参考 1冊1P 欲望の資本主義2022 成長と分配のジレンマを越えて 2 太田泉 2022年1月3日 08:23 総まとめ 欲望の資本主義で示されることは「関心の輪」の最大領域である。それを知識として理解した上で、自分の活動といかに結びつけていくかが重要だと思う。今年はそのアプローチを賢明に考える。 元旦恒例の「#欲望の資本主義2022 」、さすがに内容が濃いので、TV番組では久しぶりに1冊1Pにしてみる。2022年の今回は新撮パートが多くて、コロナ以降の動向がよくわかる。第1章K字回復の果て まとめパンデミックで世界中の中央銀行が財政出動した事の余波で、ゾンビ企業が多発している。借入金による歪な分配は、とても危険なバブルを生む。 今、表層に見える米中の経済戦争は、本質的には「海を越えた階級闘争」だ。資本主義の最新バージョンとは、世界にまたがる富裕層にとっての社会主義であり、それ以外の大衆に対しては熾烈な格差を生む資本主義として二極化している。そしてアフターコロナでの政府と中央銀行による緊急介入で危険な兆候は、「危機になれば必ず国が救済してくれるという幻想」が広がっている。こうしたケインズ的救済の常態化は、「成長幻想に侵されたブレーキなき危機的状況」だと指摘する。特に借入金が異常増大している日本がマズいのは自明の理。 第3章最後のディーラーの賭け投資家ジム・ロジャース登場に興奮した!ジムも今回の政府と中央銀行の市場介入は危険なバブルだと指摘する。それはただの借入金だと。危険なことは「上がり続けることに疑問を感じない錯覚だ」。第2章のZ世代の投資家達の映像が重なる仕掛けだった。昔から「靴磨きが株の話をしたら、市場からすぐに手を引け」と言われている。 実際には昨年コロナ緊急介入以降に水面下で金融危機が起きていた!世界中から安全なドル資産への集中が起き、空前のドル資産バブルが起きた。それを制御したのはFRBが史上はじめて中央銀行として債券市場に現れ、ディーラーとして介入したことだった。だから景気が突如浮揚したのだ。この繰り返されるバブル指摘にドッキリした!そして、市場介入への慣れが自分にも及んでいることに気付いた。やはり投資資金を1/3は現金化しよう。今すぐに! 第4章反復する半世紀前の悪夢フリードマンの孫が語る「#チャーターシティ」や「#ネオ経済特区」に基づく資本主義新型バージョンも面白かった。いかにも次回作の007の敵側が話しそうな内容^_^。フリードマンおじいちゃんに教えてあげたい。この第4章では、現在の世界情勢が、1970年代と酷似していると指摘。ローマクラブによる「成長の限界」宣言と京都議定書、公害問題と地球環境問題、分断の指摘とグローバル化など。次に来るのは、オイルショック並みのバブル崩壊とスタグフレーションだという予測です。 欲望の資本主義2022 前半の白眉はオックスフォード大のケイト・ラワースの「#ドーナツモデル」 従来の直線系経済モデルに対する「#循環型経済」の提唱。 生産ー使用ー余剰品の廃棄では、地球がもうもたないのは自明。そこで地球の許容限度内で全ての人々のニーズを満たす方法を模索するという案。 「人新世の循環型経済モデル」これ、日本人はガンダムのシャアの理想論でお馴染みなんだよね。今更新鮮味はないのだが、やっと世界がジャパンアニメの哲学に追いついてきたのが、なんかうれしい。 第5章気候変動は資本主義のしわざか? セドラチェクと斉藤幸平の「脱成長と人新世の危機」を巡る対話。格差が広がる無理ゲー社会と前代未聞の気候変動に対する解答を示せない資本主義国家に対するZ世代の怒りと不安。今後起きるであろうコロナ以降の「慢性的な緊急事態」に対して資本主義は有効なのかの問いかけ。「パンデミックは予告編、今後の連続的な危機のデモ版」だとしたら、緊急事態に対して国家が市場介入する解決策は何回出動可能なのか?慢性的な危機に対する有効策ではない 第6章公共善のパラドクス。気候変動という人新世の慢性的な危機に対して有効なのは資本主義か共産主義かという対話。斉藤幸平の牧歌的な共産主義への幻想を、チェコで共産主義社会の地獄を味わってきたセドラチェクが痛烈に論破する。