サンタさんの中でもきっと・・・
「サンタさんってお父さんとお母さんなんだよ!」
よしこちゃんが大きな声で言った。
そんなの私は3年前に知っている。
家は母子家庭だ。
あんまりお金がないことも知っている。
3年前のクリスマスにみんなが持っているゲーム機を、サンタさんに頼もうとしたら、ママが
「うちに来るサンタさんはあんまりお金がないから。」
と寂しそうに言った。
その夜ママがお仕事の時に、押し入れから私の好きなキャラクターのぬいぐるみを見つけた。
私がこのキャラクターを好きな事を知っているのはママだけだ。
うんとうんと小さい頃、ママに
「サンタさんって、プレゼントあげるばっかりでソンだね。」
と言ったら
「プレゼントはね、もらうばっかりじゃなくって、あげるときだってうれしいのよ。」
とママが言っていたのを覚えている。
この間、みんなが駅前に出来たケーキ屋さんのクリスマスケーキのチラシを見て
「これ、おいしそう!」
「うちはこれ頼んだんだー。」
と言っているので私も見てみたら、ものすごく高かった。
今年はママの仕事も減って、きっといつも以上にお金がない。
毎年ケーキは買ってくれていたけれど、今年はそれすら買ってもらうのが悪い気がする。
もちろん、サンタさんがいないと知った時から
「プレゼントはいらないよ。」
とママには言ってある。
それでも、何かしら高くなくてもママは毎年プレゼントを忘れたことはない。
きっと無理してるんだろうな~。
「あ・・・!」
「プレゼントはね、もらうばっかりじゃなくって、あげるときだってうれしいのよ。」
ふいにママの言葉を思い出す。
家に帰って、
「ママ、今年はクリスマスケーキいらない。私ダイエットしてるから!」
と宣言する。
ママは少しびっくりしていたけれど、優しく微笑んだ。
ケーキを作るくらいのおこづかいは貯めてある。
作り方も覚えた。
ママはよくお菓子を作ってくれるから、家にはちょっと自慢のオーブンもある。
そーっとそーっと集中して、ケーキをつくる。
「ママはきっと喜んでくれる。」
そう思いながらケーキをつくる間、とても心がほっこりした。
「出来た!」
お店のみたいにキレイじゃないけれど、生クリームはママと私の好み通りお店のよりも甘くておいしいはず。
「あげるときだってうれしいのよ。」
たしかにケーキをつくっている間、私はうれしかった。
ママのよろこぶ顔がハッキリ浮かんだから・・・
ママが帰ってきた。
きっとすごくビックリする。
そしてものすごく喜んでくれる。
きっと、世界中にいるサンタさんの中でも、私はかなり若いサンタさんだと思う。
ギリギリセーフ!
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