弔いのオベリスク 

画像1 自分なりの「弔いの形」を見つける旅は、「位牌はオベリスクが原初」という直感に基づいて、母の弔いのために自作のオベリスクをつくろうというプロジェクトになりました。我が洋風のマンションにも似合うオブジェの感覚で制作し、自分のライフスタイルにマッチした祈念をするために、自分らしいオリジナルの位牌を陶芸で自作することにしました。
画像2 まずは、デザインです。「死者の名前を刻む」という意図と、死者の栄光という意味で「辞世の句」も刻むことにしました。
画像3 私が「位牌」の直接の起源と考えるのが、古代エジプト以降、巨大なピラミッドを建造できなくなった後期エジプト文明で見られる「オベリスク」です。 みなさんは、オベリスクというと、パリのコンコルド広場を思い出したり、アメリカ・ワシントンを想起されると思いますが、あれは各時代の英雄が勝手にエジプトから持ち出した泥棒の証(笑)です。
画像4 オベリスクは、卒塔婆の起源であると言われることがあります。「卒塔婆は古代インドで「仏塔」という意味のサンスクリット語「ストゥーバ」を漢訳したものであり、ストゥーバ(仏舎利塔)とは釈迦の遺骨を納めた塔のことです。」卒塔婆の起源も、遺骨を納める「塔」なのです。
画像5 エジプト文明では「王の名前」こそが栄誉であり、最上の価値でした。その意味で、最高の罰が「歴史から名前をはく奪する」ことで、墓石や遺跡から根こそぎカルトーシュという王の名前を削り落としてしまうという刑罰でした。私は、「オベリスクに死者の名前を刻む」、これこそが、「位牌」の意図であり、古代中国の先祖崇拝の仏具になった理由だと推察しました。
画像6 型を紙で作ります。微妙な角度で傾斜を上部に絞り込み、キャップストーンと呼ばれる頭部はピラミッドと同じ角度にするのが理想です。
画像7 紙の段階で仮組みします。
画像8 タタラで整形した粘土から、型に合わせて部材を切り出します。
画像9 この段階で、各面の文字を掘り込みました。実は組み立て後だと、力を入れにくい構造体なのです。
画像10 組み立て後の掘り込みましたの状態です。三段階に段差があるので、空中で掘り込むのが難しいのがわかります。
画像11 キャップストーンの頭部は梵字を一文字だけ掘っています。
画像12 第一段階が終了し、素焼きに回します。
画像13 素焼き後の姿
画像14 次が釉薬掛けですが、文字部分を鉄赤で書くことにしました。
画像15 一画づつに面相筆で釉薬を入れていきます。思ったようには筆が走ってくれません。工程は入れ墨みたい。
画像16 カルトゥーシュのイメージで戒名を書いてます。
画像17 全体は黒天目という釉薬を掛けました。
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画像22 これを自宅のマンションの廊下のギャラリーにに持ち込むとこうなります。
画像23 いただいたドライフラワーに加えて、自作の線香立てや水差しと並べます。母だけ特別あつらえた、世界中に一つしかない「弔いの形」です。

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