できることとやりたいこと
脱サラをして何をやるか考えた時に、往々にして、儲かりそうな「できること」を始めてしまうものだ。今までの仕事の延長線上で、長年の経験から難なくできるだろうと考え、それで収入を上げようとする。
私で言えば、コピー機の営業を29年間やってきたわけで、コピー機の販売ノウハウはかなり知っている。お客さんが今のコピー機に何を不満に思っているか、それに対してどういう機能で不満が解消できるか。あるいは、経費削減という総務担当者の目標があったら、どうすればそれを達成できるのか、営業マンはセオリー通りに提案すればいい。その販売プロセスについてはノウハウがあり、29年もやっていれば、無意識にできるぐらい体に染み付いている。
しかし、お客さんが私と口をきいてくれるのは、会社の看板を見て信頼されているからであって、住田という個人を信用しているわけではない。定年退職後に看板が外れたら、他人にとても冷たくされ、初めて会社のありがたみに気づく、というのはよく言われていることだが、恐らくその通りだと思う。
コピー機について言えば、1枚の紙に印字をするとコピー機のカウンターが1つ上がって、そのカウンターが保守・消耗品費用としてチャージされるというビジネスモデルが確立している。
営業マンはそのビジネスモデルの上で仕事をさせてもらっているのだが、長いことその中に浸かっていると、自分の力で売り上げを獲得していると勘違いしてしまう。
でも、私が独立して、今までの延長線上でコピー機を売るビジネスをやっていこうとしても、商売の基盤が無いので儲かることはできない。会社の仕組みは組織的に無駄なく最適化されていて、マーケティングや分業が進んでいるため、個人で戦っても効率よく成果を出すことはできない。
脱サラをして失敗するパターンは、儲かりそうな「できること」について今までの延長線上で考えてしまうことだ。
その時に大事にするべきなのは「できること」ではなく、自分が心から「やりたいこと」を根気強くやることだと思う。
「やりたいこと」とは自分の得意なことだ。自分には苦にならないことをやって他人に喜ばれる。そもそも働くとは、自分が得意で、他人が苦手なことを代わりにやってあげることだと思う。逆に、自分には上手にできないことを他人にやってもらう。お互いに補完し合うことで社会が成り立っている。
苦もなくやったことで他人に有り難がられれば、嬉しくて「やりたいこと」になる。逆にいうと、苦手なことをいくら一生懸命やっても誰も喜ばないし、社会の効率性から言って無駄である。
しかし、ちゃんと儲かって、自分が得意なこと、そして心から「やりたいこと」って何がある?そもそも自分が「やりたいこと」ってなんだっけ?苦もなくできる得意なことって自分でわかりにくい。
会社を辞める段になって、会社の枠を外れる時に考えないといけないことが沢山あることがわかった。それを少しずつ書いてみたい。
何しろ、今まで1日の大半を会社で過ごしてきた。常に上司と部下、お客様とスタッフの間で仕事していたので、独立して仕事をしている人と接点が全然無い環境だった。
サラリーマンの自分にできることといえば時間を作って本を読むか、通勤電車でネットの記事を検索するか、それぐらいしか情報収集ができない。何しろ忙しかった。
なので、会社を辞めようとして考えてきたこと、そして、会社を辞めてから起きることを書き留めてアップロードしていきます。これを読んでいただいて、仕事を通して「働くこと」を改めて考えてみたい方のお役に立てれば幸いです。
次回は住田が転職活動をしてみて気づいたこと、を書いてみたいと思います。
ありがとうございます。引き続き、情報発信をしてまいります。