対立軸は政治的システムではなく、求道学で自分が主張してきた「前代未聞の事態に対する解決策の模索」なのだ。そこで重要なことは失敗への批判を含めて討論できる自由だ。共産主義は全体主義化しやすく、批判を禁じる闇を持つ。「共産主義は非現実の夢、資本主義は現実的な夢」だとするセドラチェク。 参考までに求道学「https://note.com/q_do/m/mf7377a4712a6」 第7章競争✖️福祉=生産性? 模索すべき「人新世の危機に対応する持続可能社会」のモデルとしてスウェーデンを上げる。それは「捨てる美学を持つ福祉国家」だ。スウェーデンは競争力を失った企業を救わない。その代わりに人々に再教育と雇用の流動性を担保する。これがマイクロソフト時代に提唱していた「地域社会貢献DX人材育成」と同意だった。ダイナミックな競争力で生産性を向上しつつ、その余剰で高い福祉を実現する。 今回の白眉、スウェーデンのダイナミック福祉国家を支えるバックボーン「#レーン=メイドナー・モデル」積極的労働市場政策と呼ばれる。シンプルに国家が企業に対して年度別に一律の「#連帯的賃金」を実施させるだけ。この負荷に耐えられず倒産する企業を救わない。逆に倒産で失業する人々を救う。そのための再教育と雇用の流動性を支える。「捨てることで社会全体の競争力を向上」させる。市場経済による競争力と社会福祉組み合わせるシステムで、資本主義でも社会主義でもない新しい国家制度だ。 第8章 コモンズ(共有財)の復活か?コモンズの悲劇か? セドラチェクー斉藤対話。マルクスの資本の増殖論から、資本主義における人工的な欲望の構造が欠乏を構造的に産み出すことが問題提起され、村時代の共有財の復活を提唱する斉藤。机上で計画された共産主義には成功例は一つもないとして、管理者のいない共有財は、全員から無分別に搾取されるコモンズの悲劇を生むだけとするセドラチェク。噛み合わない議論が観客には面白い。 シュンペーターのイノベーション理論。特に「資本主義自身の創造的破壊の構造」が紐解かれる。資本主義では、イノベーションにより、従来土台になっていた社会構造が揺さぶられる、そのため中央集権は手綱を握ることに精一杯で、長期的な視野に欠けて、国益を守れない。故に反体制派が起こり、社会主義化運動になる。でもそれを取り込んで資本主義自身がイノベーションしてしまうという円環に見えた。セドラチェクは円環運動として捉えて、成長資本主義を修正するべきだと主張し、共産主義の経験のない斉藤は、直線運動だと捉えて、共産主義を夢想。 むしろ重要なのはセドラチェクが線引きした社会主義と共産主義の違いだと思う。社会主義の構造は「生産に対する課税をコントロールすること」だとし、共産主義の「中央権力が生産も消費も全て計画・実行し、個人の自由が極端に制限される」政体との違いを明確にした。ちなみに課税コントロールによる公共事業の運営は脱成長資本主義で可能だと主張している。セドラチェクも資本主義に夢想しているキライがある笑笑笑。 第9章市場と民主主義の再生。ギリシャのヤニス・バルファスキがメタバース勃興で、デジタルコモンズ、つまり私企業による新たな市場、新たな国家、新たな支配の誕生を予感し、更なる独占資本主義への規制の流れである「ビッグテックの文明化」を提示。市場と株式保有を明確に区分すべきだと主張する。実名と匿名の差が長年に渡り、企業や市場の独占を促してきたとする。GAFAを含めてアメリカの3つの投資会社が裏で企業を保有している事実の重大さは、本当に我々の目には見えていない匿名性の中にある支配だ。 第9章市場と民主主義の再生。ヤニス・バルファスキによる共同体市場と民主主義の再生の提案。それはアダム・スミスが目指した民主的な市場を取り返す方法だ。現在の独占資本主義から、金融市場と労働市場を除外して、労働を正しく分配し、働く喜びを取り戻す「人民の人民による人民のための共同体市場の再生」だ。 いいなと思ったら応援しよう! ご愛読いただきありがとうございます。 テーマごとにマガジンにまとめていますので、他の気になる記事も読んでいただければ幸いです。 チップで応援する 2