昼夜順転

夜が好きだ。

コロナ禍で大学に行けなくなり、家でパソコンを使い授業を受けることがこの1年で当たり前になった。私がとっていた講義の中にはオンタイムの授業があまり無く、時間割通りに受講する習慣はついぞ出来上がらなかった。昼過ぎに起き、支度をして夕方からアルバイトへ向かい、帰ってきてその日の授業を受け、朝方に眠るという生活をもう何ヶ月も続けている。

社会の大半の人がするような、朝早くに起きて8時には仕事や勉強を始めるというルーティンを身につけようと努力したことは一度や二度ではない。狂ってしまった体内時計を戻そうと、時には強引な方法も使ってきた。しかし、一度は朝方の生活を出来ても、一週間も経てばすぐに元の昼夜逆転の生活に戻ってしまう。早く起きるならその分早く寝るように、睡眠時間はしっかり確保しているにもかかわらず朝に起きられないのは、もうそういう体質なのではないかと最近は諦めている。

そもそも、私は夜の時間の方が好きだ。

課題をやるとき、文学部なので文章を大量に書く課題が多いのだが、そういう課題に取り組むときは大抵夜にやった方が捗ることが多い。特にてっぺん回った深夜0時から3時頃、この時間帯が私は最も集中しやすい。逆に午前中や昼間は何時に起きたあとでも眠気が取れないか、眠くなくても集中力が続かないことが多い。それは若いからだとか、それは身体がおかしいとか、否定されることの多い体質だけれど、私にとっては昼間に眠って夜に起きていた方が効率的に生きられるのである。

また効率の話だけでなくて、私は純粋に「夜」が好きだ。

とても、静かだから。

自分以外の人間はみんなすやすや寝ていて、なんのアクションも起こさないでいる。世界で動いているものは自分だけ、そう思うと、ウニのような幾本ものアンテナが拾い上げる周囲の情報がとても少なくて済むから。

だから、夜は呼吸がしやすい。

昼間に活動することは、私のようなアンテナを持つ人間には精神的疲弊が大きい。ただ生きているだけで洪水みたいな量の情報に溺れてしまいそうになるから。「感じ取ってしまう」気質の弊害だ。

太陽が昇ると共に起き、陽の光の元で田を耕し、太陽が沈むと休んで、月の光の元で眠る。古代から人間が繰り返してきたその営みを、つらいと思う自分がいる。神様は昼間に生きることが辛い人間がいることなんてお考えにならないし、社会はマジョリティのためにある。

世界の隅っこでいい、小さく身を縮めてでも。誰にも指さされない場所で、月の下でただ静かに呼吸をしていたい。

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