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くうちゃんに

「さくちゃあん」

彼女はわたしをいろんな呼び方で呼んでいた。らっちゃん、さちゃん、さーちゃん、そしてさくちゃん、懐かしいな。そう思ってLINEを開く。


「あのね、子供産んだんだよ!」
「新潟にいるよ!」
「それでいま、」


「それでいま、」の続きは数時間後だった。8月までいるから会えない?って感じの。彼女だと思った。最後に連絡を取ったのは去年か、わたし結婚するんだーってきてたんだっけ。おめでとう、本当におめでとうだよう。


ホルン吹いてて、ふわふわしてて、小さくて可愛くて、でもしっかりしててちゃんと考えててめっちゃ強くて、言うときはすごい言ってくれて。わたしが高校卒業して、宙ぶらりんしてた19のとき、誰とも連絡を取りたくなかったとき、彼女はよく連絡をくれた。わたしはいい加減な返事しかしてなかったけど。あのとき手紙をくれて応援してくれた。それすら破って捨ててしまったけど。本当に感謝してるのにすごく酷いことをした。本当にごめん。ここでごめんと言ってもしょうがないよ、でもごめんね


校舎の渡り廊下で2人してスカートこれでもかってくらい短くしてキャアキャアしてたり、部活始まる前に流行りのアプリで写真撮りまくったり、東京へ大学生の彼女に会いに行ったときヒラヒラの透けそうなワンピース着ててパンツみえちゃいそう〜もう!とか言ってへへへってなってる彼女に変にハラハラしてたり、こっち帰ってきたときその小さい足にたっかいヒール履いてコツコツ言わせててそれだけで東京ガールになったねえなんて帰りの電車でケラケラ笑ったこととか急に思い出した。


わたしはすごく仲良くしていても何かのアレで少しでも壁を感じたら、自分の内側に入ってしまって拒否反応を起こす、誰にでも、そして今でも。内側の内側までわたしにもわからないくらい何に逃げているのかわからないけど逃げてしまって、もう元の位置まで追いつけない感じになる。どうしようもない、仕方がない。


特に彼女がそうだった。何が原因とかじゃないし、別に嫌いになったわけじゃないけどなんか、なんか、って思っちゃって連絡取らなくなるとかあるじゃん、それ。でも楽しかったときのことは覚えてるんだから。そのときのことは目を瞑ればフフフって笑っちゃうんだから。そうなんだよね、だから、だから、だから、ウン。ビックリマークつけて返事した。


「会いたい!」

(くうちゃん本当におめでとう!ちゃんと言うんだよわたし!)

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