‐酒場のアークメイジ‐

森を抜けると小さな貿易港についた。

-貿易港スクトリア-

異国からの旅人が集い、
酒場はギルドの募集や、傭兵斡旋所を兼ねている。

ミディアとファムは
その酒場で早い夕食をとっていた。
「ファムは、冒険者や傭兵の名簿をみていたけれど、よさそうな人はいた?」

「ミディア……あなたは、食べてばかりいたわね」

「あはは……異国の食べ物ばかりだけど、おいしくて……」

「まあ……、
そうね。2年も旅を続けているけど
厳しいマナーもないし……、なんだか……お城にいた時より楽だわ」

「あ、話を戻すとね……
兵士を操ったあれは……アークメイジの黒魔法らしいってことはわかっているわよね……」

「ええ……黒魔法ね……」

「簡単に言えば黒魔法は
悪魔と契約し、人を操ったり殺めたりする力のこと。
昔は隕石を落としたりする黒魔法もあったみたい……」

「そうよね……そんな力があれば、肛魔城ごとグアヴェスをつぶせちゃうわね」

「だけど冒険者や傭兵の名簿に登録されているのはクレリックやプリーストばかり……。アークメイジは……」

タタタ……
誰かが走ってくる。

「ここにいるよ!」

……と
会話を聞いていたであろう15歳ほどの魔導師が、
目を爛々と輝かせそう言った。

「こんなに可愛い
女の子の2人パーティー?
……アークメイジをお探しなら、僕なんてどうだ?」

「う……あなた……あの男と同じ黒い波動があるわ……、
……でも……てことは…………そんなに若くてアークメイジ?」

「え?悪魔と契約したの……?あなたが?」

屈託のない笑顔と似つかわしくない闇のオーラに、ミディアは怪訝な顔をした。

すると、もうひとり、今度は中年のプリーストが近づいてきた。

「そんな坊主の腕じゃ……、アークメイジといっても、まだまだ……。
……なぁ女盛り……、持て余してるんじゃないのか?
パーティにするならよ……、
回復もできる俺なんてどうだ……今晩からたっぷり癒してやるぜ……」

そう言うと左手でミディアの尻を触り、肛門をぐりっと押した。
右手ではファムの股間の縦線を、白タイツの上からツー……となぞった。

「きゃあ」
「やっ!何するの!」

「あ!こら!お前!」

少年アークメイジの瞳が怪しく光る。

「うぐっ?!」

中年のプリーストの手がぐるんっとよじれた。
「いでっ!あわわ……」

「へぇ…あなた可愛い顔しているくせにやるじゃない」
「これが……黒魔法……」

「へへへ、おっさん、お前がまだまだじゃないかよ!」

年上の美女から褒められ
少年は上機嫌だ。

「本当にすごい力……、いろいろと話を聞きたいわ」

「エヘッへへへ、
……ん?…………あれ?君、ゼリクのお姫様に似ていない?」

「え……?あ……よく似てるって言われるわ」

「そうだよね。
あのお城は、美人のソフィア姫だけが捕われて、おてんばのミディア姫はグアヴェスに殺されたっていうしね……」

「……ん?…………あれ?なにムッとしてるの?」

「私たちはそのゼリク城下町出身の者よ、ミディア姫はおてんばなとこもあるけど、とても清楚で勇敢なお姫様よ」

ファムが怒ったミディアのフォローにはいる。

「とりあえず、君がさっき使った魔法の話とかいろいろ聞きたいわ。宿をとってあるから……一緒にこない?」

「ほ、本当!?宿屋!?
……と…………泊まってもいいの?」

「ええ……だけど……部屋は別よ」

「……お風呂は……?」

「お風呂も別っ!」
ミディアとファムは声をあわせそう言うと、
やれやれといったように溜息をついた。

 その後少年は二人と酒をかわし、ほろ酔いをした……。

 美女二人と宿屋に向かう街並みが幻惑の様だ、そしてなによりも男性のうらやむような目線が心地よかった。
 少年魔導師の足取りは軽い。

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