナ禍ならではのワードを含みながら、自分の仕事に対するジレンマを熱くぶつける。最後に相方の中島さんに問いかけるあたりで極まる。
密かにギターが好きである(だから、どんだけ?)

11.BELIEVE

ゲストシンガーを迎えない、全編歌ものという、新しいアプローチの1曲。
新メンバーヒカルくんの入ったことで生まれた新しい姿。
彼は自分が入ったことで、新しい色を作ろうとしている。
衣装もそうだし、歌ものもそうだし、この曲ではないが、トロンボーンの吹き方もたなっちの後任という感じではなく、違った吹き方をしようとしているのが分かる。
そんな変化が一番良く見られる1曲かと。(だけど衣装はスーツ推しです)

12.泣いてたまるかよ

作詞にクレイジーケンバンドの横山剣さん、歌に大西ユカリさんを迎えての大阪が舞台となる昭和歌謡。
「でもさ」という歌詞が、「GT」近辺しか聴いてないけど、剣さんだなぁと思うのである。そして、時代なのか、マスクが出てくる。
また、「夜の虹が」という歌詞が、つーじーのクラリネット・ソロ・アルバム「Vermilion」の「Night Rainbow」へつながっているのか?という推測もしている。
この曲こそ、やついフェスで培った力量が発揮されている筆頭と感じる。

13.Don't Stop the Melody -Album Version-

1回目の緊急事態宣言の下、リモートワークによって作られ、コーラスもリモートでファンが参加している。
だがしかし、その時は仕事がやたらと忙しく、、向き合えなかった悔しさを抱えながらも、このメロディやメッセージの暖かさに打たれて涙が出そうになる1曲。
音楽を止めるな。

14.Smile

チャップリンのカヴァー。
アンニュイなニュアンスでカヴァーされる印象が強いこの曲だが、明るいトーンでカヴァーしているところに度肝を抜かれた。
特筆すべきは、裏。
この弾むような裏のとり方は、しっかり「ドゥーダドゥーダ」してて、ジャズサークルで習った、まさしくアレなのである。

15.GET YOUR KICKS

最後は出口にふさわしい、明るさと爽やかさを持った曲で。
会社とのコラボ曲で、ラジオでは「社歌」と言ってて、社「歌」なのに、インストバンドで、そのインストバンドは歌も歌うのに、インストかよ!とかいう、ツッコミどころ満載なのだが、明るい終わりに希望を見出す。

何せ、このアルバムは喜怒哀楽、それぞれの感情を隠したりせずに全部詰め込んで、最後は希望へ向かうという、私の大好きな王道パターンなのである。
その昔、PE'Zを好きになって、一緒に、清濁併せ呑むCOOL DRIVEが人生の友となった私にとって、Calmeraはそれらの延長線上にあって、大好きなものを詰め込んだバンドとして好きになったのだけど、このアルバムでは記憶の延長上とは違ったものを見せられて、でも、このアルバムが好きになって、思い出と切り離しても、Calmeraというバンドが好きなんだなというのが、良く分かった。

名盤は35分前後だという持論を持ちながらも、その約2倍となる68分のこのアルバムに中毒症状を起こしているあたりから、どれだけの傑作か感じ取っていただければ幸いです。
サブスクでも聴けるので、是非耳を傾けてもらえたら嬉しいです。


ディザーはコチラ。


配信はコチラ。

https://calmera.lnk.to/Tasogare-resonance


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