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心の切迫感を洗い流す、熱めの湯船とクラシック

【ブランドマガジン 頑張るあの子の不器用な日常。 とは?】
「うまくいくことばかりじゃない」この世界で、背中を押して前進させるのではなく下からグッと支えて「お尻を3ミリ浮き上がらせる」物語。頑張るあの子の、愛おしい不器用な日常集。

今回お話をお伺いしたのは、癌専門病院で看護師として働く、ヒナコさん。命と隣り合わせである医療現場で、想像を遥かに超えた緊張や重圧を背負いながら日々働かれていました。本記事では、そんなヒナコさんの「過去」や「ヒナコさんならではの癒し」を。

現場の課題から感じた、将来やりたいこと

ー自己紹介をお願いします
現在、看護師として癌専門病院で頭頸部癌という首から上の癌の患者さんを担当しています。実は将来的には「ヘルステック」というビジネスの分野で何かしたいなという想いがあるので、今は医療現場で経験と知見を積んでいる感じですね。

ヘルステックというのは「IT×医療」の分野で、さまざまなデジタル技術を組み合わせて、医療や創薬、介護、予防、QOLといった領域の課題を解決していきます。医療現場ではまだまだ浸透していないことが多く、私の職場でも機器の使いにくさからあまり浸透していないですね。

ーヘルステックに興味を持った背景を教えてください。

看護大学3年生のときに医療の領域で働くのもいいけど、漠然と「それだけでは変わらない」と思っていました。そんなとき、医学部の先輩でアプリを作っている人に出会ったのですが、これがきっかけでヘルステックに興味を持ち始めました。

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医療現場では、想定外のことが本当に沢山起こります。通常の業務だけでも十分過密なのに、想定外のことが起きるとタスクが山積みになるんです。このような状況を見て、もっと通常タスクを軽くして余白を生み予想外に対応できるような仕組みをヘルステックで実現できないかと考えています。

ーひなこさんは主にどんな業務を行っているんですか?

癌の主流な治療方法は3つあって、「手術療法」「薬物療法」「放射線療法」です。私は主に、手術療法を行う患者さんを担当しています。喉の癌の手術は、喉を取って空調から喉を持ってきて作るといった大がかりな手術になります。場合によっては大出血が起こったりと患者さんの体に多大な負担がかかる手術であるため、私はその負担を最小限にしたりだとか、患者さんが無事に生活に戻れるよう指導したりしています。

3ヶ月前まではGOBで事業立案をしたり、病院のブランディングにも挑戦していました。しかし社会人2年目となり仕事量が大幅に増えてきたため、これらの活動を続けるのが難しくなってしまったんですよね。ということで今は、患者さんや現場の医療スタッフが心地良い状態で働ける環境を維持することを心掛けつつ、看護師の業務に専念しています。

田んぼの荒廃を目の当たりにし、看護の道へ

ー看護師を目指し始めたきっかけは何だったのでしょうか?

もともと母親が看護師をやっていて、幼いころから看護師という職業は頭の片隅にありましたが、実はなりたいと思っていたわけではありませんでした。しかし、高校生のときに祖父母が体調を崩してしまったことで、祖父母が手入れをしていた田んぼもどんどん荒れていってしまったんです。その光景を見てとても寂しいと感じたと共に、「何事も人間が健康だからこそ循環しているんだな」と感じました。そこから、母が看護師だったことも相まって、人間の健康を守る看護の道に進もうと決めたんです。

ーなぜ喉頭癌専門の病院で働こうと思ったのでしょうか?

母が頭頸部癌を患ったことがきっかけでした。その際に、母は顔面神経麻痺で口を開きにくくなり、通常の大きさのスプーンやフォークでは食事が出来なくなってしまいました。この経験から、母は現在同じような状況下に置かれた人でも使いやすいスプーンとフォークを作る会社を設立しています。そんな母の姿を見て私は、母の会社の力になりたいと想い、頭頸部の臨床経験を積める病院で働くことに決めました。

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何でも引き受け、自分を追い込む不器用さ

ー働く中で「私、不器用だなぁ」と感じた瞬間はありますか?

周りのことを考えすぎて、疲弊してしまうところは不器用だなと感じています。
例えば、夜勤のとき。自分が担当する患者さんを見ることで手一杯なのですが、他の人が担当している患者さんに頼まれ事をした際に断れず、自分で仕事を増やしてしまうんです。

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担当の方に伝えれば良いのですが、「私が忙しいってことは、担当の方も忙しいはずだから、今伝えたら申訳ないなぁ」など、あることないこと色々と考えすぎてしまうんですよね。そして、結局人の分まで担ってしまって、自分の仕事は溜まってかつかつになってしまうという。「終わらなかったらどうしよう」という切迫感の中で仕事をするので、いつも心に負担がかかっています。

クラシックと熱めの湯船で「まぁ、ええか」

ーそんなとき、ひなこさんはどうやって自分を癒しますか。

1年のときは現場の人と感性があわず、本当にしんどかったです。自覚できるほどのストレスを抱え込んでしまって、退職も考えましたし上司と話し合って一旦夜勤を無しにしてもらったりもしていました。疲れを癒す瞬間が1ミリも作れていないなと気付き、そこから意識的に自分を癒す時間を取り入れていきました。

そして、「クラシック音楽をかけながら熱めの湯船に浸かる」という自分なりの癒しも発見することができました。こうやって自分を癒していると「不器用やけど、まあええか。終わったことやし」という気持ちで自分を肯定することが出来るんですよね。

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クラシック音楽は、歌詞がないので静かに心に入ってくる感じがするんです。もともとバレエを習っていて慣れ親しんできた音楽だからでしょうか、リラックスしたいときはついついクラシックを選んでしまいますね。

加えて、普段はシャワーで済ましてしまう私にとって、湯船につかるのは極上の贅沢なんです。医療現場はどんなことが起こるか分からないので、常に体が緊張状態にあります。筋肉は固まってしまうし心もせわしない状態のまま帰宅することがほとんどですが、湯船につかると力が抜けるし心が和らぐんです。お風呂で疲れを洗い流す感覚ですかね。

ーここまで読んでくださった皆さんに一言お願いします。
ついつい休むことを忘れてしまいがちだけど、自分なりに癒しの時間を作ることでまた新しく頑張ることが出来ると思うので、気負わずのんびり過ごしてみてください。

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ライター:財前 穂波(zaizen honami)
ぼんやり考えることが好きで、夢見がちです。マイブームは「あの物陰から小人が出てきたら...」と考えること。とりあえずポッキーをあげようと思います。褒められたいタイプです。みなさんが私の文章いいな、って感じてくれたら月まで飛んで喜びます。

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